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視聴率1ケタに沈む「いだてん」に浮揚策はあるのか

東京五輪招致から描くべきだった

 そもそも、今回の「いだてん」と同じく宮藤官九郎さん脚本の2013年度上半期の朝ドラ「あまちゃん」がヒットした要因は何だったのでしょうか。

 岩手の16歳・天野アキ(のんさん、当時は能年玲奈さん)がいる世界は2008年。物語の延長線上には、東日本大震災が控えていました。日本人として避けては通れない出来事を朝ドラというさわやかな枠でどう描くのか、視聴者の潜在的“興味”があったのではないでしょうか。それがあるがゆえに、宮藤さんの小ネタ満載のコメディーにもついていけたとも言えるでしょう。

 今回でいうと、視聴者の琴線に触れる出来事は1964年の東京五輪です。開会式をテレビで見ていた、あるいは国立競技場に見に行った、沿道でマラソンを応援したという人も、まだいらっしゃることでしょう。

 今さらではありますが、そうした視聴者の手触りの中に残っている五輪招致物語を、先に放送すべきだったのではないでしょうか。リアルタイムでその時代を生きていない人も、どのように招致が実現したのか少なからず興味があるはずです。

 また、五輪招致までの奮闘は、NHKのかつてのヒット番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」で取り上げられてもよさそうな題材です。招致チームには阿部サダヲさんをはじめ、星野源さん、松坂桃李さん、松重豊さんといったメンバーが配役されています。それは、まさに大河ドラマと呼ぶにふさわしい重厚な物語になるはずです。

 つまり、視聴率の浮揚は後半になるのではないでしょうか。

「日曜クドカン劇場」

 1963年に産声を上げた「大河ドラマ」の第1作は、江戸幕府の大老・井伊直弼の半生を描いた「花の生涯」でした。以降、1年間通して歴史上の人物を描くという、類を見ないスケール感で多くの視聴者の心を引きつけてきました。

 それから56年間、大河という枠は、テレビが家庭のど真ん中にあった時代から培われてきた「風格」「重厚感」というものをその身にまとうようになりました。

 さらに、この枠は、先人が歩んできた歴史をさかのぼることで、その“暮らしぶり”を理解し、日本人であることを再認識する貴重な時間帯でもあります。つまり、大河を見ることが、ある種の日本人のステータスになっていたのです。

 しかし、「いだてん」は、これまでの「歴史絵巻」という性格を帯びた大河ドラマとは雰囲気を異にする「コメディー」です。その理由は、宮藤さんが五輪という国威発揚のイベントを、ナショナリズムからかけ離れた視点で描いていることにあります。誤解を恐れずに言えば、「五輪」という、今まで誰も聞いたことも見たことも、ましてや経験したこともないイベントに図らずも参加することになってしまった一人の青年の“珍騒動”物語と言ってもいいでしょう(実際にそうであったかとは思いますが)。

 極端に言うと、「新・大河ドラマ」と看板を付け替えてもよかったくらいでしょう。または、スタート前に「日曜クドカン劇場『いだてん』」と見る側の心構えを提示しておくべきだったのかもしれません。いずれにしても今後、どのような展開になるのか見守っていきたいと思います。

(芸能ライター 河瀬鷹男)

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河瀬鷹男(かわせ・たかお)

芸能ライター

キャリアスタートはテレビ番組の制作。2014年頃から、Yahoo!ニュースやLINEニュースなど多くのニュースサイトに記事を配信している。主に、芸能系の分析を得意とする。

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