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「砂糖よりも果糖は体に悪い」という声も…果物を摂取するときの注意点は?

「果糖は砂糖よりも体に悪い」という声があります。果物を摂取する際は、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。専門家に聞きました。

果物を摂取するときの注意点は?
果物を摂取するときの注意点は?

 果物は食物繊維が豊富に含まれているとされ、おやつや食後のデザートに最適です。ところが、「果物に含まれる果糖は、砂糖よりも体に悪い」と主張する意見もあり、摂取してよいのか迷うこともあります。「果糖は砂糖よりも体に悪い」というのは、本当なのでしょうか。また、果物を食べる際は、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。アスレチックトレーナーで、一般社団法人フィジカル&ムーブメントトレーニング協会代表の井上かな映さんに聞きました。

脂肪が蓄積されやすい

Q.果物を食べるメリット、デメリットについて教えてください。

井上さん「果糖は『単糖類』という糖質の種類の一つで、摂取した直後にエネルギーになるので、運動時におすすめです。また、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富なので、体にとってプラスの働きもあります。

しかし、果糖は体内に吸収された後、すぐに肝臓でブドウ糖と中性脂肪に作り替えられ、使われなかった分は体脂肪として蓄積されてしまいます。また、インスリンがほとんど分泌されないため、ブドウ糖の3倍のスピードで内臓脂肪が増えます。つまり、果物を食べ過ぎると、肥満の原因となります。

果物は食物繊維が豊富で低カロリーですが、摂取すると脂肪が落ちにくくなってしまうため、ダイエット中は控えましょう」

Q.「果物に含まれる果糖は、砂糖よりも体に悪い」と主張する意見もあるようですが、なぜそのように言われるのでしょうか。また、果糖を摂取し過ぎると、肥満以外にどのような健康被害が生じるのでしょうか。

井上さん「先述のように、中性脂肪や内臓脂肪として蓄えられやすく、肥満になるリスクが高いために、『体に悪い』『危険』だと言われています。中性脂肪が増えると脂肪肝になりやすく、血糖値を下げる働きのあるインスリンの効き目が悪くなるため、果糖を含む食べ物を多く摂取してはいけません。

一方、『ショ糖』と言われる、白砂糖や黒砂糖、オリゴ糖などの『砂糖』は、ブドウ糖と果糖が組み合わさった物です。ショ糖にも果糖が含まれていますが、ショ糖の方が甘さが控えめで癖がなく、料理などに向いています。食べ過ぎはいけませんが、果糖よりも中性脂肪や内臓脂肪が蓄積されにくい傾向にあります。

果糖を摂取し過ぎると、肥満や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のほか、2型糖尿病や心血管疾患などの発症リスクが高まると言われています。果物に含まれる果糖だけではなく、清涼飲料や菓子類などの加工食品に含まれている『果糖ブドウ糖液糖』『ブドウ糖果糖液糖』にも注意しながら食品を選ぶことが大切です。食品を買う前にまず成分表をチェックして、過剰な摂取を控えましょう」

Q.果物を摂取するときの注意点について、教えてください。糖尿病の人は、1日にどの程度の量であれば、摂取してもよいのでしょうか。

井上さん「1日の中で消費エネルギーが少ない人や、普段運動していない人は、基本的に果糖の摂取をおすすめできません。食べるとしても、ごく少量にすべきです。

糖尿病などの持病を持っている人は、果糖だけでなくすべての糖質を摂取すると急激に血糖値が上がるため、食事の最初に摂取しないように注意しましょう。野菜やタンパク質などの副菜を食べた後、デザートとして最後に果糖を摂取することで、血糖値の上昇が緩やかになります。食事の代わりに果物を摂取するのは、絶対にやめてください。

糖尿病の人が摂取してもよい果糖の量は、1日80キロカロリーとされています。リンゴでいうと、1日半分までです。また、他の果物の1日の摂取量の目安は、次の通りです。

【80キロカロリーの果物の目安】
みかん2個(200グラム)
バナナ1本(100グラム)
イチゴ10粒から15粒(約250グラム)

酸っぱい果物の方が栄養価が高いため、キウイフルーツやパイナップル、イチゴなどがおすすめです」

Q.「1日1個のリンゴで医者いらず」とよく言われますが、リンゴを1個食べるのはよくないのでしょうか。

井上さん「リンゴ1個を食べるには、日本で売られているリンゴは少し大き過ぎます。海外のリンゴは、日本のリンゴよりも小ぶりで半分くらいの大きさなので、ちょうど良いとされていましたし、リンゴをはじめとするフルーツは、これまで『ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれた健康食品』と言われ、多くの人がそれを信じていました。

しかし、それは運動量が多い人に限ります。近年、果糖の人体への影響が注目されており、ダイエット目的で食事をコントロールする人にとって、果糖は本来不要なエネルギーを摂取してしまうことになるのです。

先述のように、果糖を摂取するときは、サイズや量に気を付けましょう。片手のひらに収まるくらいの量の果物や加工食品を食事の最後に食べることで、血糖値の上昇を防ぎ、食後のデザートを楽しむことができます」

(オトナンサー編集部)

【表】果物を食べ過ぎた場合のリスクは? どのような病気になりやすい?

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井上かな映(いのうえ・かなえ)

アスレチックトレーナー

東海大学体育学部体育学科卒業後、渡米。米国ネブラスカ大学オマハ校大学院を卒業後、「全米公認アスレティックトレーナー」を取得し、女子プロバスケットボールチーム「WNBAヒューストン・コメッツ」で経験を積む。2010年に帰国後、日本航空JALラビッツ、東海大学男子バスケットボール部などでサポートを歴任。2016年に一般社団法人フィジカル&ムーブメントトレーニング協会を設立し、トレーナー、インストラクターの育成を行う。2019年に東京都世田谷区で「スタジオトーチ下北沢」を開業。一般社団法人フィジカル&ムーブメントトレーニング協会(https://www.pmt-a.com)。スタジオトーチ下北沢(http://studio-torch.com/)。

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