「私が先に死んだときのため」「妻への罪滅ぼし」…高齢者住宅に住み替えた高齢者たち、それぞれの“動機と本音”
(3)「プレゼント」としての高齢者住宅
高齢男性は、身の回りのことをしてきた経験に乏しいのが原因で、1人暮らしになることによって受けるダメージは、女性よりも大きくなります。
最近は高齢男性の中にも「掃除をしている」「料理ができる」「洗い物は全部している」とおっしゃる人も増えましたが、詳しく聞けば、それは奥さまのお手伝いや暇つぶしのようなもので、「こまごまとしたことも含めて、家事全般ができますか」と問われれば、自信を持って「できる」と言う人はあまりいません。当然、1人暮らしになると不規則、不衛生をはじめとして生活が乱れ、心身の健康状態が低下してしまいます。
とはいっても、「家事ができないくらい、何が悪い?」と開き直っているわけではありません。むしろ、現役時代より長い時間、家にいる分、余計に家事負担をかけているのは重々分かっていて、それでも今さら家事に取り組む気にはならず、奥さまに対して申し訳なさや引け目を感じているようにも見えます。
高齢者住宅にご夫婦で住み替えられた男性にその動機を尋ねると、「罪滅ぼし」と言っておられました。「これまで散々、手を煩わせてしまった。だから、私が先に死んだら、妻には思うがままに楽しんでほしい」という意味です。家のことを放っておいて悪かったという申し訳なさと、自分のために時間も手間もかけてくれたことへの感謝が入り交じったような気持ちなのでしょう。
高齢者住宅という、何の遠慮も気兼ねもなく楽しめる環境は、奥さまへの“人生最後のプレゼント”なのだと思います。
(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)



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