【物議】石破茂首相の振る舞いにSNS「がっかり」 改めて考える「ビジネスマナー」の重要性<専門家解説>
「ビジネスマナー」はなぜ重要か
Q.石破首相のこうした振る舞いについて、SNSでは「周りに指摘する人はいなかったのか」「正しいマナーを教えてあげられる人が近くにいるべき」といった声も上がっているようです。これについてどう思われますか。
西出さん「周囲からの助言は、とても大切なことと考えます。ここで大切なことは、助言の仕方、そして助言の受け取り方です。
助言は、その人のためを思って、その人の助けになるために伝えることです。例えば、先輩に対しては言いにくいことでも、伝えてあげることで先輩が恥をかかずに助かることもあります。私はこれを『言葉の花束を贈る』と言っています。
助言をする人は、例えばですが『恐縮ですが』などの前置き、クッションとなるひと言を添えて、具体的な助言を伝えるとよいでしょう。指摘するだけでは助言にはならないので、『こういうときには、このようにしたらよいと思います』『一般的には、こういうときには、このような振る舞いをします』など具体的に伝えて差し上げます。
そして、助言を受ける側は、助言してくれる人の立場に立ってみましょう。言いにくいことを言ってくれる場合もあります。自分のためを思って伝えてくれる人に感謝の気持ちを伝えます。その上で、それを素直に受け入れ、行動してみるかどうかです。疑問があれば、それを正直に伝え、互いに心と心を開き合い、対話をすること。そして最終的にその学びをどう振る舞い、生かすか。そうしたコミュニケーションは今の時代、またこれからの時代にはさらに大事なことです。
一人の知識や力には限界もありますし、間違った思い込みなどもあります。そういうときに、周囲からの助言により、大きなトラブルや、機会損失などのロスやダメージを避けることができます。互いの立場はありつつ、互いに敬意、尊重しながら、マナーあるチームビルディングを重要視している職場も増えています。
また、助言をする人は、『これはご存じだろう。だからお伝えすることはかえって失礼になる』などの考えから、伝えていないこともあります。ところが、ふたを開けてみると、意外に相手はそれを知らないことも多いのが現実です。『これは知っているだろう』というのは自身の思い込みであり、相手がどうなのかは分かりません。だからこそ、コミュニケーションを取ることが大切だと思うのです。このような場合は、『ご存じかとは存じますが、念のためにお伝えいたします』などの前置きをした上で、確認の意味も含めて伝えるとよいのではないでしょうか」
Q.今回のケースから改めて考えたい、「ビジネスマナーの重要性」とは。
西出さん「マナーは思いやりの気持ちを持って、相手の立場に立ってみることからスタートします。一般的な職場も同様ですが、例えば、組織は異なったとしても、一緒に仕事をする人たちはそのプロジェクトにおける仲間、チームです。例えば、上長について取引先に同行するときも、ある種のチームといえます。上長に恥をかかせることのないよう、上長の立場に立ってみて、それを自分事として考えたときに、『同行時に自身がやるべきこと』が見えてきます。一方、上長も部下の立場に立つマナーの心から、部下を思いやる気持ちからなる言動が必要です。
マナーは、一方通行では成り立ちません。双方にマナーの心がある場合に、ウィンウィンの関係が生まれ、結果『三方よし』となります。また、見聞きできる型だけを決めつけてしまうことは、マナーとは言えない面もあります。それは、『TPPPO』(時、場所、相手、立場、場合)などによって、変化してもいいことだからです。一般的に『笑顔で接しましょう』と言われますが、諸事情から顔の筋肉が動かない場合は、それをすることはできません。こうしなければならないと決めつけることは、本来のマナーとはいえません。
マナーは、相手の立場に立つ思いやりが大前提にあります。今まではできていなくても問題なかったことが、立場などが変わるとそのままでは進めないこともあり得ます。年代問わず、謙虚な気持ちと向上心を忘れずに、相手への敬意と気配りを形として表現することで、次につながるビジネスに発展するのではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
コメント