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就寝中の口呼吸、なぜ起きる? 実はマウステープ、マスク危険? 改善法を医師に聞く

就寝中になぜ口呼吸をしてしまうのでしょうか。原因や改善方法について、医師に聞きました。

就寝中に口呼吸になる理由は?
就寝中に口呼吸になる理由は?

 就寝中に口呼吸をしてしまい、起床時にのどを痛めた経験のある人は、多いと思います。そもそも、なぜ就寝中に口呼吸をしてしまうのでしょうか。口呼吸を防ぐために、市販の「マウステープ」やマスクを使ってもよいのでしょうか。口呼吸の矯正治療を行っている、こどもと女性の歯科クリニック(東京都港区)の院長、岡井有子(おかい・ゆうこ)さんに聞きました。

鼻詰まり時のテープ、マスクはNG

Q.そもそも、就寝中に口呼吸をすると、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。

岡井さん「口呼吸は、鼻呼吸よりも1回当たりの呼吸時に体内に取り込む酸素の量が少ないです。そのため、脳に十分な酸素が行き渡らず、睡眠の質にも影響するほか、代謝が低下するため、太りやすい体質になってしまいます」

Q.なぜ就寝中に口呼吸をしてしまうのでしょうか。

岡井さん「日本人の80%が口呼吸といわれていますが、主な原因は以下の通りです」

(1)スマホやパソコン、ゲーム機器の使い過ぎで前傾姿勢となり、肩回りの筋肉が緊張。
(2)マスクのひもを耳に掛け続けたことで口回りの筋肉が緊張したり、マスク着用による息苦しさで口呼吸が促進されたりするなど、長期間のマスク着用が影響。
(3)鼻詰まり。
(4)就寝中に大きないびきをかいたり呼吸が止まったりする、いわゆる「睡眠時無呼吸症候群」を発症している可能性。
(5)口回りの筋力が不足している。

そもそも、喉の一番上の辺りにある舌骨は、肩の辺りから伸びる「肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)」や下顎の筋肉とつながっています。(1)のように姿勢が悪くなると、肩回りの筋肉が緊張して凝り固まっていきます。すると、肩甲舌骨筋が収縮し、それに伴い舌骨と下顎が下がるようになります。

舌骨には舌も付いているため、舌骨や下顎が下がった場合、舌も下がり気道を圧迫するようになります。その結果、気道が狭くなり息苦しくなるので、口で呼吸をするようになります。

また、いびきは、口内の上部の「軟口蓋(なんこうがい)」や「口蓋垂(こうがいすい)」が気道を閉塞(へいそく)し、息がしにくい状態を指します。いびきがある人も口呼吸をしていることがあるので、注意してください。

Q.就寝中の口呼吸を防ぐためには、どのような対策が有効なのでしょうか。

岡井さん「寝るときの姿勢と呼吸は関係しています。枕の高さが低い場合、頭が後ろに伸びてしまい口が開くようになるため、口呼吸になりやすいです。人工呼吸をイメージすると分かりやすいと思います。顎を適度に引いた状態で寝ると、口を閉じやすくなるので、枕の高さを適度に調整してください。

就寝中は無意識なので、自分で呼吸をコントロールすることができません。加湿機能のあるマスクをして寝たり、唇の両端にハの字形にテープを貼って筋肉の緩みを抑え、口が開くのを防いだりする方法があります」

Q.口呼吸を防ぐために、就寝中に市販の「マウステープ」やマスクを使った場合、窒息する危険性はないのでしょうか。

岡井さん「先述の『(1)肩回りの筋肉の緊張』『(2)長期間のマスク着用』に該当し、日中は鼻呼吸ができる人は市販のマウステープやマスクを使っても問題ないと思います。しかし、『(3)鼻詰まり』『(4)睡眠時無呼吸症候群』に該当する人の場合、テープを使用すると窒息する可能性があり、危険です。これらのケースに該当する人は、まずは医療機関の受診をお勧めします。

『(5)口回りの筋力不足』に該当する人で睡眠中にテープやマスクを使用する場合、まずは入浴中に口を手で覆って、鼻で呼吸をする練習をし、筋力を高めてください。このほか、口呼吸の改善には口のマッサージが有効です」

Q.では、口をマッサージする方法について、教えてください。

岡井さん「私の病院では、歯磨き前に口のマッサージを勧めています。頬の粘膜を伸ばすように、舌で後ろから前に向かってマッサージします。上下左右、同じように行います。初めは硬い粘膜が徐々に柔らかくなってきます。

また、舌を下の前歯の裏側につけた状態で10秒間、大きく口を開けた状態を維持しましょう。その運動を10回行ってください。慣れてくると、口回りの筋肉がほぐれるようになるほか、日中の活動時に舌の位置が気になるようになり、口呼吸をしなくなります」

(オトナンサー編集部)

【画像で丸わかり!】日本人の80%が該当 「口呼吸」になる5つの原因を一挙公開!

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岡井有子(おかい・ゆうこ)

歯科医師

大阪歯科大学卒業。大阪歯科大学大学院歯学研究科(小児歯科学専攻)修了。2017年、東京都港区で「こどもと女性の歯科クリニック」を開業。子ども・女性に特化した歯科医院として、患者が安心して豊かに過ごせるよう、一人一人に寄り添った治療を心掛けている。こどもと女性の歯科クリニック(https://cw-cl.jp/)。

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