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“52歳ひきこもり男性”が重度の糖尿病と診断 「人工透析しなければ命に…」 社労士が差し伸べた“救いの手”

障害年金の請求時期には特例も

 智明さんの状況を話し終えた母親は心配そうな表情で言いました。

「息子は障害年金を請求できるのでしょうか。もし請求できるとしたら、いつ頃になるのでしょうか」

 この問いに答えるためには、もう少し情報が必要になります。

 そこで私は、智明さんの年金加入状況を確認しました。

 智明さんは20代で退職した後はずっと国民年金に加入しており、国民年金保険料は今まで親が代わりに支払ってきたそうです。

 よって、智明さんは糖尿病で初めて病院を受診した日(近所の内科を受診した日)は国民年金に加入中であり、国民年金保険料の未納もないので、障害基礎年金を請求することができます。

 障害基礎年金は1級と2級があり、より障害状態が重い方が1級で、年金額もその分、多くなります。

 なお、人工透析を受けている人の障害状態は2級に相当するので、金額は次のようになります。

障害基礎年金2級 6万8000円
障害年金生活者支援給付金 5310円
合計 7万3310円
※2024年度の金額でいずれも月額換算

 次に、私は障害基礎年金の請求時期について説明しました。

 障害年金(障害基礎年金および障害厚生年金)は、障害認定日以降に請求をすることができます。障害認定日とは、原則、初診日(その病気で初めて病院を受診した日)から1年6カ月を経過した日のことをいいます。

 ただし、障害認定日には特例があります。人工透析の場合、人工透析を受けた日から3カ月を経過した日が障害認定日となります。

 智明さんの場合、初診日(近所の内科を受診した日)は2024年3月10日。人工透析を開始した日は2024年3月29日、透析開始から3カ月が経過した日は2024年6月29日です。以上のことから、智明さんは初診日から1年6カ月を待つことなく、2024年6月29日以降に障害基礎年金を請求できます。

 説明を聞き終えた母親は言いました。

「息子には何かとお金もかかりますから、早めに障害基礎年金を請求したいと思います。ですが、請求に向けて何から始めればよいのかはまったく分かりません。請求にご協力いただけますでしょうか」

「はい、大丈夫です。まずは息子さんの同意を得るところから始めましょう。同意が得られれば、私が速やかに書類をそろえて請求します」

「分かりました。すぐに息子に確認し、ご報告します」

 面談後、智明さんから同意を得た私は、障害基礎年金の請求に必要な書類をそろえ、請求を完了させました。

 請求から3カ月を過ぎた頃。智明さんは障害基礎年金の2級が認められました。

 障害基礎年金が認められた後、母親から連絡がありました。

「おかげさまで息子は障害基礎年金が受給できるようになりました。年金が受けられるようになったのはありがたいのですが、息子はこれから一生人工透析を続けなければなりません。せめて数年に一度でもよいから健康診断を受けてくれていれば、ここまで病状が悪化しなかったのではないかと思ってしまいます。そんなことを言っても、もう遅いのですが…」

 母親は心から悔やんだ様子でそう言いました。

 今回のケースのように、人と接することを好まないため、病院に出向いて健康診断を受けることをためらってしまうお子さんも多いと思います。

 最近では、自宅で使える検査キットなども登場しています。お子さんのひきこもりが長期化し、何年も健康診断を受けていないようであれば、そのような検査キットを活用することも検討してみるとよいかもしれません。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】たばこ代に月3万…これが社労士が遭遇した「ひきこもり」の人の“仰天エピソード”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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