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「収入増」「スキル向上」で注目 サラリーマンの「副業」のコツ、注意点は?

従業員の副業に関する経営者の悩みとは?

Q.会社経営者から従業員の副業に関して、これまでにどのような相談が寄せられていますか。

大庭さん「副業に関する相談で多いのは、労働時間の管理と、副業を許可した従業員に対する残業などの指示に関することです。

現在の法律では、2つ以上の会社に雇用されて働いている場合は、一部の例外を除いて、それぞれの会社で働いた労働時間を通算した時間が当日の実労働時間になります。実労働時間が法定労働時間を超えた場合は割増賃金の支払い対象となり、36協定で定める時間外労働の範囲にも影響を与えます。2019年4月に改正法が施行された労働安全衛生法による『企業の実労働時間の把握義務』もこのことに影響してきます。よって、会社が副業を許可する場合は、副業によって生じる労働時間についても正確に把握しておく必要があります。

さらに、副業を許可したことで、当該従業員が働くことのできる時間が制限されることがあります。それにより、必要な残業指示が行えなくなり、他の従業員にしわ寄せが生じるケースも発生します。そのような事態を生じさせないためにも、副業を許可する際は本業に支障が生じない範囲で副業することを誓約させるとともに、副業で働く予定を会社があらかじめ把握しておく必要があるのです」

Q.副業を巡り、企業と従業員が良好な関係を築くにはどのようなことを心掛ける必要があるのでしょうか。

大庭さん「企業が多様な働き方を認め、その一環として従業員が副業を行うことで、従業員側にはキャリアの形成やスキルの向上、経済的余裕といった利点が、企業側には従業員満足度や業務の付加価値向上などの利点がそれぞれ生じるのが、理想的な副業の在り方です。そのような関係性を築き上げるためにも、企業側は副業に関する運用ルールを明確にした上で、従業員に周知し、個人の働き方に対して前向きな理解を示す姿勢を表すことが望ましいです。

従業員側も、本業の職務を第一に考えた上で、副業についての報告を会社へ自主的に行う姿勢を持ってください。会社が副業に前向きな姿勢を示しているのであれば、働き方やキャリアの形成などに対する自分自身の考え方をあらかじめ会社に伝えておくことも効果的だといえます」

(オトナンサー編集部)

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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