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私有地に無断駐車された…車を撤去しても大丈夫? 法的責任を問われる? 弁護士に聞いた

私有地に勝手に車を止められた場合、自分で撤去しても問題ないのでしょうか。弁護士に聞きました。

無断駐車の車を撤去しても大丈夫?
無断駐車の車を撤去しても大丈夫?

 個人や企業の敷地内に車が無断で止められることがあり、トラブルに発展することもあるようです。この場合、土地の所有者は、レッカー車を手配するなどして車を撤去しても問題ないのでしょうか。それとも、勝手に車を撤去すると、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

車の所有者から損害賠償を請求されるリスク

Q.私有地に車を勝手に止められた場合、土地の所有者は車の持ち主に賠償を求めることができるのでしょうか。

牧野さん「他人の私有地に車を勝手に止めると、駐車された部分の土地が使用できなくなるため、土地の所有者に損害が発生します。所有者がその損害を証明できれば、民法の不法行為に基づき、車を勝手に止めた個人や法人に対して、発生した損害の賠償を請求することができます」

Q.私有地に車を勝手に止められた場合、レッカー車を手配するなどして車を撤去しても問題ないのでしょうか。無断駐車の車に移動を求める内容の張り紙を設置する行為については、いかがでしょうか。

牧野さん「放置車両であっても他人の所有物である以上、勝手に動かすことはできませんし、勝手に車両を撤去すると、『撤去が原因で車に傷がついた』などの理由で車両の所有者から損害賠償を請求されることがあります。トラブルを避けるためにも、撤去には一定の手続きが必要です。

無断駐車の車に移動を求める内容の張り紙を設置する行為については、問題ありません」

Q.では、私有地に勝手に車を止められた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。手続きの方法も含めて、教えてください。

牧野さん「まずは警察に通報するのがよいでしょう。車の所有者や使用者が判明し、盗難車や犯罪で使用された可能性のある車など、何らかの事件性がある場合は、警察が保管のために撤去してくれる可能性があります。

車両に事件性がない場合、私有地での放置車両の撤去は、私有地の所有者や管理者自らが手続きをする必要があります。基本的に、持ち主に対して内容証明郵便などで車両の撤去を要求することになるため、まずは放置車両の持ち主を特定する必要があります。

放置車両が普通車であれば、最寄りの運輸支局や自動車検査登録事務所で、『登録事項等証明書』を取得し、所有者の『名前』や『住所』を確認できます。軽自動車の場合は、『検査記録事項等証明書』が必要となるため、軽自動車検査協会に問い合わせる必要があります。

放置車両の持ち主に撤去を要求しても応じない場合、放置車両に資産価値があれば、駐車場使用料の支払い請求の民事裁判を起こす方法があります。その場合、放置車両の持ち主が名乗り出なければ、欠席裁判などの勝訴判決に基づき放置車両を差し押さえ、強制競売を行った後、私有地の所有者自身でその車を落札して撤去することができます」

Q.駐車場によっては、「無断駐車の車を発見次第、レッカー移動する。〇万円を申し受ける」という内容の看板が掲げられていることがあります。駐車場の所有者が無断駐車の車の持ち主に罰金を科したり、違約金を課したりすることは可能なのでしょうか。

牧野さん「罰金は国家による刑罰の一種であり、個人や法人が他者に対して罰金を科すことはできないので、罰金の旨を記載した看板は、法的な効力がありません。

法外な違約金については、事前に駐車場の利用者が合意をしていなければ課すことができません。違約金の旨を記載した看板を設置しただけでは、放置車両の持ち主が違約金に同意したとは解釈できないので、看板は法的な効力がありません。ただし、駐車場を使用しているので、所定の駐車場の使用料相当額は支払う義務があります」

Q.私有地での無断駐車を防ぐためには、どのような対策が有効なのでしょうか。

牧野さん「私有地での無断駐車の車を撤去するには、必要書類を集めたり、警察や弁護士に相談したりするなど、面倒な手続きが必要で時間がかかります。そのため、敷地内にフェンスを設置して、外部の人が容易に立ち入りできないようにするなど、車両を放置されないための予防策を取っておくことが重要です」

(オトナンサー編集部)

【写真】敷地内に勝手に車を止められた…車両を撤去する方法を伝授!

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント

1件のコメント

  1. 私有地に承諾せずに車両を6時間以上駐車した場合は車両管理法で処罰できるのではないかとおもいますが。その場合最初に警察官立ち合い確認後処罰できるよう車両管理法の追記等必要かもしれませんが。しかし、警察が忙しくなるから嫌がるかもしれませんが。ただ私有地の権利が侵害されているのも事実だし、本来車両の保管場所は登録されているはずだし・・・