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殺虫剤で火事のケースも…スプレー缶で「火災」「破裂」の危険 原因&正しい捨て方は?

スプレー缶で火災や破裂が生じる原因のほか、正しい廃棄方法などについて、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センターの担当者に聞きました。

スプレー缶の使用時は火災や破裂に注意
スプレー缶の使用時は火災や破裂に注意

 夏は殺虫剤や制汗剤を使う機会が増えますが、これらの製品にはスプレー缶がよく使われています。自宅でこうしたスプレー缶の製品を保管している人は多いと思います。

 ところで、スプレー缶の使い方を間違えると、火災や破裂の原因になるといわれていますが、なぜなのでしょうか。スプレー缶で火災や破裂が生じる原因のほか、正しい廃棄方法などについて、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センターの担当者に聞きました。

可燃性ガスを含有するスプレー缶

Q.スプレー缶を使用する際の注意点について、教えてください。火災や破裂の危険性があるといわれていますが、なぜなのでしょうか。

担当者「スプレー缶には、殺虫や制汗、潤滑など、目的に応じた主成分のほか、内容物を噴出するために、プロパンなどの液化石油ガス(LPG)またはジメチルエーテル(DME)が噴射ガスとして充填(じゅうてん)されています。液化石油ガスは、圧力をかけて液化しており、噴射時に放出されると、一気に気化して体積が大きくなる性質があります。

噴射ガスは可燃性で沸点が低いため、スプレー缶には必ず『火気と高温に注意』『火気厳禁』の警告表示とともに、火気や熱に対する注意事項が次のように記載されています」

・高圧ガスを使用した可燃性の製品であり、危険なため、火気の注意を守ること。
(1)炎や火気の近くで使用しない。
(2)火気を使用している室内で大量に使用しない。
(3)高温にすると破裂の危険があるため直射日光の当たる場所や火気などの近くなど温度が40度以上となる所に置かないこと。
(4)火の中に入れないこと。
(5)使い切って捨てること。

スプレー缶を使う際は、ガスこんろや給湯器がある台所など、火源のある場所で噴霧しないでください。また、石油ファンヒーターの吹き出し口やガスこんろのグリル排気口付近のほか、炎天下の自動車の車内など、高温下の場所では使用はもちろん、製品を放置してもいけません。火災や破裂の危険があります。スプレー缶を噴霧した後にたばこに火をつけるような行為も厳禁です。

以前、ジメチルエーテルを使用した消臭スプレーのガス抜きを室内で大量に行っていたところ、爆発が発生し、大きな二次被害をもたらした事故がありました。ジメチルエーテルの物性は、液化石油ガスと類似しており、圧力をかけると容易に液化し、気化したときは体積が200倍以上に膨張します。

そのため、閉ざされた空間で大量に噴霧するとガスが限界まで充満するため、その際に何らかの火源があると引火し爆発することがあります。ガス抜きの際は、必ず火気のない屋外で実施しなければなりません。

Q.これまでにどのような事故が発生しているのでしょうか。

担当者「電気冷蔵庫の下部に殺虫剤スプレーを噴射したところ、電気冷蔵庫やその周辺を焼損する火災が発生したケースのほか、ガスこんろを使用中、ゴキブリに殺虫剤を噴射したことがきっかけで炎が上がったケースやガスファンヒーターを使用中、スプレー缶が破裂して、周辺を焼損したケースなどがあります。

電気冷蔵庫とガスこんろの事故は、スパークや火が、噴射された可燃性ガスに引火したことで発生しました。また、ファンヒーターの事故は、スプレー缶そのものが過熱されたために内圧が上がり耐圧を超えたことで破裂したことが原因です」

Q.スプレー缶が原因の事故や火災が多い時期について、教えてください。

担当者「石油ファンヒーターやガスファンヒーターの温風吹き出し口付近にスプレー缶を放置して破裂し、火災に至る事故が多いことから、12月、1月に多い傾向にあります。

しかし、夏は、制汗スプレーや虫よけスプレーなどをバーベキューこんろのそばに置いたり、高温の自動車内に放置したりすることが想定されるため、注意が必要です」

Q.使い終わったスプレー缶はどのように処分すればよいのでしょうか。

担当者「スプレー缶を捨てるときは、屋外の風通しのよい場所で、ボタンを押し続けるか、付属のガス抜きキャップを利用して中身を出し切ってください。スプレー缶を振って、『シャカシャカ』などと音がする場合は中身が残っています。

廃棄は基本的にお住まいの自治体の指示に従って行いますが、中には廃棄時に缶に穴を開けるよう指示しているケースがあります。穴を開ける場合は、屋外の風通しのよい場所で行ってください。

現在、リチウムイオンバッテリーやカセットこんろ用ガスボンベが誤って一般ごみとして廃棄されたために、ごみ収集車やごみ処理施設で火災が発生する事故が増加しています。流通量が多くなったリチウムイオンバッテリーなどの充電式電池による事故の方が話題になっていますが、LPガスを含むスプレー缶の廃棄による事故も発生しているため、適正に廃棄しなければなりません」

(オトナンサー編集部)

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