【いまさら聞けない法令用語】「証人」と「参考人」はどう違う? 弁護士が解説
ニュースや新聞でよく見聞きするものの、実はよく分かっていない法令関連用語について、弁護士に聞いてみました。

事件に関する報道だけでなく、刑事ドラマなどでもよく登場する法令用語の一つに「証人」があります。また、よく似た用語として「参考人」という言葉が使われることもあります。この両者にはどんな意味と違いがあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
「証人」は裁判で証言する人、「参考人」は…
Q.まず、「証人」とは何かについて教えてください。
佐藤さん「裁判における『証人』は、裁判所から、自分の知っている事実を供述するよう命じられた第三者のことです。裁判の当事者である原告や被告は含まれません。刑事訴訟であれ、民事訴訟であれ、裁判所は原則、誰でも証人として尋問することができます(刑事訴訟法143条、民事訴訟法190条)。また、裁判所から証人として呼び出しを受けた場合、正当な理由なく、出頭しないことは許されません(「出頭義務」。刑事訴訟法150条、151条、152条、民事訴訟法192条、193条、194条)。
また、証人は原則として『宣誓』しなければなりません(「宣誓義務」。刑事訴訟法154条、民事訴訟法201条1項)。宣誓は、尋問の前に起立して『宣誓書』を朗読させ、かつ署名押印させる方法によってなされます。宣誓書には『良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないことを誓う』旨、記載することになっています(民事訴訟規則112条、刑事訴訟規則118条)。
そして、証人は正当な理由なく、証言を拒むことは許されません(「供述義務」。刑事訴訟法161条、民事訴訟法200条)。さらに、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば、『偽証罪』に問われる可能性があります(刑法169条)。証人になったら、自らの記憶に従って、公平な証言をするようにしましょう」
Q.次に、「参考人」について教えてください。
佐藤さん「刑事手続きにおける『参考人』とは、容疑者以外の者で、捜査機関により、犯罪捜査のため必要とされる場合に出頭を求められ、取り調べなどを受ける者のことです(刑事訴訟法223条)。犯罪被害者や目撃者など、事件について何らかの情報を持っていると思われる人や、専門知識を持っており、鑑定などを行うことができる人などが参考人になります。
参考人の取り調べは任意で行われるため、参考人は捜査機関からの呼び出しに応じる義務はなく、供述を強制されることもありません。なお、犯罪捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、参考人としての取り調べに対して出頭や供述を拒んだ場合、1回目の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができます(刑事訴訟法226条)。
なお、参考人として供述した内容は調書に記録され、一定の条件を満たした場合に、刑事裁判の証拠になります(刑事訴訟法321条1項2号、3号)」
Q.つまり、「証人」「参考人」の違いとは。
佐藤さん「『証人』は裁判所から命ぜられ、裁判において証言する人であり、先述したように出頭義務、宣誓義務、供述義務を負います。
一方、刑事手続きにおける『参考人』は、捜査機関から取り調べを受ける人であり、出頭義務や宣誓義務、供述義務は負いません。捜査段階で参考人として取り調べを受けた者が、後の刑事裁判で『証人』として証言することになるケースも多いです」
Q.ちなみに、「証人」と「参考人」はそれぞれの機関からどのような形で通達が来るのですか。
佐藤さん「民事裁判の『証人』については、当事者からの『証人になってくれないか』とのお願いを承諾した上で証人になるケースが多いです。そのような場合には、当事者が証人を連れて裁判期日に出席すること(同行)になるので、裁判所から『呼び出し状』が送達されることはありません。証人になることについて承諾していない証人を呼び出す場合や、証人の勤務先との関係で呼び出し状が必要な場合などでは、裁判所から呼び出し状が送達されます(民事訴訟法94条)。
刑事裁判の『証人』についてですが、『証拠調べ請求』をした検察官または弁護人が裁判所に同行することが一般的です。同行については、裁判の打ち合わせの席などで、検察官または弁護人から証人として出廷する日時が共有され、出廷をお願いされる形が一般的だと思います。なお、同行が期待できない場合、裁判所は証人に出頭を命じることができ、その場合には『召喚状』が送達されます(刑事訴訟法153条)。
一方、『参考人』については、捜査機関から電話で連絡が来て、出頭を求められることが多いでしょう」
(オトナンサー編集部)
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