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自分を守りたいだけ? 「自虐」をよく言う人の心理的特徴とは 周囲に悪影響も?

自分で自分をおとしめる行為「自虐」。自虐的な発言が多い人の心理とは、どのようなものでしょうか。

よく自虐を言う人の心理とは?
よく自虐を言う人の心理とは?

 自分で自分をおとしめる「自虐」。自虐的な発言が多い人について「周りにいる」「自分のことだ」など心当たりがある人も多いのではないでしょうか。自虐を言う人の心理として、「他人に傷つけられたくない」ので、先に自分で自分を悪く言い、他人の発言で傷つく前にバリアーを張っているのではないか、とする声もあるようです。

 ネット上では「すごく分かる」「自虐で自分を守るということか」「自虐を言ってしまう癖を治したい」など、さまざまな声が上がっています。「つい自虐を言ってしまう人」に潜む心理について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

傷つけられる前に傷つける自傷行為

Q.一般的に、人が自分で自分をおとしめるときの心理とは、どのようなものでしょうか。

小日向さん「『自分で自分をおとしめて、他人から言われることを防ぎたい』という心理です。もちろん、本当は誰かに『悲しい』『愛されたい』といった心の悲鳴を聞いてもらい、慰めたり励ましたりしてもらいたいのですが、意図しない反応が返ってくると、さらに傷ついてしまう可能性があります。その痛みに耐えられそうにないので、他人から傷つけられる前に、痛みの加減が分かる自分が傷つけてしまうという『心の自傷行為』です」

Q.自虐を言う頻度が特に多い人は、どのような心理的特徴があると思われますか。

小日向さん「大きく分けて、次の3つの心理状態があります」

【保守】

「指摘されたくない」「触れてほしくない」という部分を自ら話すことで、他人からの「自分の自虐発言以上のダメージを受ける言葉」を未然に防いでいます。

【自己嫌悪】

誰でもミスなどをした際は「自分はだめだ」という心理状態になりますが、これは一過性のものです。しかし、自虐が多い人は恒常的に「私はこんな人間だから愛されない」「こんな人間だから嫌われる」というように自分のことが嫌いです。

【寂しさ】

自虐発言をすると「そんなことない」「大丈夫だよ」といった慰めの言葉が返ってくることも多いものです。そうした言葉を他人からかけてもらって、癒やされたり安心したりしたいのです。

Q.自虐を言う人と言わない人の違いは何でしょうか。

小日向さん「人間には『自分の心の中を他人に映して見たい』という心理があります。自虐を言う人は自分の心が泣いているため、鏡の中、つまり、他人の表情も『一緒に泣いていてほしい』と願います。そのために自虐を言って相手の心をネガティブにさせるのです。一方、自虐を言わない人は自己肯定感が高いので、常に自分は笑顔で鏡を見ています。鏡に映る他人にも笑顔でいてほしいため、自虐は言いません」

Q.「自虐ばかり言う人が苦手」との声も聞かれます。なぜ、自虐を多く言う人は苦手意識を持たれやすいのでしょうか。

小日向さん「自虐発言が好きなタイプは自己肯定感が低く、自分を大切に扱えない人です。そのため、自分を傷つける発言をします。あるいは他者の自虐に自分を投影して、自分自身の痛みを正面から感じないようなソフトな自虐も好みます。そのため、SNSなどで自虐発言をする者同士で盛り上がる傾向にあるのです。一方、自虐発言が苦手なタイプは自己肯定感があり、自分を大切にしているため、自虐を好きな人が発する、自分を粗末にするような思想や発言は聞いていると不快さを感じます」

Q.自虐を言う人は一般に、周囲にどのような影響を与えているのでしょうか。

小日向さん「『雰囲気』『勇気』『英気を養う』など、『気』を使った言葉はたくさんあります。つまり、言葉や心の在り方は『気』です。自虐発言は、ネガティブな『気』を空中に吐き出しているようなもの。これを日常的に受け止めている側は次第に心が疲弊してきます」

Q.自虐的発言が多い人とコミュニケーションを取る際、意識しておくべきことはありますか。

小日向さん「自虐発言に『本当にそうだよね』と同調したり、一緒にばかにして笑ったりしないことです。『そんなに自虐的になる必要はない。こんなふうに捉えたら長所だよ』といったように、反対側の視点から同じ事柄をポジティブに変換してあげられるとなおよいです」

Q.自虐を言ってしまう癖を治すことはできますか。

小日向さん「方法としては、2つ考えられます。一つは『自己分析』です。まず、自分は『何について自虐発言するのか』をチェックしてみましょう。例えば、容姿であれば『太っている』『痩せている』など、傷ついた他者からの言葉が過去になかったかを考えます。性格であれば、その性格によって何か嫌な経験がなかったかを考えましょう。次に、それを最初に植え付けられた体験は誰からによるものだったかを考えてみます。

そうして掘り下げていくと、『いつから自分は価値のない人間だと思うようになったのか』『それはなぜか』が見えてきます。このように俯瞰(ふかん)して自分を見つめると、その経験をした自分をいたわってあげる感情が出てきます。これが『自分で自分を癒やす』ということです。自らが癒やされてくると、自虐のように自分を傷つけることはできなくなります。

もう一つは『自己肯定感の高い人と付き合うようにする』ことです。先述のように、人間には自分の心理を相手に投影し、矛盾がないようにしたいという心理があります。自己肯定感の高い人と付き合うようにすれば、相手のポジティブな心理と自分の心理との齟齬(そご)がないようにしていけるでしょう」

(オトナンサー編集部)

小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

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