かわいくない? 心ない声も…「雑種犬」ってそもそもどんな犬? 気性や飼いやすさは?
複数の犬種が混じり合った「雑種犬」を愛好する飼い主も多くいますが、「雑種の犬はかわいくない」という声もあるようです。そもそも、雑種とはどのような犬を指すのでしょうか。

複数の犬種が混じり合った「雑種犬」。個体ごとに大きく異なる表情や毛色などの個性に魅了され、愛好する飼い主も多くいますが一方で、「雑種の犬はかわいくない」「純血種の方がいい」などと面と向かって言われ、嫌な思いをしたことがある飼い主も少なくないようです。
ネット上では「腹が立つ」「そんなひどいことを言う人がいるのか」といった怒りの声や、「雑種は飼うのが難しいイメージがある」「『ミックス犬』とはどう違うの?」などの疑問も見受けられます。雑種犬の特徴や飼い方のポイントについて、獣医師の増田国充さんに聞きました。
「ミックス犬」とは何が異なる?
Q.そもそも、犬の「雑種」とは、どのような犬のことでしょうか。
増田さん「雑種とは、複数の異なる犬種から交配された犬のことを指します。定義上、同一の純血の犬種によって交配された子犬でないものは雑種とされます。一般社団法人ペットフード協会による『2018年全国犬猫飼育実態調査』によると、犬の場合は純血種の占める割合が8割以上を占めており、雑種の犬は少数派です」
Q.「ミックス犬」と雑種には、何らかの違いがあるのでしょうか。
増田さん「先述の通り、異なるルーツの犬種から生まれた子犬は雑種に該当するので、厳密にいえば大きな差があるわけではありません。雑種のうち、異なる純血種から生まれた子犬をミックス犬と呼び分けていますが、彼らは、双方の親の特徴を色濃く反映しているところがある、という点が特徴といえるかもしれません。
人間の場合も、父母の特徴をちょうど半分引き継ぐばかりでなく、父方あるいは母方寄りの特徴がはっきり出ることもあります。例えば、チワワとダックスから交配された、通称『チワックス』の場合であっても、チワワ寄り/ダックス寄りになることはよくあります。親の遺伝情報がどのように反映されるかは、個体によって差があるのです」
Q.一般的に、雑種の性格・気性や体質とは、どのようなものでしょうか。
増田さん「純血種は、ある基準に沿って身体的特徴が維持されています。また、その犬種の用途によって、好ましい性格が選択されてきた経緯があります。従って、純血種によってある程度、気質が似通ってきます。もちろん、個々による差があることは否定できません。例えば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは『非常に友好的であることが多い犬種』と紹介されることが多いように、『この犬種は人懐っこいから飼いやすい』という目安とすることができます。
雑種の場合は、ルーツが判明しづらいケースだと、どの程度の体格で、どんな体質なのかという基準が定まらない点があります。雑種であっても、異なる純血種から生まれた『ミックス犬』の場合は、その親の特徴が反映されていることが多いので、おおよその推測を立てることができます」
Q.雑種の犬の詳細な犬種(血統など)を知る方法はありますか。
増田さん「異なる純血種同士のミックス犬の場合は、その由来が表示されていることが多いので、その場で確認ができます。由来が全く不明な場合、DNAの解析によって犬種のルーツをたどる方法があります。血統が不明な雑種の犬の場合、遺伝情報から血縁の濃い犬種を類推することが可能といわれ、そこからかかりやすい疾患を探ることができるかもしれません」
Q.「雑種の犬は飼いにくい」というイメージを持っている人もいるようですが、実際にはどうなのでしょうか。
増田さん「雑種は飼いにくいと断定することはできません。純血犬の場合は遺伝的な気質が影響しますが、そうはいっても、飼い主さんのしつけやトレーニングによって性格の形成に影響が出ますし、雑種の場合も同様と考えます。従って、純血か否かが飼いやすさを左右する指標になるのではなく、愛情を持って、きちんとしたしつけができるかどうかの方が重要性を持っていると考えます」
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