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梅雨時、頭痛が悪化するのはなぜ? 対処法は? 専門医に聞く

「梅雨の時季、頭痛がひどくなる」という人が多いようです。なぜ梅雨時に頭痛が起きたり、頭痛がひどくなったりするのでしょうか。

梅雨と頭痛の関係は?
梅雨と頭痛の関係は?

 梅雨の時季は憂鬱(ゆううつ)なものですが、中には体調を崩し、特に「梅雨の時季、頭痛がひどくなる」という人が多いようです。なぜ梅雨時に頭痛が起きたり、頭痛がひどくなったりするのでしょうか。頭痛外来が専門の東京頭痛クリニック(東京都渋谷区)理事長で、にわファミリークリニック(東京都調布市)院長でもある丹羽潔さんに聞きました。

湿度上昇が最大の要因

Q.「梅雨時、頭痛がひどくなる」「天気の悪い日に頭が痛くなる」という声を聞くことがあります。梅雨時は頭痛の患者さんが増えるのでしょうか。

丹羽さん「増えます。詳しく言うと、東京頭痛クリニックは頭痛の専門クリニックで、普段から頭痛に悩んでいる患者さんが来院されているのですが、その人たちは、梅雨時になると、頭痛の状態がいつも以上に悪くなります。また、普段は市販の鎮痛剤で頭痛に対処できている人たちが、梅雨時には市販薬では効かなくなって、来院されるケースも多いです」

Q.梅雨と頭痛の関係について、教えてください。

丹羽さん「梅雨時の頭痛で多いのは、まず、こめかみから目の辺りがズキズキと激しく痛む『片頭痛』です。梅雨と片頭痛の関係については、『湿度の上昇』『低気圧』『気温の上昇』という3つの要因があり、かつては『低気圧』が最も影響しており、『湿度の上昇』が次に影響が強いと言われていました。

しかし、2019年、ハーバード大学(アメリカ・ボストン)から詳細な報告があり、『湿度の上昇』が最も片頭痛に影響しており、次に『低気圧』という順番だと分かりました。それが当てはまるのは、ボストンの4~9月の暖かい気候の時季、東京でいうと3~10月ということになり、梅雨の時季も含まれます」

Q.なぜ、湿度が高いと片頭痛が起きやすくなるのでしょうか。

丹羽さん「人間の体は熱を産生して汗を出し、その発汗を蒸発させることによって放熱し、体温を一定に保っています。湿度が高いときは、ジメジメして、肌がベタベタになると思います。汗をかいても蒸発しにくくなり、熱が体にこもってしまうのです。サウナにいるような状態、というとイメージしやすいでしょうか。

熱がこもると血管が拡張します。脳の血管も拡張し、血管が拡張すること自体で痛みを感じるのですが、さらに、拡張した血管が周囲の神経を刺激することで、痛みを感じます。そして、神経が刺激されることでさらに血管が拡張し…という悪循環に陥り、激しい片頭痛を起こすという流れです。

湿気は高ければ高いほど、悪影響があるとされます。梅雨時の平均湿度は75%を超えます。一方、人間が快適に感じる湿度は40~60%です」

Q.低気圧によって片頭痛が起きるのは、なぜでしょうか。

丹羽さん「気圧の低い日が続くと頭が痛くなる人もいるのですが、気圧が急激に下がるときに痛くなる人の方が圧倒的に多いのです。具体的には、気圧が5ヘクトパスカル以上下がるとき、片頭痛が起きたり、悪化したりする人がいます。

急激に気圧が低下すると、体の外から押さえる力が弱くなり、体は膨張します。飛行機の中で、ポテトチップスの袋がパンパンに膨れるのと同じ理屈です。この膨張しようとする変化に対して、脳の視床下部という所にある交感神経が活発になり、『ノルアドレナリン』というホルモンが出て、痛みを感じます。

また、低気圧の状況では、空気中の酸素濃度が低くなります。日常生活の中での低気圧では、息苦しさを意識することはないでしょうが、血液中の酸素の量は減っており、脳は酸素の減少を感知します。脳は酸素をたくさん必要とするので、脳の血管は拡張します。その結果、血管痛が起きたり、血管周囲の神経を圧迫して、片頭痛が起きたり、悪化したりするのです。

ここまで『片頭痛』を中心に説明してきましたが、梅雨時は、『第4の頭痛』と呼ばれる『後頭神経痛』の患者さんも増えます。片側の首から後頭部、頭頂部にかけて、ビリッとかチクチクッとした一瞬の激痛が繰り返し起きるもので、さまざまな要因がありますが、気圧の低下も一因です。雨の日の前日に起きるケースが多いです。発症の仕組みは、片頭痛とは異なり、テレワークや携帯の使い過ぎによる猫背の姿勢、スマホ首、ストレスなどで、頸部の筋肉のコリにより皮膚の表面側に出ている後頭神経を圧迫して痛みを引き起こします」

Q.梅雨時の頭痛への対処法は。

丹羽さん「食生活の注意点などは、予防策と重なるので、後ほど説明します。まず、湿度対策として、除湿機やエアコンを使ってみてください。先ほど述べたように、梅雨時の平均湿度は75%超です。人間が快適に感じる湿度40~60%を一つの目安として、湿度を低く抑えれば、高湿度による頭痛への対策となります。

頭痛の程度によっては、市販の頭痛薬で様子を見てもよいですが、本当に痛くなったら、市販薬では効きません。片頭痛や後頭神経痛には、市販の頭痛薬は効かないので、梅雨時期は受診者が増えるのです」

Q.では、病院やクリニックを受診する目安は。

丹羽さん「市販薬で効かないときや、市販薬を飲む回数が増えてきたときです。月に10日以上、市販の鎮痛剤を飲むようなら、『薬物乱用頭痛』を疑う必要もあります。医療機関では、トリプタンやジタン系薬剤であるラスミジタンといわれる薬を処方して、片頭痛には対処します」

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丹羽潔(にわ・きよし)

医師、医学博士

1987年、東海大学医学部を卒業、医学博士取得後に、ドイツ・ミュンヘン大学で1年、米国・ミネソタ大学で3年間、脳神経内科学、特に脳循環代謝学や頭痛の研究に従事。平塚市民病院神経内科医長、東海大学医学部内科講師を経て、2005年、「にわファミリークリニック」(東京都調布市)を開設、院長に。2015年、頭痛専門クリニックである「東京頭痛クリニック」(東京都渋谷区)を開設、理事長を務める。

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