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無料パス不正使用、銀座3兄弟…「自分だけはバレない」と思う心理とは?

悪いことをしても「自分(たち)だけはバレない」と思う人がいるようですが、その心理はどのようなものなのでしょうか。専門家に聞きました。

「自分だけはバレない」と思う心理とは?
「自分だけはバレない」と思う心理とは?

 現職国会議員になりすまして新幹線のグリーン券などをだまし取ったとして、元参院議員が4月下旬に逮捕されたとの報道がありました。現職の国会議員だけが使える、いわゆる「JR無料パス」も長年不正使用していたようです。昨年2月には、コロナ禍で飲食店の営業時間短縮を政府が呼びかける中、銀座で深夜まで飲み歩いていた国会議員(当時)3人が「銀座3兄弟」と批判を浴びました、悪いことをしても「自分(たち)だけはバレない」と思う人がいるようですが、その心理はどのようなものなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「楽観バイアス」働く

Q.悪いことをしても「自分だけはバレない」「自分たちだけはバレない」と思う心理とは、どのようなものでしょうか。

小日向さん「『自分(たち)だけはバレない』と思う心理は『楽観バイアス』と言われます。楽観バイアスとは『物事を自分にとって都合よく解釈してしまう』という心理状態のことで、人間がストレスを回避するために働かせる機能です。

ちなみに、人間が自分の体験や固定観念に基づいて非合理な認知をしてしまうことを心理学用語で『認知バイアス』といい、認知バイアスの中には『正常性バイアス』『ハロー効果』など、さまざまなバイアス心理がありますが、楽観バイアスもこの認知バイアスの一つです」

Q.「バレるかもしれない」と思いつつ、開き直って悪事をしている人もいるのでしょうか。

小日向さん「いると思います。そしてそうした人は『開き直れる根拠』を持っていることが多いと感じます。例えば、コロナ禍で深夜まで飲み歩いていた議員の場合、その開き直りの根拠は『たとえバレても自分が持っている権力でもみ消せる』といった特権意識でしょう。そういった意味では、特権のように何らかの『後ろ盾』がある人の方が、開き直る確率は高いと私は考えます」

Q.今回の元参院議員のように、長年不正を続けてきたと思われる人もいます。こうした人は、心理状態が特別なのでしょうか。

小日向さん「特段に特別な心理状態とは言えないと思います。なぜなら、心理学用語では『馴化(じゅんか)』と言いますが、ある刺激が繰り返されると、次第にその刺激に対して反応が見られなくなる、いわゆる『慣れ』の状態は、誰にでも生じる心理状態だからです。

ただ、馴化は報酬もなく有害もない状態での方が生じやすいです。そのため、この元議員の人のように、不正に関して馴化が生じてしまうのは、やはり彼の中にも『慣れ』以外の楽観バイアスや特権意識があったのではないかと推測します」

Q.「自分だけはバレない」と思う人は、国会議員のような地位のある人に多いという傾向はあるのでしょうか。それともどういった地位の人でも共通なのでしょうか。

小日向さん「『自分だけはバレない』という楽観バイアス自体は、地位の有無に特段関係ないと思います。それよりも、地位がある人はバレてもそれをもみ消すことを可能とする『後ろ盾』があることの方が、今回の道徳観念が欠如した言動に深く関係していると思います。社会的地位とそれによって得ている権力が彼らの後ろ盾なのです」

Q.「自分だけはバレない」と思う気持ちを抑えるコツや心構えがあれば教えてください。

小日向さん「『自分だけはバレない』という意識で何度も失敗や後悔をしている人は、そもそも物事を楽観的に考え過ぎる傾向が高いといえます。従って、何かをしようとする時は、一度自分の中でそれによって生じる物事をかなり悲観的に予測するという思考の癖づけを意識してみてください。

また、『朱に交われば赤くなる』ということわざがあるように、不正に対して楽観バイアスが働いている集団にいると自分もその認知に染まりやすくなりますので、そうした集団とは群れないようにすることも大切です」

(オトナンサー編集部)

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小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

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