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船戸結愛ちゃん虐待死2年 幼い命をなぜ救えなかったのか、西沢哲教授に聞く

懲役13年の判決に控訴せず

事件について語る西沢哲教授
事件について語る西沢哲教授

Q.雄大受刑者は、虐待していた時期の一部について「記憶がない」と言っているようですが。

西沢さん「人間は興奮した状態のとき、記憶の定着が阻害されます。ある意味『怒りに支配されて』暴力を振るったとき、詳細な記憶を求めることは、かなり難しいかもしれないですね。誰でもそうだと思いますよ。興奮してけんかしたとき、そのプロセスをストーリーで語れないことがあります。

例えば、殺人を犯した人が、その前後の記憶がないことはけっこうあります。それはトラウマ(心的外傷)性のもので、すごくショッキング、加害者がショックを受けるのか?と思われるかもしれませんが、人が亡くなるという結果に直面したとき、しかも自分がやった結果亡くなったんだろう、みんな『だろう』なんですけどね、そのショックが解離性健忘という逆行性の健忘をつくることがあるんです。

『逆行性』というのは、ある出来事の前の記憶がなくなるということです。そういうことは起こり得ます。彼(雄大受刑者)に関しては、接見時間が非常に限られていて、本来の診断面接のように細かい点が確認できていないので推測になりますが、今までの事例に照らしても、記憶が飛んでいたり、断片化したり、ということはあり得ると思います」

Q.雄大受刑者に最後に接見したときの感想は。

西沢さん「彼は大きな罪悪感を持っていました。懲役13年の判決を受けて、控訴しませんでした。公判で弁護人が『9年が適当』と言っているんですが、争わなかった。すごい罪悪感を持っていると思います」

Q.次に、結愛ちゃんの話をお聞きします。なぜ、結愛ちゃんは逃げられなかった、あるいは逃げなかったのでしょうか。

西沢さん「年齢的にいって無理だったと思います。一般論ですが、幼児の場合、暴力を受けていたとしても、逃げるという発想はないでしょう。小学校高学年くらいにならないと、逃げだして、警察や児童相談所に助けを求める、という発想はできません。

ただ、彼女は『一時保護所に戻りたい』ということを主張しています。それはすごいことだと思いますよ。1回目の一時保護から帰ってきた後、自分から一時保護所に行きたいと言っています。親元を離れたかったんでしょうね。でも、それを実行するには幼過ぎたし、それを社会が期待してはいけません」

Q.では、周囲が結愛ちゃんを助けられなかったのでしょうか。

西沢さん「救えましたよ。だけど、残念ながら日本の文化とか人々の考え方とか、あるいは制度の面もあると思いますが、救うことを実行しなかった」

Q.それは、都の児童相談所のことですか。

西沢さん「都も香川もそうです。彼女は、自分が暴力を受けているということを周りに訴えていますから。医療機関も『これはまずい』と判断しているんだけど、やっぱり児童相談所がその判断を却下したわけです」

Q.結果論になりますが、児童相談所が甘かったのでしょうか。

西沢さん「甘いというより、今の日本のシステムが子どもを積極的に守るシステムにはなっていないんです。

児童相談所は、親と対立してでも子どもを守ることが求められるんですが、一方で、親を支援する役割も与えられている。ということは、対立したら支援できない。児童相談所としては、その後の親との関わりを重視するから、子どもの声を聞かない、という構造になっています。

そこは、制度から変えていかないといけない。『子どもを守る機関』と『親を支援する機関』を分けることが国で一時議論になりましたが、立ち消えになっている」

Q.では、優里被告が結愛ちゃんを救う機会はなかったのでしょうか。

西沢さん「難しいところですね。その疑問に答えようと思ったら、優里さんを知らなきゃいけないけど、私は彼女に接見していないこともあって分かっていない。結愛ちゃんは前の夫との、お互い10代の時の子どもですね。前夫との離婚も含め、彼女は家庭環境に恵まれなかったのかもしれません。

そんな彼女にとって、雄大さんは『救世主』だったかもしれないと思うんです。自分を救ってくれる」

Q.雄大受刑者が優里被告にとって救世主だとしたら、自分も結愛ちゃんも逃げられない、一緒に生きるしかないということでしょうか。

西沢さん「推測ですけど、世の中で一般に言われているような、DV被害の支配下にあったとは思えない。普通のDVだったら、加害者は子どもには関心がいかないんです。なぜかというと、自分の最大の関心事は自分のパートナーだからです。

身体的な暴力が向いたのは結愛ちゃんだけです。結愛ちゃんをあれだけ支配しようとした構造というのは、普通のDVのケースでは見ないことです。優里さんはどこかで、雄大さんの言うような子どもに結愛ちゃんがなる方がいいと思った節があります。共鳴している節が」

Q.「理想の家族をつくりたい」という雄大受刑者の思いに、優里被告もなっていたということでしょうか。

西沢さん「多分、自分たちを幸せにしてくれる頼もしい存在なんだと。それも言葉や暴力で支配されたからではなく、思っていたんじゃないかと私は思っています」

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西沢哲(にしざわ・さとる)

山梨県立大学人間福祉学部教授

1957年、神戸市生まれ。サンフランシスコ州立大学大学院教育学部カウンセリング学科修了。大阪大学大学院人間科学研究科助教授などを経て、現職。虐待などでトラウマを受けた子どもの心理臨床活動を行っている。著書に「子どものトラウマ」「子ども虐待」(ともに、講談社現代新書)、「トラウマの臨床心理学」(金剛出版)など。

コメント

1件のコメント

  1. 結愛ちゃんの死、心愛ちゃんの死には国の対策の大きな間違いで過ちである事実をまず国全体的に自覚する事だと私は思います。私は今も幼い4姉妹で泣き叫びを、家庭内暴力の親から助けたくて必死になって頑張ってきた者で私は伝えたい叫びは、虐待防止の義務者責任者である警察署と児童相談所と、DV避難所シェルターの職員達の認識不足の問題もですが、一番恐ろしい問題は、警察署も児童相談所もDVシェルターも自治体も、行政も政治家達も皆同じく勘違いして、被虐待児の権利より意思より親権者という虐待親を認めている恐ろしい事態にあり得ない対策と対応を私は直接体験して守れた助かるはずの、かけがえのない愛する4姉妹の悲鳴の叫びは、認めて貰えないで、無視されたと言うのが正しいと思いますが、結局このような国の法律の誤ちに、警察署と児童相談所とシェルターの職員達は、通報した家庭内暴力の加害者を親権者の権限だけを認めて、法律には被虐待児より親権者の意思を尊重する事だからと言い、家庭内暴力の実の親が4姉妹を連れ去る事件始末して、私と夫は親権者ではなくても血縁はなくても、4姉妹の意思は一番必要として私達夫婦の側に居たい強い意思があり泣き叫んでも、私達夫婦も4姉妹を引き取って安全に守って生きたい4姉妹と共の切なる願いは叶うこともなく逆に虐待とDVの家庭内暴力の実の親に引き渡して私達夫婦がわからない所に連れ去る事件結果にした警察署は私達夫婦の訴えの答えには法律の親権者の意思尊重だけを主張し法律を守る義務の職員だからと堂々と言ったのです。今もかけがえのない愛する4姉妹の安否も知らないまま、政治家に行政に事件管理する現場で起きた真実を訴えて4年が過ぎても私達夫婦と4姉妹はお互いに安否も知らないで、逢いたくても会える権限も認めない残酷な法律の問題が一番深刻な問題であることを、間違っている法律のせいで、虐待親から助けたくても助けられない私達夫婦のような者も存在していることを分かって貰えたくても、私達夫婦が訴えてきた数十人の虐待防止関係者達には見ぬふりして私達夫婦のような存在を知らない世の中である真実をこの場を借りて伝えたいと思います。最後にお願いがあります。私のメールには通信ができないので、できることならば電話番号に連絡をお願いしたいと思いますが、こちらに電話番号を書けないので、もし私達夫婦が今も背負っている4姉妹の涙の叫びの真実を聞きたいときには連絡ができる方法を教えてくださいますようにお願い致します。