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新型コロナウイルス、インフルエンザなのに無理して出勤、ライブ&コンサートへ 法的責任を問われる? 弁護士が解説

感染者数が減少傾向にある新型コロナウイルスやインフルエンザですが、罹患した際に、無理して出勤やコンサートに行った場合の法的問題は…。弁護士が解説!

新型コロナウイルスやインフルエンザに感染したのに、出勤したら…
新型コロナウイルスやインフルエンザに感染したのに、出勤したら…

 感染率が高い新型コロナウイルスやインフルエンザ。新型コロナウイルスやインフルエンザに罹患(りかん)した際、企業では出勤を見合わせるのが当然の判断。しかし、感染が発覚したら「大事な仕事から外される」、または「休んだら仕事が回らない」と報告せず、出社するケースがあるかもしれません。あるいは、苦労してチケットを入手したコンサートが翌日に迫り、「治っていなくても行きたい」という人もいるかもしれません。そのようなケースの法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

傷害罪や過失傷害罪の可能性 罰金も

 新型コロナウイルスやインフルエンザと診断されたにもかかわらず出勤し、同僚にうつした場合の法的責任について、牧野さんは「意図的に他人へ病気をうつした場合に、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立するかどうかですが、傷害罪は『人の身体を傷害した者』に適用され、病毒(新型コロナウイルスやインフルエンザ含む)を他人に感染させた場合にも成立する(最高裁1952年6月6日判決)とされており、可能性があります」と説明します。

 さらに「意図的でないと認められても、過失により人を傷害したとして過失傷害罪(刑法209条1項、30万円以下の罰金または科料)となりえます。『感染者がその日時にその場所に居て、その人に感染した』という因果関係の証明は難しいですが、もし証明できれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性もある」と付け加えます。

 新型コロナウイルスやインフルエンザを発症していることを隠して出勤し、その後、職場の多くの人がそれが原因で休んで業務に支障が出た場合も、損害賠償など法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

 牧野さんは「会社として、業務に支障が生じて損害が生じた場合、因果関係が証明されれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性がある」といいます。

出勤を強要された場合は? ライブ&コンサートへ行ったら?

 インフルエンザと「診断された」と職場に連絡したのに、出勤を強要されたというケースも考えられます。

 これについて、牧野さんは「季節性インフルエンザでない新型インフルエンザの場合、労働者を使用する事業者は、労働安全衛生法第68条や労働安全衛生規則第61条において病者の就業禁止が規定されており、それに違反すると、労働安全衛生法第68条(病者の就業禁止)で6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります」とコメント。

 ただし、「季節性インフルエンザの場合でも、労働者を使用する事業者は、安全配慮義務(労働契約法の第5条『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』)があるので、就労の強要により労働者に損害が発生した場合には、民事上の損害賠償責任が発生する可能性があります」と注意を促します。

 新型コロナウイルスと診断され、出勤を強要された場合はどうなのでしょうか。「新型コロナウイルスが2類に分類されている現時点では、労働安全衛生法第68条(病者の就業禁止)違反と(就労の強要により労働者に損害が発生した場合には)民事上の損害賠償責任の可能性がある」ということです。

「出勤を強要されて体調が著しく悪化したり、療養が長期化したりした場合、損害賠償などは請求できるのか」と質問したところ、「因果関係と発生した損害を証明することができれば、不法行為による損害賠償を請求できる可能性があります」と回答してくれました。

 新型コロナウイルスやインフルエンザと診断されたのに、ライブやコンサートなどに行って他の来場客やスタッフが感染した場合、何らかの法的責任を問われる可能性については「因果関係の証明は難しいですが、感染者がその日時にその場所に居て、その人に感染したことが証明できれば、不法行為による損害賠償を請求される」可能性もあると教えてくれました。

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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