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「西郷どん」スタート半年 ライトユーザーに好感も、歴史ファンには少し不満?

もったいなかった、有馬新七の死

 しかし、NHKが、「ドクターX~外科医・大門未知子」に代表されるような力強い筆致の中園ミホさんに依頼したということは、すなわち、そうしたライトユーザーへの訴求をあえて狙いに行ったことが十分考えられます。「ドクターX」も細やかな描写というよりは、一秒でも前に進む「爽快感」が身上でした。

 しかし、例えば「真田丸」は、草刈正雄さんらひときわ脚光を浴びる俳優が出現したり、それまで知られていなかった歴史上の人物・出浦昌相(寺島進さん)が掘り下げられたりして面白みもありましたが、「西郷どん」にそうした世を巻き込んでいく「うねり」が見られないのは、登場人物がすべて中園ワールドの一兵卒に過ぎないからでしょう。

「もったいないな」と思ったのは、「寺田屋騒動」で無残な死を遂げた有馬新七役の俳優・増田修一朗さんです。

 増田さんは、今回オーディションで選ばれた一人。抜てき後から約1年、この有馬役と向き合ってきたことが自身のブログでも分かります。しかし、1話から見てきた視聴者からすると、吉之助を少年時代から支えて来た仲間で、これまでに「個」を感じた配役はほとんどいません。それは、セリフは与えられても「その他大勢」として描かれてきたからです。

 こうした意見もSNS上で散見されます。6月17日放送の23話「寺田屋騒動」放送終了後に投稿された声です。

「今日の西郷どんはさ、有馬新七をもうちょっと早い段階から具体的にどういう人物なのか小出しにしておけば悲劇度が増したのにね。ずっと出てるけどどういう人なのかわからないまま先週から急に出番増えたじゃないの。もっとやりようがなかったのかな」

 話を広げれば、もう少し有馬新七を丁寧に描いておけば、増田自身の人気も出たのではないかということです。無論「歴史にifはない」ように、実際のところどうだったのかは分かりません。

 しかし、1990年に放送された、吉之助を主人公にした「跳ぶが如く」(脚本は小山内美江子さん)では、薩摩での少年時代が描かれなかった分、藩士仲間の絆(きずな)も濃密ににじませながら寺田屋へ向かっていきました。当時の新七役だった内藤剛志さんも初期からスポットが当たっていました。

 また、同作では、大久保正助(鹿賀丈史さん)も吉之助と同等に描かれ、その妻・満寿(賀来千香子さん)も生き生きと「人物」が浮き上がっていました。

 28年後。正助を演じる瑛太さんが、5月25日に開かれた「西郷どん」特別展報道内覧会に出席し、「大久保ファンを増やしたい」と語っていましたが、その発言は自分の役があまり浸透していないことの裏返しではないでしょうか。

 いずれにせよ、「大河ドラマ」をめぐって日々意見が戦わされているのは、やはりこの日曜夜8時という枠そのものが“国民的関心事”だからなのかもしれません。

(芸能ライター 河瀬鷹男)

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河瀬鷹男(かわせ・たかお)

芸能ライター

キャリアスタートはテレビ番組の制作。2014年頃から、Yahoo!ニュースやLINEニュースなど多くのニュースサイトに記事を配信している。主に、芸能系の分析を得意とする。

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