冷めた「お弁当」に抵抗がない日本人、どうしてコンビニ弁当だけは温める?
日本では、自宅から持参した弁当を冷めたまま、抵抗なく食べる人が多いですが、コンビニ弁当に限っては、ほぼ全員が温めて食べています。なぜなのでしょうか。

先日、台湾出身の日本語学校生が「なぜ日本人は冷めたままのお弁当を食べるのか」という意見を新聞に投稿し、ネット上で話題になりました。台湾では登校後すぐ、保温機に弁当箱を入れ、温かい状態でお弁当を食べるそうです。一方で、日本は、自宅から学校や職場に持参するお弁当や駅弁などを冷めた状態で食べることが多いですが、コンビニ弁当に限っては、ほぼ全員が電子レンジで温めて食べます。
なぜ、冷たい弁当を食べることに抵抗の少ない日本人が、コンビニ弁当に限っては温めて食べるのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。
ジャポニカ米は冷めてもおいしい
Q.そもそも、日本における弁当の起源は。
関口さん「お弁当の始まりについて、確認できる最も古い記述は奈良時代の『古事記』です。この時代も昼食を持参して出かける文化があったようです。干飯(ほしいい)といって、調理済みの乾燥米だった可能性が高く、平安時代には頓食(とんじき)といって、おにぎりなどが携帯されるようになりました。出先に食事を持ち出すという意味合いが強く、どこでも食事が取れるように工夫し、発展してきました」
Q.なぜ日本人は、冷めた弁当でも平気で食べられるのですか。
関口さん「日本のお米はジャポニカ米といって粘りが強く、アジアで多く食されるインディカ米に比べ、冷めてもおいしいことが特徴です。ジャポニカ米を主に食べることが、お弁当を温めて食べる習慣がない理由の一つではないかと思います。おかずに対しても、味付けを濃くしたり、水気が出にくい物、時間がたっても状態が変わりにくい物が弁当箱に入れられたりするなど、冷めてもおいしく食べられる工夫がされています」
Q.日本人は冷めたお弁当を食べても平気な人が多い一方で、コンビニ弁当は、ほぼ全員が温めてから食べます。
関口さん「コンビニ弁当を温めて提供することは、電子レンジを設置しているコンビニがサービスの一つとしており、温めることが多いのは、そのサービスを受けることが当たり前のこととして浸透しているからと考えます。
また、温かい食事の方が“豊かさ”を感じるからではないでしょうか。温め直すと肉がやわらかくなったり、よりおいしく食べられたりするからだと思います。コンビニ弁当は基本的に、温めなくてもそのまま食べられるので、電子レンジで温めるのは、単純に好みと気分が影響しているのではないでしょうか」
Q.コンビニ弁当には、「必ず温めてお召し上がりください」と表記されているものもあります。これは、改めて加熱しないと何らかの支障があるという意味でしょうか。
関口さん「チルド弁当といって、5度の冷蔵棚に置かれた商品の中には、温めることを前提に作られた商品があります。保存性が高いのと、温めることで再現性を楽しめる商品です。また、輸送の問題でスープをゼラチンなどで固め、温めて完成する商品もあり、こうしたものは温めて食べないとおいしくありません」
Q.どのような中身のお弁当であれば、温めて食べた方がよいのでしょうか。反対に、どのような中身のお弁当であれば、冷たいまま食べた方がよいのでしょうか。
関口さん「チルド弁当のような温めることが前提の商品、パスタやグラタン、ピラフ、シチュー、カレーのような油脂を多く使ったものは、温めて食べた方がよいでしょう。一方で、温菜と冷菜が両方詰めてあるお弁当は常温を前提に作られている可能性が高いです。そうめんやそば、冷やし中華など冷製メニューは言うまでもありません」
Q.梅雨の時期や夏場は、お弁当が傷みやすいといわれています。電子レンジでお弁当を温めることで、傷んだ食材を食べることを回避できますか。
関口さん「一度傷んだ食品は、電子レンジで温め直す程度では、殺菌することは難しいです。むしろ、朝にお弁当箱に詰める前におかずを電子レンジでしっかり温め直し、そして冷まして詰めることで、おかずの保存性が高まります」
(オトナンサー編集部)
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