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秋冬は猫の「毛球症」に要注意! 時として“命の危険”も? 獣医師が解説

猫が「換毛期」を迎える秋は、毛づくろい時に飲み込んだ毛の塊が体内に残る「毛球症」に注意する必要があります。どんな病気なのか、獣医師に聞きました。

命に関わるケースも…
命に関わるケースも…

 秋は、猫の毛が生え変わる「換毛期」。この時期、猫が毛づくろいをした際に飲み込んだ自分の毛が、塊となって体内に残ってしまう「毛球症」に注意する必要があります。場合によっては命に危険が及ぶこともあるという「毛球症」とは、どのような病気なのでしょうか。ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。

毛球が腸管で詰まると「腸閉塞」に

Q.そもそも、猫の「換毛期」とは何ですか。

増田さん「猫は、季節の節目に毛の生え変わりが起こります。この時期のことを『換毛期』と呼びます。これが年に2回、主に春(3月ごろ)と秋(11月ごろ)にみられます。季節によって毛の量を調節することによって、暑さや寒さへの対策を行っているということです。

この時期でなくても、猫の被毛は定期的に生え変わっていくのですが、換毛期では普段の何倍も毛が抜けます。ブラシをかけるとびっくりすることがあるかもしれません。

現在、猫は室内飼育が一般的になりました。その影響で、先述の時期とは異なるタイミングで多くの毛が生え変わることがあります。冬に生えてくる毛は『アンダーコート』と呼ばれる、ふわふわの綿毛のような毛で、寒さから体を守る羽毛のような役割をします。夏の暑い時期には、この気密性のある毛が熱を逃がしづらくなるため、春には、主にこのアンダーコートがたくさん抜けるように“衣替え”をしているのです」

Q.猫の「毛球症」とはどんな病気ですか。

増田さん「換毛期になると自然と毛が生え変わりますが、毛づくろいをする際に舌でからめとった被毛を飲み込んでしまうことがあります。それが少量であればふん便と一緒に排せつされますが、換毛期やメンタル面の変化などの影響によって普段以上に毛づくろいをし、消化器内に被毛が取り込まれることで起こるのが『毛球症』です。少しずつ取り込まれた被毛が塊となり、胃の中で球状になることがあるため、このような名前がつけられました。

毛球症の主な症状は吐き気で、実際に毛玉を吐き出すことがよくみられますが、毛球の大きさによっては吐き出せないことがあります。嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあり、その際は胃酸が食道を荒らしてしまうことが考えられ、逆流性食道炎などを合併する恐れがあります。

また、毛球が小腸の方へ流れていった場合、腸管の途中で詰まってしまうと『腸閉塞』となり、激しい嘔吐や腸管の損傷によって、『腹膜炎』をはじめとした重大な問題が生じることがあります。そのため、毛球症は時として命に関わる危険を引き起こすことがあるかもしれないと認識しておくとよいでしょう」

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増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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