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わかる! 実践する! 「ストレス」との上手な付き合い方

すぐにできるストレス解消法「自律訓練法」

 自宅や職場、外出先などでも簡単にできるストレス解消法の1つに「自律訓練法」があります。1930年代にドイツの精神医学者J.H.シュルツによって提唱されたもので、現在も心療内科や精神科で使われている一種の「自己催眠法」です。

 自律訓練法には、数分で心と体をリラックスさせ、疲れを取り除く効果があるとされています。1日に2~3回、1回2~3分を目安に試してみましょう。椅子に座ったり、横になったりしてもできるため、状況に合わせて選びましょう。

・自律訓練法の準備

 トイレは済ませておき、体を締めつける小物類(ネクタイやベルト、腕時計、アクセサリー)は外しておきます。最初は明るすぎない、静かで落ち着ける部屋で行うと、より効果的です。

・自律訓練法の基本姿勢(背景公式)

 椅子に座って行う場合は、足の裏を地面につけた状態で深く腰かけ、両手両足を楽にしてください。頭から吊られているようなイメージで、自然にスッと背中を伸ばした状態を。全身の力を抜き、背中や腰、肩などを緊張させない姿勢が基本です。

 寝る場所があれば、背中を地面につけて仰向けに。両手両足を軽く開き、力を抜いて全身を楽な状態にしましょう。

 何も考えずに軽く目を閉じ、「気持ちが落ち着いている」と心の中で数回繰り返し、落ち着くのを感じましょう。草原や海、大空、川の流れなど、リラックスできるような風景を想像するとスムーズにできます。

・自律訓練法「6つの公式」

 自律訓練法には6つの公式があります。まず慣れるまでは第1公式と第2公式から始め、できるようになれば、次のステップに挑戦してください。

第1公式(重感練習)

 落ち着いてきたのを感じたら、次に右手(利き手)を意識します。右手に重みを感じるように集中してください。「右手が重い」「気持ちが落ち着いている」「右手が重い」と心の中で繰り返し、これを「右手→左手→右足→左足」の順に行います。意識しすぎてはいけません。リラックスして余分な力が抜ければ、自然に重さを感じるようになります。「両手→両足」の順に行っても構いません。

第2公式(温感練習)

 右手(利き手)を意識して、右手の温かさを感じるようにします。「右手が温かい」「気持ちが落ち着いている」「右手が温かい」と心の中で繰り返し、「右手→左手→右足→左足」の順に行います。「両手→両足」の順に行っても構いません。

第3公式(心臓調整)

 心臓が脈打っているのを感じるようにします。

第4公式(呼吸調整)

 楽な状態で深く呼吸していることを感じます。

第5公式(腹部温感)

 おなかが温かくなってくるのを感じます。

第6公式(頭部調整)

 額がすっきりと涼しくなるのを感じます。

※消去動作

 訓練が終わったら必ずこの「消去動作」を行ってください(ただし、寝る前に布団の中で行った場合はそのまま寝ましょう)。両手をゆっくりと握って、ゆっくりと開きます。その後、大きく背伸びをしたり、首や肩を回したりして体をほぐします。だるさがなくなったら立ち上がりましょう。

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吉野聡(よしの・さとし)

新宿ゲートウェイクリニック医師

1978年神奈川県生まれ。筑波大学医学専門学群を卒業後、精神科病院勤務、東京都知事部局健康管理医(精神科担当)、筑波大学医学医療系助教を経て、2012年7月に吉野聡産業医事務所を開設。また、2015年4月には、働く人のメンタルヘルス問題を解決するため、新宿ゲートウェイクリニックを開院。専門は労働者のメンタルヘルスとその関連法規で、現在は、大企業からベンチャー企業まで幅広く、予防的メンタルヘルス活動と、困難事例への実践的対応に取り組んでいる。著書は「『職場のメンタルヘルス』を強化する」(ダイヤモンド社)、「『現代型うつ』はさぼりなのか」(平凡社新書)など多数。博士(医学)、法務博士、精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医、 労働衛生コンサルタント(保健衛生)。新宿ゲートウェイクリニック(http://shinjuku-gateway.com/)。

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