オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「最安値」「日本一うまい」…根拠のない宣伝に法的問題は? まずかったら返金可能?

スーパーや飲食店で「地域最安値」「日本一うまい」といった宣伝文句を目にすることがあります。法的に問題はないのでしょうか。

「最安値保証」などの表示、法的に問題ない?
「最安値保証」などの表示、法的に問題ない?

 スーパーや家電量販店、飲食店などで「地域最安値」「日本一うまい」「○日限定○○円」といった宣伝文句を目にすることがあります。宣伝文句に引かれて行ってみたら、もっと安く販売している店が近隣にあったり、料理の味が良くなかったりして期待外れに終わるケースもありますが、こうした根拠のない宣伝に法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

優良誤認表示と有利誤認表示

Q.「日本一うまい」「地域最安値」などの宣伝文句を根拠なく使用した場合、どのような法律に触れるのでしょうか。

牧野さん「景品表示法の『不当表示』にあたる可能性があります。『日本一うまい』は不当表示のうち『優良誤認』表示(競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示)に該当する可能性があります。『地域最安値』は不当表示のうち『有利誤認』表示(競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示)の可能性があります。

消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。当該資料が提出されない場合、不当表示とみなされます。景品表示法で違反とされている不当表示にあたれば、事業者側に故意や過失がなかったとしても、景品表示法に基づく措置命令(課徴金の支払い命令を含む)が行われます」

Q.例えば、「地域最安値」と宣伝する店で商品を購入した後、もっと安く販売している店が購入店の近くにあった場合、返金を求めることは可能なのでしょうか。

牧野さん「消費者契約法4条により、重要な事実を告げられなかったことを理由に、契約を解除して代金を返してもらえる可能性があります。ただ現実には、店側は全額返金することを嫌い、より安い店と比べた場合の差額の請求に応じる可能性が高いでしょう」

Q.「○月○日に限り○○円」と日にち限定で値引き販売していた店が、翌日以降も同じ値段で販売していた場合、法律に触れる可能性はありますか。

牧野さん 「『今買えば有利である』という表示をしていますので、有利誤認表示にあたる可能性があります」

Q.値札の下に小さい文字で「※この値段で購入するには以下の条件を満たす必要がある」などと記載し、「無条件でこの値段で買える」と来店客が勘違いするような広告を出した場合は。

牧野さん「商品やサービスの品質や価格を強調する表示に対し、その例外や条件を示すものを『打ち消し表示』といいます。打ち消し表示は、消費者が『無条件にあてはまる』と誤解しないよう、分かりやすく適切に示す必要があります。打ち消し表示の文字が小さかったり、強調表示から離れたところに記載したりするのは適切とはいえません。不適切な表示で、商品やサービスの品質・価格が他と比べて著しく優良・有利であると消費者に誤認されれば、不当表示となる可能性があります」

Q.実際に受けたサービスが宣伝の内容よりはるかに劣っていた場合、返金要求や提訴は可能でしょうか。例えば、高級旅館やホテルで「最高のおもてなしが自慢」とうたいながら、部屋は薄汚い、食事はまずいといった場合、飲食店で「高級和牛を使った料理」を注文したら、安い輸入牛と変わらない味の料理が出てきた場合です。

牧野さん「差額の返金は、契約違反による損害賠償請求や、不法行為による損害賠償請求などで法的には可能ですが、宣伝と現実の差の証明が必要なので、サービスや料理の味を巡る差額請求は実際には難しいでしょう。ただし、例外もあります。かつて、一流ホテルや百貨店、老舗レストランで、メニュー偽装が大きな問題になったことがありました。その一例である、高級和牛と輸入牛の差額のようなケースは証明がしやすく、返金請求は可能でしょう」

Q.宣伝や不当表示に関する判例はありますか。

牧野さん「食品加工卸売会社の社長が食肉偽装を行った『ミートホープ事件』では、組織的に素材を偽ったとして悪質と判断され、不正競争防止法2条1項14号違反(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)で実刑判決が科されました」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント