きょうはドイツの「ビール純粋令」制定日 純粋なビールとは? 日本と何が違う?
きょう4月23日は、1516年に現在のドイツで「ビール純粋令」なる法律が制定された日だそうです。どんな法律なのでしょうか。
きょう4月23日は、1516年にバイエルン公国(現在のドイツ・バイエルン州など)で「ビール純粋令」なる法律が制定された日で、「ドイツビールの日」だそうです。最近は、フルーツやハーブを使った「フレーバービール」も人気ですが、「純粋なビール」とは何なのでしょうか。「ビール純粋令」とさまざまなビールについて、一般社団法人「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会」代表理事の友田晶子さんに聞きました。
原料を「麦芽、ホップ、酵母、水」に限定
Q.「ビール純粋令」とは、どのような法律で、どういう背景から生まれたのでしょうか。
友田さん「そもそもビールというものは、紀元前から造られていた歴史の長い飲み物です。ヨーロッパでも紀元前1800年ごろから造られていたのですが、普及するにつれて、品質がよくないビールや、混ぜ物をしたビールも売られるようになりました。そうした製品を取り締まるため、1516年にバイエルンで制定されたのが『ビール純粋令』です。
バイエルンはドイツ南部にあり、ドイツの中では比較的暖かい地域です。ビールがおいしく飲める場所で、当時の王様であるヴィルヘルム4世がビール純粋令を出しました。当初の内容は『ビールは大麦とホップと水のみを原料とする』というものでした。その後40年ほどたって、『酵母も使っていい』とプラスされました。
制定の理由としては、1つ目は、先ほど述べたように不正が横行していたので、原料を限定して品質を向上させるためです。当時は果物や香草を使ったビールのほか、体に悪いものを加えて量を割り増したビールもあったそうです。2つ目は、税金を多く取るためです。ビールには当時も税金がかけられていて、たくさん売ることで税収を確保しようとしたのです。
3つ目は、食糧の確保です。大麦のほかに、小麦やライ麦もビールの原料になりますが、それらをパンに使うため、ビールは大麦に限定したのです。なお、小麦を使わせなかったのには、別の理由もあります。小麦を使ったビールは『ヴァイツェン』と呼ばれますが、とても繊細でエレガントな味わいです。これを王室が独占して醸造させて販売し、王室の財政基盤にしたのです。
ただ、後に『大麦』は『麦芽』に書き換えられました」
Q.500年も前にできたものですが、ビール純粋令は現在も有効なのでしょうか。
友田さん「現在も有効です。元々はバイエルンの法律でしたが、20世紀になってドイツ全体に広がり、戦争中も守られ、ナチスも継承しました。EU(欧州連合)への統合過程で、他の原料も使ったビールを造っていた国々が反発しましたが、ドイツは純粋令を貫き通しました。品質が維持され、世界規模の競争に勝ち、ドイツ国民のプライドにもつながっていたからです」
Q.日本では、米やスターチ(でんぷん)なども使用した「ビール」が主流です。日本のビールは、ドイツ基準では「ビール」とは呼べないということでしょうか。
友田さん「ドイツ基準でいえば、そうなります。ただ、ここは日本なので問題ありませんし、副原料を使うから味が劣るわけでは決してありません。あくまで『ドイツのビール純粋令には沿っていない』というだけです。
日本の酒税法では、米やトウモロコシ、でんぷんなどを使ってビールを造ることが認められています。さらに、2018年の酒税法改正で、ハーブや果物なども一定の割合までであれば使っていいことになりました」
Q.日本で主流の米なども使ったビールと、ドイツ基準のビールとの味の違いを教えてください。
友田さん「副原料が多いと、軽快ですっきりとして、さっぱりとキレがあり、喉越しのいい味わいになります。ゴクゴク飲める、飲みやすさが魅力です。副原料を使うことが悪いのではなく、ドイツ基準のビールとは違った味わいになるということです。
銘柄でいえば、アサヒスーパードライやキリンラガー、サッポロ黒ラベル、オリオンビールなどです。海外だと、バドワイザーやミラー、クアーズ、中国の青島ビール、今、名前で話題になっているメキシコのコロナビールが有名です。
逆に、麦芽とホップ、酵母、水のみのビールの場合、麦芽のコクがあり、香ばしさ、ホップの心地よい苦味、濃厚さが特徴です。銘柄としては、日本ではエビス、プレミアムモルツ、一番搾りなどです。ドイツではレーベンブロイ、ベックス、ホフブロイなど。アイルランドのギネスもこちらの系統です。ただし、麦芽、ホップ、酵母、水のみでも軽い味わいに造ることもできます」
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