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「障害児」に“クビ宣告” 9歳自閉症児の母が直面した厳しい現実 施設が“態度一変”

「放課後等デイサービス」と呼ばれる、障害児や発達に課題を抱えた子どもを対象とした通所型の福祉サービスがあります。このサービスの今後の利用を断られた経験について、自閉症児の母が紹介します。

「末永く見ていきたい」と言われたのに…放課後等デイサービス側から「預かるのが難しい」と告げられショックを受ける筆者(べっこうあめアマミさん作)
「末永く見ていきたい」と言われたのに…放課後等デイサービス側から「預かるのが難しい」と告げられショックを受ける筆者(べっこうあめアマミさん作)

 ライター、イラストレーターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある9歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の6歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

 「放課後等デイサービス」と呼ばれる、障害がある子や発達に課題がある子を対象とした通所型の福祉サービスがあるのをご存じでしょうか。アマミさんによると、このサービスは、放課後や休日に施設で生活能力の向上に必要な訓練などを行うもので、障害児育児にとって重要な役割を担っているということです。

 しかし、重度の障害がある子の場合、そんな「障害児の居場所」からさえも、退所を迫られてしまうことがあるといいます。今回はそんなショッキングな出来事について、アマミさんが自身の体験談を踏まえながら紹介します。

さまざまな状態の子どもが利用

 放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの子どもが利用できます。「放課後」という名前が付いていますが、実際には放課後だけではなく、長期休暇も使える、学童に似た施設だと考えると、分かりやすいかもしれません。

 事業所によって内容は異なりますが、障害を持つ子や発達に課題を抱えている子を支援する「療育」に重点を置く所もあれば、安全な居場所の提供を重視する所もあるなど、その実態はさまざまです。

 学童とは違い、療育の役割を持つ放課後等デイサービスの利用には、居住先の自治体から交付される「通所受給者証」が必要です。

 しかし、発達に関する診断がなくても受給者証の取得が可能なため、障害の診断がつくか、つかないかぐらいのグレーのお子さんから、重度の障害がある子まで、幅広い状態のお子さんが通っています。

 特に、重い障害がある子どもにとっては、放課後の時間を1人で過ごしたり、保護者が同伴しない状態で友達と遊んで過ごしたりすることが難しいため、放課後等デイサービスは貴重な居場所となっているのです。

「障害児の居場所」から退所を迫られた

 あるとき、私は、息子が小学校入学時から3年以上通っていた放課後等デイサービスから、「来年度以降、息子さんを預かるのは難しい」と伝えられました。

 かつては「息子さんを末永く見ていきたいと思っています」と言ってくださった事業所からの、突然のクビ宣告のようなものでした。

 息子は自傷や他害行為などはなく、私の認識では特に大きな問題を起こしてはいませんでしたが、やはり重度の知的障害児なので、問題行動とされる行為はいろいろあります。

 そのため、3年生の後半くらいから、何か調子が良くなかったり、問題行動が激しくなったりしたときに、「このままでは難しいかもしれない」ということは折に触れて言われていたのです。

 ただ、息子が比較的調子が良く、落ち着いて毎日を過ごせていたときに伝えられたため、私にとっては青天のへきれきのようなものでした。

 息子のほかにも、他のお子さんが小学校高学年くらいになって、長年通っていた放課後等デイサービスから利用を断られたり、退所せざるを得ない状況に追い込まれたりしたというケースはよく聞きます。

 子どもによって理由や状況はさまざまですが、本人や周囲にとって危ない状況になってしまったり、そのような事態を防ぐことができない人員不足の状況があったりなど、難しい問題があるようです。

成長に伴い扱いが難しくなっていく現実

 障害がある子どもを持つ親としては、長年通った放課後等デイサービスを突然利用できなくなるというのは、死活問題です。

 仕事をしていたらなおのこと、重い障害がある子を一般的な学童に通わせるのは難しいですから、仕事をやめなければならないこともあります。事実、私の周囲でも、放課後等デイサービスを利用することができなくなったため、仕事をやめざるを得なかった人もいました。

 しかし、必ずしも放課後等デイサービス側が理不尽に対応を変えているというわけではなく、子どもにも、学齢期特有の難しい問題が生じやすいともいえます。

 小学校高学年にさしかかると、障害がある子も他の子と同様に思春期を迎えます。そうすると、どうしても情緒が不安定になりやすく、問題行動が激しくなりやすいのです。

 また、一般的に子育ては、子どもが育っていくほど楽になるといわれていますが、障害児育児は違います。成長とともに、いろいろなことの認知が進み、かえって特性が強くなってしまうこともよくあるのです。

 さらには、学齢期という体が大きく成長する時期だからこそ、体格が大きくなって制御が難しくなるという問題もあります。

 小学1年生のときは、まだ小さくて力も弱く、支援者が簡単に抱きかかえたり制御できたりした子どもも、小学4年生、小学6年生と成長していくのに伴い、大人に近い体格になっていきます。かつては壁をたたいても何ともなかった子が、成長とともに壁に穴を開けるようになってしまうかもしれません。また、物を投げる力が強くなって、周囲に危険を及ぼすかもしれません。

 放課後等デイサービスの事業所側としても、「以前は大丈夫だったけど、今は…」ということになってしまうのでしょう。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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