「ビールの飲み過ぎで痛風になりやすい」は本当? 他の病気のリスクは? 医師が解説
ビールを飲み過ぎると、痛風になりやすいのは本当なのでしょうか。医師に聞きました。
幅広い世代の人によく飲まれるアルコール飲料の一つが「ビール」です。ただ、「ビールを飲むと痛風になりやすい」「太りやすい」ともいわれており、摂取を控えている人もいるのではないでしょうか。
ビールを飲み過ぎた場合、どのような健康被害が想定されるのでしょうか。痛風の原因になるのは本当なのでしょうか。なかざわ腎泌尿器科クリニック(石川県野々市市)の中澤佑介(なかざわ・ゆうすけ)院長に聞きました。
アルコールは尿酸値を上昇させる
Q.そもそも、アルコール飲料のカロリーはどの程度なのでしょうか。
中澤さん「日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、主なアルコール飲料のカロリーや炭水化物の数値は以下の通りです」
・ビール(淡色) 39キロカロリー、炭水化物3.1グラム
・発泡酒 44キロカロリー、炭水化物3.6グラム
・缶チューハイ(レモン風味) 51キロカロリー、炭水化物2.9グラム
・赤ワイン 68キロカロリー、炭水化物1.5グラム
・白ワイン 75キロカロリー、炭水化物2.0グラム
・清酒(純米酒) 102キロカロリー、炭水化物3.6グラム
・紹興酒 126キロカロリー、炭水化物5.1グラム
・梅酒 155キロカロリー、炭水化物20.7グラム
・焼酎(連続式蒸留焼酎) 203キロカロリー、炭水化物0グラム
・ウイスキー 234キロカロリー、炭水化物0グラム
・ブランデー 234キロカロリー、炭水化物0グラム
焼酎やウイスキー、ブランデーは100ミリリットル当たりのカロリーが高い傾向にありますが、炭水化物は0グラムということが分かります。ただ、上記の一覧は、あくまで100ミリリットル当たりの数値です。アルコール飲料の種類によって飲み方が異なるため、「ビールはカロリーが低いから太りにくい」と誤解しないようにしましょう。
ビールは1回当たりの提供量が多いことと、ぐびぐびと飲めてしまう点に気を付けたいところです。
Q.ビールの1日の適切な摂取量について、教えてください。
中澤さん「厚生労働省が推進する国民健康づくり運動『健康日本21』によると、節度ある適度な飲酒量は、『1日平均純アルコールで約20グラム程度』とされています。これは、アルコール度数が5%のビールの場合、500ミリリットルに相当します。
ただし、一般的に、女性は男性に比べてアルコールの分解速度が遅いため、臓器障害を起こしやすい傾向にあります。そのため、女性の1日の純アルコールの摂取量は10~15グラムにとどめておくのが望ましいです。これは、アルコール度数が5%のビールの場合、350ミリリットル以下に相当します」
ビールを飲み過ぎた場合のリスクは?
Q.ビールを飲み過ぎた場合、どのような健康被害が想定されるのでしょうか。
中澤さん「まず、過度な飲酒により急性アルコール中毒に陥る可能性があります。また、長期間、過度な飲酒を続けた場合、肝障害やぼうこう炎、糖尿病、心疾患、高血圧症、がんなどの発症リスクが上がるほか、睡眠障害やうつ病にもなりやすくなります。
尿酸の血中濃度が異常に高まった状態である『高尿酸血症』は、尿酸値が7.0ミリグラム/dLを超えている場合に診断されますが、成人男性の2割が高尿酸血症であるといわれています。
ビールは他のアルコール飲料よりもプリン体を多く含むので、尿酸値を増加させる可能性があります。ただ、ビールに限らず、アルコール飲料そのものが、体内の尿酸値を上げる方向に働きます。その理由は以下の3つです」
(1)ATP(アデノシン三リン酸)を分解する
プリン体は、体内のエネルギー源である「ATP」と呼ばれる物質の構成成分でもあります。アルコールは、ATPの分解を促進させるため、お酒を飲むと体内にプリン体が増え、やがてそれらが尿酸としてたまっていきます。
(2)脱水状態を引き起こす
アルコールの働きによって、体の水分を適度に保つために尿量を調節するホルモン「バソプレシン」の分泌が妨げられてしまいます。それにより、必要以上の量の尿が作られて排出されるため、体が脱水状態になってしまいます。その結果、尿酸が体外にうまく排出されなくなり、体の中にたまっていきます。
(3)アルコール飲料とプリン体が多く含まれる食べ物を同時に摂取する
お酒のおつまみとして、レバーやイワシ、白子などプリン体が多く含まれる食べ物を摂取してしまうと、尿酸が体内にたまりやすくなります。
Q.高尿酸血症を放置すると、どのような病気のリスクがあるのでしょうか。
中澤さん「高尿酸血症は痛風関節炎のほか、尿路結石や腎障害、メタボリックシンドローム、心血管障害などを引き起こす可能性があります。痛風関節炎は高尿酸血症により、関節の中に漏れ出た尿酸が塊を作ることで起こります。その塊を白血球が壊すため、赤みや痛み、腫れを生じさせてしまうのです。
高尿酸血症の合併症としてよくあるのが、尿路結石です。高尿酸血症は、尿路結石の原因であるシュウ酸カルシウム結石を体内に生じさせます。また、アルコールの摂取で脱水状態になった場合も、尿路結石の形成を促進させます」
Q.日頃からアルコール飲料を摂取していると、体質はどのように変化するのでしょうか。また、アルコール飲料を摂取した後にラーメンやそばなどを食べたくなることがありますが、なぜでしょうか。
中澤さん「体内に入ったアルコールは人体に対する毒物とみなされ、糖質や脂質よりも先に代謝してしまいます。その結果、脂肪の燃焼が抑えられるため、日頃からアルコール飲料を摂取していると、痩せにくい体質になります。
アルコールを摂取すると、肝臓での糖新生が抑制されるため、血糖値が低下する傾向にあり、体が炭水化物を激しく欲するようになります。そのため、お酒を飲んだ後は、締めとしてラーメンやそば、うどんを食べたくなります」
ビールに限らず、お酒には尿酸値を上げる作用があるので、飲み過ぎないように気を付けましょう。
(オトナンサー編集部)
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