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車の「へこみ」直さずに運転…もしかして“道交法違反”に該当? 弁護士に聞く

ボディーが部分的に破損した車を運転した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

ボディーにへこみがある車を運転すると、道交法違反に?(画像はイメージ)
ボディーにへこみがある車を運転すると、道交法違反に?(画像はイメージ)

 休日に車で外出する人は多いと思います。車を運転中、ボディーが部分的にへこんだ車が走っているのを見掛けたことはありませんか。このような車を運転した場合、道路交通法違反に該当する可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

3カ月以下の拘禁刑を科せられる可能性も

Q.そもそも、車の運転中に壁や建物などにぶつけてしまった場合、警察に届け出る必要があるのでしょうか。

牧野さん「車の運転中に壁や建物にぶつけてしまった場合、軽微な事故でも必ず所轄の警察署に届け出る必要があります。これは道路交通法72条で定められた義務であり、この報告義務に違反すると3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法119条1項17号)。それに加えて、後日保険が使えないリスクもあるため、所轄の警察署への事故報告は必須です」

Q.物損事故で車が破損した場合、破損の程度にかかわらず、車を修理しなければならないのでしょうか。ボディーが部分的にへこんだ車が走っていることがありますが、法律上問題はないのでしょうか。

牧野さん「車の破損が道路交通法違反や道路運送車両法違反に該当するかどうかは、その破損の状態によります。軽微な破損で、鋭い突起が露出しておらず歩行者に危害を及ぼす恐れがない場合は問題ありませんが、『車体が裂けて鋭い突起が露出している』『タイヤが露出してしまっている』『ライトの正常な点灯に影響が出ている』などの場合には、歩行者や他者に危害を及ぼす恐れがあるとして、道路運送車両法の保安基準に違反する『整備不良車両』とみなされます。整備不良車両を運転すると道路交通法62条違反に該当し、3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

こうした保安基準に適合しない車両を発見した地方運輸局長は、整備を命じることができ、これに従わない使用者は道路運送車両法54条違反に該当するとして、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(同法109条7号)。

整備不良が原因で事故を起こし、それにより他者に損害を与えた場合には、運転者は不法行為による民事上の損害賠償責任を負うこともあります。整備不良車両については、その他、次のような反則金や違反点数、罰則が科されます」

【整備不良車両を運転した場合の罰則】
■制動装置(ブレーキ)の整備不良 道路交通法違反に該当

普通車で反則金9000円、違反点数2点

■尾灯、制動灯、方向指示器の整備不良 道路交通法違反に該当
普通車で反則金7000円、違反点数1点

■タイヤの溝に関する整備不良 道路交通法違反に該当
普通車で反則金9000円 違反点数2点
タイヤの溝が1.6ミリ以下でスリップサインが露出した状態で走行することは禁止されている。

■不正改造 道路運送車両法違反に該当
6カ月以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金

■整備命令無視 道路運送車両法違反に該当
6カ月以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金

車の状態によっては、専門家でなければ判断が難しい場合があります。車が破損した場合は速やかに専門業者に相談し、修理を依頼することが重要です。

Q.もし物損事故で車のライトが破損したにもかかわらず、修理せずに夜間に車を走らせたとします。事故を起こした場合、刑罰は重くなるのでしょうか。

牧野さん「ライトが破損した車を、それを認識しつつ運転して事故を起こせば過失の程度が重く判断されます。その結果、適用罪の法定刑の枠の中で実際の刑罰は重く下されることになります」

Q.このほか、車検切れの車を運転した場合、どのような刑罰を科される可能性があるのでしょうか。車検が切れていると知りながら車検切れの車を運転した場合、車検が切れているのを忘れて運転した場合とでそれぞれ教えてください。

牧野さん「車検切れの車を公道で運転した場合、道路運送車両法58条違反となり、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(同法108条)、および違反点数6点、30日間の免許停止という行政処分が科せられる可能性があります。

さらに、車検切れの車は自賠責保険(強制保険)も切れていることが多く、事故を起こした際には『無保険運行』として、さらに重い罰則が科される可能性があります。この場合、自動車損害賠償保障法5条違反に該当し、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられるほか(同法86条の3の1号)、違反点数6点となり、免許停止処分となる可能性があります。

無車検運行と無保険運行の両方の罪が成立する場合には、刑法47条の併合罪が適用されて、『1年6カ月以下の拘禁刑または80万円以下の罰金』が科せられる可能性があります」

(オトナンサー編集部)

【要注意】知らなかったじゃ済まされない! これが、へこんだ車を運転した場合の“法的リスク”です

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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