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「カット野菜は栄養がない」←本当なの? 管理栄養士に聞いてみた結果

毎日の食生活で“時短”をかなえてくれる「カット野菜」ですが、「栄養はちゃんと取れるの?」「栄養ないのでは」という声も……実際どうなのか、管理栄養士に聞いてみました。

「カット野菜は栄養がない」との声も…実際は?
「カット野菜は栄養がない」との声も…実際は?

 コンビニやスーパーで販売されている「カット野菜」。野菜が食べやすい大きさにカットされていることから、そのままサラダとして食べたり、包丁やまな板を使わず調理に使えたりと、毎日の食生活で“時短”をかなえてくれる便利な商品です。「手軽に使えるから野菜不足も解消しやすい」という声も多いカット野菜ですが、一方で「カット野菜って栄養はないのでは」「カット野菜でも栄養はちゃんと取れるの?」「普通に売ってる野菜より栄養が少なそうな気が……」など、含まれる栄養の量に対する疑問の声も少なからず聞かれます。

 市販のカット野菜には栄養が含まれているのか……管理栄養士の岸百合恵さんに、カット野菜の疑問をぶつけてみました。

「水溶性の栄養素」の損失は免れないけれど……

Q.「栄養がない」といわれることもある市販の「カット野菜」ですが、実際のところ、栄養は含まれているのでしょうか。

岸さん「カット野菜は、厚生労働省が作成した『大量調理施設衛生管理マニュアル』に沿って製造・加工されており、『流水で十分洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウムなどで殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いを行う』というルールが決められています。

確かに、カット野菜を洗浄する際に、水に溶けやすい性質を持つ水溶性の栄養素の損失は免れませんが、これは家庭での調理でも同じことです。家庭で丸ごとの野菜を切って洗っても、水溶性の栄養素はある程度失われてしまうので、『カット野菜だから栄養がない』わけではありません。ただ、カット野菜は洗浄の過程が多いため、家庭調理よりは多少損失は多いと考えられます。

それでもカット野菜は、水溶性のビタミンでも平均して6~7割以上残っており、ビタミンA・D・E・Kなど脂溶性のビタミンや、食物繊維は流されずにしっかり残っています。

野菜の栄養素は、収穫後から少しずつ減っていくので、冷蔵庫の中でしばらく眠ってしまっている野菜より、カット野菜の方が多い栄養素もある可能性があります。

水溶性のビタミンが3〜4割減ってしまうことと、6〜7割以上残ることをどう捉えるかは人それぞれですが、残る分の栄養を手軽に摂取できることは事実です。『減っているからダメ』ではなく、減った分は多めに食べたり、他の物で補ったりすることを考えるとよいでしょう。

ちなみに水溶性の栄養素は、水溶性のビタミンB群、ビタミンCのほか、ミネラルのカリウムが該当します」

Q.つまり、市販のカット野菜でも「野菜不足を補える」と考えてよいでしょうか。

岸さん「はい。先述したように、製造過程で損失する栄養素もありますが、残る栄養素も多くあるため、カット野菜を食べることで栄養は取れます。

しかし、そもそもカット野菜は、キャベツやレタスなどの葉物野菜が中心です。水分量が多い野菜のため、カロリーも栄養素も比較的少なめで、1パック食べる程度では必要量を満たすには到底足りません。

それでもカット野菜には、野菜不足の人に手間なく、手軽に野菜を取る機会を増やせる手軽さがあります。『1パックでは、栄養の必要量を満たせない』ことを知った上で、上手に取り入れられるといいと思います」

Q.最後に、特に栄養を取りやすい「カット野菜でおすすめの野菜」を教えてください。

岸さん「基本的に、色の濃い野菜の方が栄養価に優れている傾向があるので、彩りが鮮やかで色の濃い野菜が入っている商品を選択しましょう。キャベツミックスなどの単品よりは、なるべく数多くの種類の野菜が入っている商品の方が、いろいろな栄養素を摂取できるのでおすすめです。

製造過程での衛生や、使用される薬剤などが気になるという人もいるかもしれません。そのような場合は無理に食べる必要はありませんが、普段は生野菜を家庭で洗って調理し、時間がないときにカット野菜を利用して時短調理をする……というように、上手に使い分けられるとよさそうです」

(オトナンサー編集部)

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岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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