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20歳ひきこもり長女、発達障害で「美容師と話せずカット断念」 「障害年金」請求には高い壁…家族救った社労士の“一手”

まずは「本人の生きづらさ」を洗い出すところから開始

 専門家ではない家族が日常生活の困難さをまとめるのは確かに難しいかもしれません。そこで私は次のように言いました。

「まずは『お嬢さまが発達障害でどのような生きづらさを抱えているのか』を洗い出してみましょう。例えば『コミュニケーションが苦手』『いつもと違う状況になるとパニックになってしまう』『整理整頓が苦手』『不注意が多い』など、発達障害の特性と感じられる出来事はありませんか」

「そうですね…」

 母親はしばらく考え込んだあと、次のような話をしました。

 美緒さんはコミュニケーションを取ることが最も苦手だそうです。それが原因で高校も不登校になってしまったほどです。急に頭が真っ白になり、会話を続けることができなくなってしまうといいます。

 例えば、自宅にひきこもる前に美容室に行った際、美容師とコミュニケーションが取れず髪を切らずにそのまま帰ってきてしまったことがありました。

 また、ほぼ同時期に近所のスーパーで買い物をした際、買った商品をマイバッグに入れてほしいと店員に伝えられず、商品を両手で抱えて持ち帰ってきたこともあったということです。

 母親に促され、美緒さんはアルバイトの面接を受けたこともあります。しかし緊張のあまり体が固まってしまい言葉が出ず、質問に答えることができませんでした。その結果不採用となり、美緒さんは大きなショックを受けてしまいました。

 そのようなことで他人と関わることを諦めてしまった美緒さん。SNSをすることもなく、友人、知人に連絡をすることもありません。

 唯一話ができるのは美緒さんの母親だけ。しかし会話がかみ合わず、美緒さんも嫌気が差すのか「分かったよ。もういい!」と途中で会話をやめてしまうことも多いそうです。

 これらの話は、日常生活能力の「(5)他人との意思伝達および対人関係」に該当します。母親から簡単に聞き取っただけでも、美緒さんはコミュニケーションにかなりの困難さを抱えていることがうかがえました。

 面談の最後に私は言いました。

「今のようなエピソードをたくさんお話しいただければ、私の方で分類して文書にまとめることもできます。お嬢さまのエピソードを引き出すために、まず私が質問をしてそれに回答するといった方法を繰り返せば、文書を完成させることができるでしょう。ただし、それをするためにはお嬢さまの同意を得る必要があります」

「そうしていただけると大変助かります。私だけで文書の作成はできそうもありませんので、とても心強いです。さっそく長女に事情を説明してみます」

 面談後、美緒さんから同意を得た私は、さっそく母親と一緒に日常生活の困難さをまとめる作業に入りました。母親とのやりとりはメールで行い、無事に文書を完成させることができました。

 医師に提出する文書が完成した後、私はさらに別の書類を作成しました。

 障害年金では「病歴・就労状況等申立書」という書類の提出も必要になるからです。病歴・就労状況等申立書には、診断書では書き切れない本人の状態を記入することになります。

 発達障害がある場合は、病歴・就労状況等申立書は幼少期から現在までの状況を記載するルールになっています。

 これだけ聞くと大変そうですが、私が日常生活の困難さをまとめる際は「(1)私が母親を通じて美緒さんに質問する」「(2)美緒さんに回答してもらう」「(3)その回答をもとに私が文書を作成する」という手順で行います。従来のやり方とあまり変わらないため、病歴・就労状況等申立書の作成は、美緒さん家族にとってもそれほどハードルが高いものではありませんでした。

 そうこうするうちに診断書が完成。私はその他の必要書類をそろえ、障害基礎年金の請求をしました。その結果、美緒さんは無事に障害基礎年金の2級が認められました。

 障害年金では「その障害により本人の日常生活がどのくらい困難なのか」を主治医に伝えることがとても重要になります。

 本人や家族だけで伝えることが難しそうな場合、専門家である社会保険労務士の力を借りることも検討してみるとよいでしょう。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【要注意!】「えっ…知らなかった」 これが、ひきこもりの人に絶対にやってはいけない“NG行為”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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