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【いまさら聞けない法令用語】「釈放」と「保釈」、「仮釈放」はどう違う? 弁護士が解説

ニュースや新聞でよく見聞きするものの、実はよく分かっていない法令関連用語について、弁護士に聞いてみました。

「釈放」「保釈」「仮釈放」はどう違う?
「釈放」「保釈」「仮釈放」はどう違う?

 芸能人や著名人が関係する事件の報道で、しばしば聞かれる法令用語の一つに「釈放」「保釈」があります。この両者に加え、さらによく似た用語として「仮釈放」という言葉もあります。この3つにはどんな意味と違いがあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

対象となる「人」や「目的」などに違い

Q.「釈放」「保釈」「仮釈放」とは、それぞれ何でしょうか。

佐藤さん「『釈放』『保釈』『仮釈放』の意味は、それぞれ次の通りです」

【釈放】

「釈放」とは、刑事事件で警察などに身柄を拘束されていた人の拘束を解き、自由にすることです。例えば、逮捕されたものの疑いが晴れて釈放されたり、軽い罪だったため、検察に送られることなく釈放されたりするケースや、有罪が確定し、刑期を終えて釈放されるケースなどがあります。

その他、逮捕後、刑事手続きの途中で、身柄の拘束を続ける必要がないと判断され、釈放されることもあります。身元引受人がいて住所も定まっていたり、容疑者が反省し、被害者との間で示談が成立していたりすると、証拠隠滅や逃亡の恐れがないとして釈放される可能性があります。しかし、釈放後も、日常生活を送りながら捜査に協力し、起訴されれば裁判を受けることになります。

【保釈】

「保釈」とは、起訴された後に、勾留(身柄拘束)されている被告を釈放することです。刑事裁判が始まる頃には証拠の収集も済み、長期間に及ぶこともある裁判の間、被告の身柄を拘束し続けると負担も大きいことから、保釈の制度が認められています。

保釈は、被告やその弁護人、一定の親族などが請求でき(刑事訴訟法88条)、請求があれば、法定された除外事由(被告が一定の重い罪を犯した場合、被告が証拠隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合、被告の氏名または住所が分からない場合など)がない限り、認められます(刑事訴訟法89条)。また、裁判所は職権で保釈を許可することもできます(刑事訴訟法90条)。このように、原則保釈が許される建前になっていますが、実際には、証拠隠滅の恐れなどを広く認めることで、保釈が許されないケースも少なくありません。

保釈を許す場合には、保証金額(いわゆる『保釈金』の額)を決めなければなりません(刑事訴訟法93条1項)。「保釈金」とは、被告の出頭を確保するためのお金で、被告が裁判所に出頭しない場合には没収されます。保釈金の金額は、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告の性格、資産を考慮して、出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされています(刑事訴訟法93条2項)。なお、無事に裁判が終われば、有罪・無罪にかかわらず、保釈金は返還されます。

【仮釈放】

「仮釈放」とは、服役中の受刑者について、一定の条件を満たした場合に、刑期が満了する前に釈放することです。仮釈放は、「改悛(かいしゅん)の状」(過去の罪を悔い改め、心を入れ替えること)があるとき、有期刑については刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、できることになっています(刑法28条)。

仮釈放されると、保護観察に付され、保護観察官や保護司から指導や援助を受けることになります。一方、満期で釈放された場合、保護観察は受けられないため、社会へ適応しにくく、再犯に至ることもあり得ます。仮釈放は受刑者の再犯防止、ひいては社会を守るための制度といえるでしょう。

Q.つまり、「釈放」「保釈」「仮釈放」の違いとは。

佐藤さん「『釈放』は、『保釈』や『仮釈放』も含む広い意味の言葉です。『保釈』は、刑事裁判にかけられた被告について、裁判の間、身柄の拘束を解く制度であり、『仮釈放』は、受刑者について、刑期の満了前に釈放する制度です。対象となる人や目的など、さまざまな点で違いがあります」

Q.「釈放」後、「保釈」後、「仮釈放」後はそれぞれ、どのような流れになるのでしょうか。

佐藤さん「『釈放』にはさまざまなパターンがありますが、先述のように、疑いが晴れて釈放されたり、刑期を終えて釈放されたりした場合は、制限なく日常生活を送ることができます。一方、身柄拘束の必要性はないとして釈放されたものの、捜査を継続する必要がある事案では、日常生活を送りながら警察や検察の捜査に協力したり、刑事裁判が始まれば出頭に応じたりする必要があります。

『保釈』は、認められたとしても住居制限が付されたり、『事件関係者とは面会しない』『旅行には許可が必要』といった条件が付されたりすることがあります(刑事訴訟法93条3項)。条件に違反すると保釈が取り消され、保釈金が没収されることがあります(刑事訴訟法96条)。裁判が終わり、実刑判決を受けた場合は、身柄が拘束されます。

『仮釈放』の場合は、先述したように、保護観察に付され、保護観察官や保護司から指導や援助を受けながら、更生に努めることになります。なお、仮釈放期間中に違法行為があったり、順守事項を守らなかったりすると、取り消され、再び刑事施設に戻されることもあります」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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