営業最前線! 「価値を伝えるべき」「自分を売れ」の本当の意味とは?
近著に「成約率98%の秘訣」がある“営業のカリスマ”和田裕美さんに、営業活動の要点を聞きます。

会社員なら誰もが一度は経験する「営業」という仕事。「営業は売り込んではダメ。価値を伝えるべき」と言う人がいます。「商品ではなく自分を売り込め」という人もいます。営業研修で習ったトークでしょうか。そんな上司がいたら次のように質問してください。「価値を伝えるべき」の「価値」って何ですか。「自分を売り込め」の「自分」って何ですか。
今回は、作家の和田裕美さんに「営業活動の要点」について伺います。和田さんは、日本ブリタニカ在籍中に世界142カ国の社員中2位の営業成績を収めた営業のカリスマとしても知られています。近著に「成約率98%の秘訣」(かんき出版)があります。
「価値を伝えるべき」の「価値」とは
営業に必要とされる要点はいくつかあります。いまだに、情熱と気合を重視する人が少なくありません。元気ではつらつとした印象さえ与えられれば、その気迫に押され、成約できると勝手な思い込みをしているのです。しかし、その多くは間違っています。
和田さんが、最も売り上げを上げていたときの成約率は98%でした。これは、100人の人に会ったら98人がイエスになったという数字です。一般的な成約率が30%と言われますから、信じられないくらい売れたということです。いつしか、周囲の人はまるで不思議なものを見るかのように「和田マジック」と呼ぶようになりました。
どうして、そんなに売れたのか。誰もがそのマジックを聞きたがったそうですが、それは決して「マジック」ではありません。「クロージングスキル」にあったのです。クロージングとは締結を求めること。「買いますか」と選択肢を与えて、「今決めてください」とお客様の背中を押すのです。
いきなり、押し売りのように「今決めてください」と詰め寄ったりしてはクレームが出るだけです。クロージングは、そこに至るまでの手順を踏むことが必要です。どんなにいい「説明」をしても、クロージングをかけていなければ、よほどのことがない限り契約には至りません。和田さんが気を付けていることは何だったのでしょうか。
「それは『商品説明の前にお金の話をしてはいけない』という普遍的なルールです。これは別に、お金の話を隠せとか、そういうことを言っているのではなく、人は『価値』を感じる前に『価格』に意識がいってしまうと、途端に未来へのワクワクがしぼんでしまい、『お金がもったいない』という感情が出てきてしまうからです」(和田さん)
あなたは車を買おうとディーラーを回っています。ある車を見つけました。今、若い女性に大人気の車としてメディアで紹介されています。あなたはシートに座ります。「この車に総務課の聖子ちゃんを乗せたいな」「この車に乗ったらモテそうだ」。妄想したあなたの脳内にはドーパミンがあふれます。値段を見たら予算より高いことを知りました。
この流れだと、 あなたは「厳しいけど、ちょっと無理したら買えるかな。一番下のグレードにしてオプションを装備しなければいけるかも」と、どうやったらそれが買えるか考えるようになります。しかし、先に値段を見たらこうはならないと、和田さんは指摘します。
「『うわ、高っ! これは無理だよね』と苦笑いして座ってみることもせずに、あなたはその場をそそくさと去って、もっと安いものを探そうとするはずです」
結果的に、価値を先に感じた方が、より自分のワクワクした気持ちに素直に向き合うことができます。つまり、幸せな気持ちが大きくなります。
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