もはや、魔法のつえではない? 「通販」をやめて、ブランド力と利益はついてくる!
成功の“魔法のつえ”とも言われる「通販」ですが、本当にそうなのでしょうか。ケンズカフェ東京の氏家健治シェフに、通販をやめた理由を聞きました。

いまや、通販は小売業界を席巻しつつあります。ショッピングモール、アウトレット、ファストファッションの拡大は、消費意識が「安価」「利便性」にシフトしていることを物語っています。通販は、成功するための魔法のつえのように称されることがありますが、通販をやめたことで売り上げとブランド力が強化されることもあります。
今回、話を伺ったのは、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフ。近著に「余計なことはやめなさい! ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方」(集英社)があります。
通販のメリット、デメリットとは
氏家シェフは、自社通販サイトを休止して売り上げを増加させました。店舗でしか買えないという希少性もあって、日本全国から客が訪れるようになり、取材依頼も殺到、「有吉くんの正直さんぽ」(フジテレビ系)、「ランク王国」(TBS系)、「ヒルナンデス!」「おしゃれイズム」「嵐にしやがれ」(以上、日本テレビ系)などで紹介されます。
ここで、通販という業態の特徴を整理してみましょう。消費者と直接対面せず、ネットによる注文で取引を完結させるのが通販の特徴です。かつて、氏家シェフは売り上げの7割を通販で計上していた時期がありました。立地の良い場所に店舗を出店しなくてもよく、休日や天候に左右されず安定した受注が見込めることが魅力だったといいます。
「通販は運営手数料や送料・包装資材などの経費を支払うので、すべてが利益とはいえません。当初は堅調だった通販も、売り上げが増えるにつれて利益率の問題が発生してきました。当店の商品はガトーショコラ1種類です。お店には、焼きたてのガトーショコラの香りが充満しており、それがたまらないと言ってくれるお客さまがいます。しかし、通販では、このような雰囲気が伝わりません」(氏家シェフ)
通販では、「毎日焼きたてのこだわり、そのものを見せたい」という形態は合わなかったのです。
「通販に『日時指定や再配達』はつきものですが、私たちの商品は通販には向かないことに気が付きました。通販をやめることで遠方のお客さまに商品が行き届かなくなりますが、商品の安全・品質維持も考えてやめることにしたのです。さらに、通販は広告の投下量で売り上げが左右されますが、当社のような形態は一気に注文が来ても対応しきれません。一日で焼き上げることができるガトーショコラに限界があるからです」
その後、氏家シェフは通販からの撤退を決意します。
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