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“コスパ最強”もやしの「ひげ根」、取る? 取らない? 管理栄養士に聞いてみた

「もやし」についている「ひげ根」と呼ばれる部分。「取る」派と「取らない派」に分かれるようですが、実際はどうするのがよいのでしょうか。管理栄養士に聞きました。

もやしの「ひげ根」、取ってる?
もやしの「ひげ根」、取ってる?

 家計に優しい節約食材として、食卓で活躍する“コスパ最強”の「もやし」。もやしには「ひげ根」と呼ばれる細い根がついているのが特徴ですが、これについては「食感が悪いから取っている」「見た目がいまいちだから取る」という“取る派”と、「気にせずにそのまま使っている」「栄養がありそうだから食べる」という“取らない派”に分かれるようです。

 もやしの「ひげ根」は取った方がよいのでしょうか。それとも、取らない方がよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

食感と見た目では「取り除く」方がいいけれど…

Q.そもそも、「もやし」とはどんな食材ですか。

岸さん「もやしは漢字で『萌やし』と書き、種から芽が出ることを表していますが、本来は特定の野菜の名前ではありません。水に浸して日光を遮断した種子(豆や米、麦など)を発芽させた若芽の総称を、もやしと呼んでいます。

もやしは、アスパラギン酸やビタミンC、ビタミンB群、カリウム、カルシウム、食物繊維などの栄養素が比較的多く含まれる食材です。アスパラギン酸は疲労回復やスタミナ増強の効果が期待できるアミノ酸の一種で、アスパラガスに含まれる成分として知られていますが、もやしの含有量はアスパラガスより多くなっています。

また、体内の余分な塩分や水分を体外に排出し、むくみ解消や高血圧予防といった効果が期待できるカリウムや、エネルギー代謝や細胞の生まれ変わりに必要な栄養素であるビタミンB群などがバランスよく含まれています。また、イモ類やキノコ類と同様に、便をかさ増しして便通を改善する不溶性食物繊維が含まれます。

なお、一般的なのは緑豆を発芽させた『緑豆もやし』ですが、大豆を発芽させた『豆もやし』や、『けつる小豆』を発芽させた『ブラックマッペ』も流通しています。シャキシャキの食感が楽しめる炒め物や、鍋物、あえ物などさまざまな料理に使える便利な食材です」

Q.もやしを食べる際、「ひげ根」は取った方がよいのでしょうか。それとも、取らない方がよいのでしょうか。

岸さん「『ひげ根』は、もやしの根元に付いている細い『根』にあたる部分です。食物繊維が多く含まれているため、やや筋っぽく、モソモソとした食感が特徴です。この部分に、独特の青臭さを感じる人も多いようです。また、白い茎の部分と比較すると、ひげ根の部分は茶色く、見た目があまりよくありません。そのため、ひげ根を取り除くことで、茎の白い見た目とシャキシャキとした特有の食感が際立ち、味と口当たりが格段によくなります。

しかし、ひげ根には先述したもやしの栄養素もきちんと含まれ、食物繊維についてはひげの部分の方が豊富です。また、先述したアスパラギン酸、ビタミンCやビタミンB1、カリウムといった水溶性の栄養素は、ひげ根を取ると流失しやすくなってしまいます。料理をおいしく、美しく仕上げるには取り除いた方がよいのですが、栄養的にはそのまま食べた方がよいですね。

なお、ひげ根の部分には雑菌が残りやすいので、取り除いた方が長持ちしやすくなります。ただし、時間がたってひげ根が白色から茶色に変化している場合は、取り除いた方がよいでしょう」

Q.もやしのひげ根はどうやって取るとよいですか。また、もやしのひげ根を取った方がいい料理、取らない方がいい料理とは。

岸さん「ひげ根から少し上の部分に爪を立て、折るようにして取りましょう。手間がかかる上、変色を防ぐために手早く行う必要がありますが、1本ずつ行うことできれいに取り除けます。また、もやしが絡まらないように水を張ったボウルの中で作業することもありますが、栄養素が流れ出やすいので、時間をかけないようにすることが大切です。

スープやラーメンの具など、もやし独特の臭いが出やすい料理や、おひたしやナムルといったもやしの白色が映える料理は、ひげ根を取った方がおいしく食べることができますが、焼きそばや炒め物といった味付け、色の濃い料理は取らなくても気になりにくいでしょう」

(オトナンサー編集部)

岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。