走りたいけど痛くなるのは…運動後の「筋肉痛」、年を取ると遅く出るのは本当?
普段、運動していない人が急に激しい運動をすると、筋肉痛になりがちです。筋肉痛については「年を取ると、日にちがたってから痛くなる」と言われますが、本当でしょうか。

正月の箱根駅伝やニューイヤー駅伝を見て、「今年は自分も走ってみたい」と思った人も多いのではないでしょうか。秋~冬は市民マラソンのシーズンですが普段、あまり運動していない人が急に激しい運動をすると、筋肉痛になりがちです。この筋肉痛についてはよく、「年を取ると、日にちがたってから痛くなる」と言われますが、本当でしょうか。また、理由はどのようなものでしょうか。
光伸メディカルクリニックのメディカルコンディショニングトレーナー、井上涼上馬(りょうま)さんに聞きました。
加齢と直接的な関係はない?
Q.まず、筋肉痛が起きる仕組みを教えてください。
井上さん「筋肉痛のメカニズムは、まだ医学的にはっきりと解明されていません。これまで、『運動やトレーニングによって発生する乳酸が原因となっているのではないか』という説がありましたが、乳酸の蓄積時間と筋肉痛が発生するタイミングなどにより、この説は矛盾が生じます。
現在は『傷ついた筋線維や周囲の組織が修復されるときに起こる“炎症”が刺激物質を生産し、筋膜(筋肉を包む膜)を刺激することにより痛みが発生する』という説が有力になっています」
Q.運動直後ではなく、翌日、筋肉が痛くなることがあるのはなぜでしょうか。
井上さん「先ほどの『炎症での刺激物質生産→筋膜を刺激することによる痛み』の流れで考えると、刺激物質の生産から痛みが起きるまでの所要時間があり、翌日以降に筋肉痛が現れるということが考えられます」
Q.「年を取ると、日にちがたってから筋肉痛になる」というのは事実でしょうか。実際にそう感じている人たちはいるようです。
井上さん「『年を取ると、日にちがたってから筋肉痛になる』と言う人がいますが、加齢と筋肉痛発現の遅れは、直接的には関係がないといわれています。
ただ、メディカルコンディショニングのトレーニング指導をしている経験上、年齢を重ねることで身体の機能が全般的に衰えるため、回復機能も当然衰えることを実感しています。筋肉回復の『炎症→刺激→痛み』の一連のプロセスも若い世代より進行が遅くなるため、『日にちがたってから筋肉痛になる』と感じる人がいるのかもしれません。
さらに、年齢を重ねると『刺激に対する感覚』も衰えてくるため、『筋肉痛』として脳が認識する範囲(痛みを感じる幅)が狭まっているのではないかと感じます。つまり、年を取ると『日にちがたってから筋肉痛になる』というよりは『日にちがたってから筋肉痛を自覚する』ようになっている可能性があります」
Q.筋肉痛を予防する、運動前の準備があれば教えてください。
井上さん「完全に予防することは難しいと思いますが、まずは丁寧なウオーミングアップを行うことです。運動開始前に、しっかり体温、筋温(筋肉の温度)を上げて血流を良くし、筋肉を動きやすくしたり、関節を大きく動かせるようにしたりするためにストレッチを行いましょう。
初心者で柔軟性に自信がない人は『スタティックストレッチ(静的柔軟性を高める)』という、反動動作がない動きのストレッチから始めるのがおすすめです。ふくらはぎやすねなどの筋肉を、ゆっくり時間をかけて伸ばしていきます。実施する運動で負荷がかかりやすい部位、あるいは不安のある部位のストレッチを特に入念に行ってください。
ある程度、運動に自信のある人や運動でしっかり追い込みたい人は『バリスティックストレッチ(動的柔軟性を高める)』という大きな動きのあるストレッチも併せて行ってください。体の血液循環から筋温を高め、神経から筋への伝達速度と柔軟性を効果的に高め、動きやすい体を準備することができます。ラジオ体操も、一種のバリスティックストレッチです。このストレッチにより、運動開始直後の急激な筋肉への負荷を防ぐことができるので筋肉痛の緩和にもつながります」
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