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交通不便、広大で歩き疲れる…難点が多いのに、アウトレットモールが郊外にできる理由

休日にアウトレットモールは多くの人でにぎわいますが、都市部から遠く、敷地が広大で歩き疲れる欠点があります。なぜ、都市部に近く適切な広さのアウトレットモールが少ないのでしょうか。

アウトレットモールは、なぜ、郊外にできるのか?
アウトレットモールは、なぜ、郊外にできるのか?

 全国各地にアウトレットモールがあり、休日には多くの人が訪れます。さまざまなブランド商品などを一つの敷地内で見つけられることが、多くの人を引き寄せる理由なのかもしれません。とはいえ、ほとんどのアウトレットモールが都市部から遠く、交通が不便な場所にあり、また、敷地が広過ぎて買い物のために歩き疲れる欠点もあるように思います。なぜ、アウトレットモールは、都市部から遠く、広大なのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

正規品販売との競合避けたい

Q.そもそも、「アウトレット」「アウトレットモール」とは、どのような意味ですか。どのような商品が売られているのですか。

大庭さん「『アウトレット』とは、在庫商品を大量に仕入れて安売りする小売り業態のことです。売れ残り商品や製造過程で傷が付いた商品、サンプル品などをメーカーから安く仕入れ、店舗で販売しています。

近年は、アウトレットとして安く販売する目的の商品を自ら製造し、店舗で販売する事業者も存在します。そのような店舗が数多く入店した商業施設のことを、『アウトレットモール』といいます」

Q.なぜ、アウトレットモールは、都市部から離れた場所にあることが多いのでしょうか。

大庭さん「主な理由は、(1)正規品との競合を防ぐため(2)広域から集客するため(3)広い敷地を確保するため(4)コストを安くするため─の4つです。

アウトレットモールでは、“非正規品”を販売しています。一方、都市部には、“正規品”を販売している店が多くあり、都市部にアウトレットモールを出店してしまうと、正規品販売と非正規品販売との競合が発生し、正規品が売りづらくなります。

また、アウトレットモールには、レジャー感覚で買い物などを楽しめる特徴もあります。その特徴を生かすため、広域から集客できる環境を整える必要があり、広域からの集客を行えば、車で来店する客が多くなることが想定されるため、広い駐車場スペースが必要となります。

そして、アウトレットモールの最大の特徴は、商品が安いことです。商品を安く販売するために、土地代などの固定コストを安く抑える必要があります。これらの理由から、アウトレットモールは、郊外の道路沿いの土地に出店することが多いのです」

Q.なぜ、アウトレットモールは、買い物だけで歩き疲れるほど広大なのでしょうか。

大庭さん「アウトレットモールは、目的の商品を買うためだけに訪れるのではなく、ウインドーショッピングや、レジャーを楽しむ過ごし方を促しています。そうすることで、来店者による『ついで買い』の効果を得ています。そのためにも、多様な業態の店舗や施設が入店することが効果的であり、結果的に広い敷地が望ましいのです」

Q.以前に比べると、アウトレットモールを訪れる人は減少しているようです。アウトレットモールの立地や広さに要因があるのでしょうか。

大庭さん「先述したように、アウトレットモールは、非正規品を安く購入できるという特徴でブームになりましたが、近年は、ネット通販で非正規品を安く購入できるようになりました。そのため、わざわざ郊外のアウトレットモールに行く必要がないと考える消費者が増えたことが、来店客減少の一因と思われます。

加えて、H&Mに代表されるような海外の低価格ブランド店の国内出店が加速しており、低価格で一定レベルの高品質の商品を手に入れたい消費者が流れていることも、アウトレットモールの来店客数の減少につながっていると考えられます」

Q.アウトレットモールは、今後、どのようになっていくと思われますか。

大庭さん「都市部での出店が加速することはないだろうと考えます。一方、郊外の広い敷地に出店する従来型のアウトレットモールは、レジャーを楽しむという過ごし方もあり、今後もファミリー層を中心とした一定の集客を見込むことはできます。

しかし、『一定レベルの高品質の商品を低価格で販売する』という特徴を前面に押し出すだけでは、商品販売の増加を見込むことは難しく、淘汰(とうた)されるショッピングモールが増えると思います。体験や新しい感動を来店者に提供するなど、付加価値を演出する工夫が必要となるのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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