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五月病&六月病は何が違う? “心が疲れたとき”の乗り越え方【専門家解説】

5月から6月は心身の不調が現れやすいといわれています。こうした状態は「五月病」「六月病」と呼ばれていますが、どのように対処したらよいのでしょうか。専門家が解説します。

五月病や六月病とみられる症状が出たときの対処法は?
五月病や六月病とみられる症状が出たときの対処法は?

 5月から6月にかけて、「何となくやる気が出ない」「朝起きるのがつらい」「仕事に行きたくない」など、心身の不調が現れることがあります。こうした状態は「五月病」「六月病」といわれていますが、どのような違いがあるのでしょうか。五月病、六月病の原因や対処法について、アスリートやビジネスパーソンなどにメンタルトレーニングを行う脳レボ(神戸市)代表の川谷潤太さんに聞きました。

無理にポジティブになろうとするのはNG

Q.そもそも、五月病、六月病とはどのような状態なのでしょうか。発症の原因や背景も教えてください。

川谷さん「まず、五月病、六月病は医学的な病名ではありません。主に春から初夏にかけて起こる、心と体のエネルギー低下による不調を指す俗称です。

特に多いのが、ゴールデンウイークなどの連休明けに感じる『日常への切り替えの難しさ』です。長期の休暇で非日常を味わった後、仕事や学校という日常へ戻る際、そのギャップが心に負担をかけます。また、次のようなタイミングで、人は『心のエネルギー』が落ちやすくなります」

・未来が見えないと感じたとき
・失敗や怒られるなど、ネガティブな出来事があったとき
・疲れが蓄積しているとき

特に春は、新生活や人間関係の変化によるストレスが多く、そうした要素が複雑に絡み合い、「何となく気分が沈む」「心身の疲労を感じる」といった状態につながるのです。

Q.五月病と六月病にはどのような違いがあるのでしょうか。

川谷さん「両者の本質的な症状や原因は似ていますが、発症のタイミングに違いがあります。例えば五月病は、新しい環境への適応疲れがゴールデンウイーク明けに一気に表面化することで起こります。

六月病は、新生活が始まって2カ月ほど経過した梅雨の時期にじわじわと不調が現れるのが特徴です。新しい環境にはある程度慣れてきたものの、『目標がうまく達成できない』『人間関係が思うように築けない』など、中長期的なストレスが原因です」

Q.五月病や六月病とみられる症状が出たときは、どのように対処すればよいのでしょうか。

川谷さん「不調を感じたとき、大切なのは『無理をしない』『1人で抱え込まない』ことです。エネルギーが落ちているときは、まず回復を優先しましょう。代表的な対処法は次の通りです」

(1)心のエネルギーを整える
部屋を掃除、換気したり、自然の中を歩いたりするのがお勧めです。身の回りを整えると脳が「今の自分は大丈夫」と認識しやすくなり、安心感が生まれます。自然や風通しの良い空間は、脳にポジティブな刺激を与えることが分かっています。

(2)未来に目を向ける
旅行やレジャーなど、楽しみにしていることの予定を基に計画を立てたり、やりたいことのリストを作ったりしてみましょう。

脳は「不確実な未来」よりも「楽しみな未来」に意識を向けているときの方が、やる気や活力を生み出しやすくなります。ワクワクする予定があると、「それまで頑張ろう」と思える支えになるのです。

(3)運動を習慣にする
週2~3回のウオーキングや軽いランニングなど、有酸素運動をしてみましょう。運動によって“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンやドーパミンが分泌され、感情が前向きになりやすくなります。

Q.五月病や六月病とみられる症状について、受診の目安はありますか。

川谷さん「五月病や六月病の症状で、次のような症状が見られる場合は、医療機関や専門家の力を借りることを検討しましょう」

・職場や学校に行こうとすると涙が出る
・「消えたい」「死にたい」といった強い否定的感情がある
・感情が何も湧かない「無」の状態が続く

こうした状態は、単なる気分の落ち込みではなく、専門的なケアが必要なサインです。無理をせず、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

Q.五月病や六月病とみられる症状が出たときにやってはいけない行動はありますか。

川谷さん「回復を妨げるNG行動を避けることも、非常に重要です。主に次の3つの行動をしないように注意してください」

(1)無理にポジティブになろうとする
「頑張らなきゃ」「やらなきゃ」と追い詰めるのではなく、「今はしんどい」と認めることが第一歩です。

(2)悩みを否定する、人と比較する
「甘えじゃないの?」「みんな頑張っているのに」と自分や他人を責めることは逆効果です。

(3)無理強いする、完璧を求める
家族や友人、知人に症状が出ている場合、本人の気持ちに寄り添わずに行動を強制したり、理想を押し付けたりすることは、本人の心をさらに疲弊させてしまいます。

「甘えているのかもしれない」「みんな頑張っているのに、自分だけ弱音を吐いていいのだろうか」と思ってしまうこともあるかもしれません。でも、そうやって自分の悩みやつらさを否定してしまうと、ますます誰にも話せなくなってしまいます。

無理に気合いで乗り切ろうとせず、「今はそういう時期なんだ」と自分の状態を認めてあげることが、心の回復の第一歩です。

 五月病や六月病は、誰にでも起こりうる心の自然な反応です。重要なのは、「そのサインに気付き、自分を責めず、適切な対処法を知っておくこと」です。

 人生の中では少しペースを落とすことも必要です。自分なりのリズムを見つけ、未来に小さな希望や楽しみを持ちながら、一歩一歩、乗り越えていきましょう。

(オトナンサー編集部)

【豆知識】五月病、六月病…これが“心が疲れたとき”の乗り越え方です

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川谷潤太(かわたに・じゅんた)

脳レボ代表

兵庫県の大手学習塾において当時最年少で校⻑に就任後、1教室で1000人以上の生徒が通う学習塾に発展させ、講師研修や入試特番テレビのコメンテーターなども務める。

その後、岡山県の創志学園高校へ赴任し、学校改革とスポーツメンタル指導を担当。史上最速、創設1年、全員1年生で甲子園に出場した硬式野球部では3季連続甲子園出場を果たし、6人のプロ野球選手が誕生。ソフトボール部では3季連続日本一、柔道部では日本一や世界一の選手も輩出した。

2019年に脳レボを創設し、オリンピック選手やプロ野球選手など、アスリートやスポーツチームへのメンタル指導、子ども、保護者、教員向けの教育講演、企業の人材育成マネジメントや研修などを手がけ、講演回数は8年間で1500回以上、受講者は12万人を突破。脳科学や大脳生理学、バイオフィードバック工学をベースとした、具体的かつ実践的な手法により、多くの人の願望目標達成をサポートしている。保有資格は上級心理カウンセラー、行動心理士。脳レボ(https://nourevo.co.jp/)。

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