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コインパーキング利用時、誤って別の「駐車位置番号」入力し精算 運営会社に返金請求できる?【弁護士が解説】

コインパーキングから車を出庫する際、精算機で誤って別の駐車位置番号を入力し、精算した場合、コインパーキングの運営会社に返金を請求できるのでしょうか。弁護士に聞きました。

コインパーキングの利用時、誤って別の駐車位置番号を入力して精算した場合、返金請求できる?(画像はイメージ)
コインパーキングの利用時、誤って別の駐車位置番号を入力して精算した場合、返金請求できる?(画像はイメージ)

 コインパーキングには、主にロック板(フラップ)方式の施設とゲート方式の施設があります。ロック板方式のコインパーキングから車を出庫する際、精算機で自分が利用している駐車位置番号を押して精算するのが一般的ですが、中には誤って別の駐車位置番号を入力し、精算してしまうケースもあります。この場合、運営会社に返金を請求することは可能なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

駐車場の運営会社に返金請求可能

Q.ロック板方式のコインパーキング利用時、誤って別の駐車位置番号を入力し、精算してしまった場合、返金を請求できるのでしょうか。コインパーキングの運営会社の中には、「誤って別の駐車位置番号を入力して精算しても、返金はしない」とコインパーキングの看板や公式サイトなどに記載している会社があるようですが、その場合はいかがでしょうか。

牧野さん「誤って別の駐車位置番号を入力し、誤って精算してしまった場合、コインパーキングの運営会社に連絡をして返金してもらえるように依頼することが可能です。民法の規定では、他人の債務の弁済をしたことになります(民法707条)。そのため、支払いが証明できる領収書を保管してあれば、それに基づいて時効で債権を失うまでは請求することが可能です(同条1項)。時効は5年です。

コインパーキングの看板やコインパーキングの運営会社の公式サイトなどに『誤って別の駐車位置番号を入力して精算しても、返金はしない』と書かれていた場合、利用者が公式サイトの約款を見ていた場合でも、『返金をしない』という利用者に不合理な条項のため、民法の定型約款の規定により、『返金をしない』規定の有効性を争うことはできると思います。

もし受け付けてもらえない場合には、大きい金額の場合、少額訴訟の裁判を検討することになるでしょう」

Q.誤って別の駐車位置番号を入力し精算した場合、その駐車番号の車の持ち主に料金を請求することは可能なのでしょうか。それとも難しいのでしょうか。

牧野さん「可能です。民法の規定では、誤って精算した駐車位置番号に止めてある当該車の人に賠償を求めることができますが(民法707条2項)、車のナンバーを手掛かりに支払い義務がある当事者を確認して請求するには手間がかかります。通常はすぐにコインパーキングの運営会社に連絡をして返金してもらえるように依頼するのが得策でしょう」

Q.誤って別の駐車位置番号を入力し、精算をした後、自分の駐車位置番号の精算をしたまま何もせずに現場から立ち去ったとします。もし誤って精算した駐車位置番号のロック板が下がっている間、その番号に止められている車が盗まれたり、いたずらをされたりするなどの損害が生じた場合、賠償責任が生じる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「先に精算した駐車位置番号に止めてある当該車が盗難に遭った場合には、誤って別の駐車番号を入力し、精算をした後、自分の駐車番号の精算をしたまま現場から立ち去った人に過失があったかどうかが、不法行為による民法709条の損害賠償責任の有無に影響します。同法709条の損害賠償責任を問うには、加害者側の故意もしくは過失が必要となります。

当該先に精算した駐車位置番号をすぐにコインパーキングの運営会社に連絡をして盗難に遭わないように注意を払っていれば、責任を負わないでしょう。そうでない場合には、状況によって過失が認められ、損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.コインパーキングにおける違法行為について、教えてください。

牧野さん「料金を踏み倒して不正に出庫する行為は、駐車場を運営する者の業務を妨害する『威力業務妨害』に当たるため、刑法234条の威力業務妨害罪に該当する可能性があります。法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

また、駐車場のロック板が上がっている状態で無理やり出庫して機械や設備を破壊した場合には、刑法261条の器物損壊罪が適用される可能性があります。器物損壊罪の刑罰は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料です」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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