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「初当選直後に妊娠?」「投票するから携帯番号を」…女性議員らへのセクハラ、パワハラ、内閣府ドラマ化

地方議員を目指して立候補した29歳の女性が、有権者や先輩議員からのセクハラ、パワハラなどに苦しむ、というドラマ仕立ての動画を、内閣府男女共同参画局が作成・公開しました。狙いを聞きました。

デュエットで体を密着させられる場面(内閣府男女共同参画局作成の動画より)
デュエットで体を密着させられる場面(内閣府男女共同参画局作成の動画より)

 ベテラン男性議員がデュエットを強要して体を密着させてきたり、男性有権者が「投票するから(個人の)携帯番号を教えて」と迫ったり、妊娠を報告すると「初当選したばかりで妊娠? 議員を一度やめた方がいい」と辞職を促されたり…。地方議員を目指して選挙に立候補した29歳の女性が、有権者や先輩議員からのセクハラ、パワハラ、マタハラに苦しみ、入院にまで至る―。そんなドラマ仕立ての動画を内閣府男女共同参画局が作成し、4月12日に同局公式YouTubeで公開しました。全国の地方議員の被害体験を基にした内容で、動画中に出てくるハラスメント行為はすべて、地方議員たちが経験や見聞きした実話だそうです。

 動画作成と公開の狙いについて、内閣府男女共同参画局に聞きました。

有権者にも見てほしい

 動画は約30分。主人公は、地域の子育てや介護のボランティア活動の経験から、地元の議会議員選挙に立候補した29歳の女性で、2年前に結婚し、まだ子どもはいないという設定です。

 選挙活動中の場面では、年配の男性有権者が長々と握手した上に、「投票するから携帯番号教えてくれる?」と抱き着いてきて、当選後は、ベテラン男性議員から「女性議員はお茶くみを」と当たり前のように言われ、酒席ではデュエット強要。妊娠をベテラン議員に報告すると、「初当選したばっかりなのに妊娠しちゃったの? 当選の重みをしっかり自覚しないと。有権者に失礼だから、議員を一度やめた方がいい」とまで言われてしまいます。

 若手の男性議員も被害者として登場。選挙活動中、有権者に「若いのに偉そうだな。若造!」と罵声を浴びせられたり、酒席で先輩ベテラン議員から強い酒を強要された上に、家庭の事情をばらされたりと、ハラスメント行為を受けます。

 会派内で無視されるようにもなった女性議員は、精神的に疲弊し、体調を崩して入院して…というストーリー。動画では、ハラスメントの場面だけでなく、加害者の言い分や、被害者の心情、ハラスメントについての解説も盛り込んでいます。

 内閣府男女共同参画局推進課の担当者に聞きました。

Q.動画を作った目的、狙いを教えてください。

担当者「日本では、政治分野における男女共同参画がなかなか進んでいません。国会を見ても、衆議院では10%に満たない状況です。なぜ進まないのか、2020年度に内閣府で実施した調査で、ハラスメントを受けた議員が回答者全体の4割、特に女性は6割近くに上ることが分かりました。男女共同参画を進めるには、ハラスメントの防止が喫緊の課題だと認識したのです。

昨年6月、『政治分野における男女共同参画推進法』が改正されて、国や自治体が、セクハラやパワハラ、マタハラといったハラスメントの発生を防止するために、研修など必要な施策を講ずることが義務化されました。これを受けて、今回、各議会の研修などで活用できる動画教材を作成しました。読み物という方法もありますが、動画の方が見やすいのでは、ということで動画を作りました」

Q.ドラマ仕立てになっていますが、台本はどのようにして作成したのでしょうか。

担当者「『生の声』を集めようと、昨年10月から11月、専用の投稿サイトを作り、全国の地方議会議員を対象に、選挙活動中や議員活動中、実際に体験した、あるいは見聞きしたハラスメント事例を投稿してもらいました。無記名で投稿してもらった結果、1324件の事例が集まり、それを基に類型化して、複数の事例を組み合わせるなどして、ストーリーにしました。

私たちの方で構成案を作り、その内容について、政治学者や弁護士、元地方議員、ハラスメント研修の専門家といった有識者に集まって議論していただき、最終的に台本を作りました。動画中の個々のハラスメントは、実際にあった事例です。出演者はプロの俳優さんです」

Q.有権者からのセクハラ、お茶くみ強要、マタハラなど、出てくる場面は、特に事例が多かったものなのでしょうか。

担当者「事例の種類はある程度バランスを取りながら作りましたが、確かに、有権者からのセクハラ・パワハラ、女性議員のみのお茶くみ強要、マタハラなどは、数としてはけっこうありました」

Q.新人女性議員が主人公ですが、若手の男性議員もハラスメント被害者として登場します。女性議員だけでなく、男性議員も被害に遭っているのでしょうか。

担当者「今回、事例を集めたときに、男性か女性かは聞いていないのですが、中身を見ると、これは男性だな、というものがあり、女性よりは少ないと思われるものの、男性が受けたハラスメント事例もかなりありました。先ほど紹介しました2020年度の調査でも、回答した男性議員のうち、32.5%がハラスメント行為を受けたと回答しており、そうした傾向も踏まえて、ストーリーを作りました」

Q.この動画をどのような人に見てほしいですか。

担当者「まずは各議会の議員の皆さんを想定しています。議会の研修の方法は、議会の皆さんの判断に委ねられていますが、動画を選択肢の一つとして、活用していただければと思っています。

有権者の皆さんにも見ていただきたいと思い、そのために誰でも見られるYouTubeで公開しました。自分はハラスメントだと思っていなくても、結果的にハラスメントとなっている行為があります。無意識にハラスメントをしている人もいるので、動画を見て、どういう行為がハラスメントになり得るのか、考えるきっかけ、気付きを得るきっかけにしていただければと思います」

 動画は、内閣府男女共同参画局のホームページからアクセスできます。

(オトナンサー編集部)

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