「牛丼1000円」時代の幕開け!? すき家が高級和牛弁当で目指すものとは
牛丼チェーン「すき家」が発売した1080円の「黒毛和牛弁当」。牛丼といえばこれまで、200~300円台で食べられる“デフレの象徴”でしたが、こうした大きな変化は何を意味しているのでしょうか。企業と専門家に取材しました。
長方形の、見るからに高級感のある黒の容器。そこに、タレがしっかり染み込んだ和牛がご飯を覆うように盛られ、食欲をそそられる――。
大手牛丼チェーン「すき家」が11月17日から期間限定で発売した、1080円(税込み)の「黒毛和牛弁当」が話題です。
牛丼チェーンといえばこれまで、大手3社が200~300円台の低価格競争を繰り広げるなど“デフレの象徴”とされてきました。しかし、ここに来て、すき家が打って出たのは低価格路線ではなく、まさかの高級路線。
「最近の牛丼屋、どうしちゃったの」――。牛丼をこよなく愛する、オトナンサー編集部の記者がゼンショーホールディングス(HD)、そして専門家に取材しました。
「牛丼=チープ」というイメージの払拭
同社によると、すき家の2016年4~9月期の既存店売上高は前年同期比2.4%のプラスになりました。担当者がその理由に挙げるのは「客単価の上昇」。牛丼以外の「まぐろなめろう丼」(並盛り、税込み650円)、「うな牛」(並盛り、同880円)などの高価格商品がそれに貢献しているといいます。
また、同社の2016年4~9月期の連結純利益は、前年同期比98%増の49億円と過去最高を更新し、通期でも前期比75%増の70億円を見込みます。こうした好調な業績が、高級路線へのチャレンジを可能にしている側面がありそうです。
いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は、すき家の「黒毛和牛弁当」について、「牛丼はチープというイメージの払拭(ふっしょく)」「客層拡大」の2つが背景にあると指摘します。
「これまで『すき家』や『吉野家』は値引き合戦を行ってきましたが、最近は『100円引き』のような値引きを見なくなりました。牛丼は200円台で食べられるチープなもの、というイメージから脱却したいのでしょう」
鮫島さんによると、すき家の「まぐろなめろう丼」は「牛丼はそこまで好きでない人」、「牛すき鍋」は「鍋は食べたいけれど家で一人では…という人」を想定したメニューで、「黒毛和牛弁当」もそうした客層拡大の一環と見ることができるそう。
高級路線や客層拡大という、すき家の戦略は「吉」と出るのか「凶」と出るのか――。「黒毛和牛弁当」の売れ行きはその“試金石”と言えるでしょう。
(オトナンサー編集部)
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