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「長く暮らした場所で、人生の最後を」は理想的? 高齢者が「住み慣れた場所」に固執しない方がよい理由

住み慣れた場所を「つくる」という発想

 もちろん高齢者にも、長い高齢期を視野に入れて住み替えを検討する人は増えていて、「いつ、住み替えるのがいいか?」という質問をよく頂くようになりました。

 筆者は必ず「早い方がいい」と答えます。理由は何よりも、事故や体調急変はいつ起こるか分からない(明日かもしれない)からですが、もう一つは、元気なうちの方が環境変化に適応する力があるからです。

 若い人と同じように、しばらくすれば「住めば都」となり、先述の6条件がそろっていれば、それまでの「住み慣れた場所」よりはるかに楽しく過ごせる人も多いでしょう。逆に、適応する力が衰えてから環境を変えると、なかなかなじめず、リロケーション・ダメージを受ける危険性が高くなってしまいます。

 早めの住み替えは、「人生の最後は、住み慣れた場所で」という願いをかなえる行動でもあります。早く住み替えるほど、その環境に適応しやすいので、人生の最終盤を過ごせる住み慣れた場所をつくることができるからです。切羽詰まってから住み替えたのでは、住み慣れた場所にはなりません。

 高齢者には今、これまで長く住んできた「住み慣れた場所」に固執するのではなく、これからの長い期間を考慮に入れて、「住み慣れた場所を“つくる”」という発想の転換が求められていると思います。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

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川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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