人形劇団のトラック盗まれ、発見も損壊…励ましの声に劇団「前向いて演劇続ける」

　千葉県松戸市で1月9日、子ども向けの人形劇を行う「劇団こぐま座」の3トントラックが盗まれているのが分かりました。劇団によると、トラックには等身大の着ぐるみや機材などが積まれており、盗難判明後、劇団はツイッター上で、「このトラックがないと公演ができません」「新型コロナの影響で数えきれない現場が飛び、それでもギリギリの経営を続けてきました」などと訴え、トラックに関する情報提供を呼び掛けました。

　SNS上では、情報拡散に多くの人が協力するとともに、「子どもの頃に見た人形劇、本当に好きでした」「娘とよく見ました」などと思い出を語る声や、「寄付をしたい」「クラウドファンディングをするならぜひ応援したい」といった励ましの声が集まりました。

　トラックは2日後の11日、松戸市から直線距離で70キロほど離れた茨城県鉾田市で見つかり、警察は盗品等保管の疑いで、ナイジェリア国籍の男ら2人を逮捕しました。劇団に話を聞きました。

励ましは「宝物のような言葉」

　1969年創立の劇団こぐま座は、「ピノッキオ」「三匹のこぶた」「ももたろう」など、国内外の童話を題材にした等身大の着ぐるみによる人形劇を、全国の幼稚園や劇場などで公演しています。

　劇団員の山本周平さんに聞きました。

Q.そもそも、今回盗まれたトラックの中には、どのような物が積まれていたのでしょうか。また、盗難後の対応について教えてください。

山本さん「トラックは劇団事務所の駐車場に鍵をかけた状態で止めており、『ピノッキオ』などの着ぐるみが10体近くのほか、照明機材や音響機材、舞台のセットが積まれていました。盗難時の被害総額は、トラックを含めて約1000万円です。トラックの鍵は予備の物も含め、事務所内で保管していました。

盗難に気付いた後、最寄りの警察署に連絡するとともに、ツイッターで情報提供を呼び掛けましたが、その際、『海外に密輸される可能性があるから、税関にも連絡をした方がいい』といったアドバイスを頂き、税案にも連絡しました。警察の人などが丁寧に対応してくださり、感謝しています」

Q.コロナ禍で劇団の状況は厳しかったのでしょうか。

山本さん「コロナ禍以前は、幼稚園と劇場公演合わせて年に200公演近く行っていましたが、新型コロナウイルスの影響で2020年と2021年は、30公演程度まで落ち込みました。

今年は3月中旬以降、複数の公演を予定しており、盗難発覚後、何とか公演をキャンセルしないで済むように、劇団内で話し合いを重ねていました」

Q.その後、トラックは11日に無事に見つかったということですが、どのような状態で発見されたのでしょうか。また、積み荷は無事だったのでしょうか。

山本さん「警察から12日に連絡がありましたが、トラックはエンジンが壊れていて動かない状態だったそうです。また、トラックのパーツが一部なくなっていたほか、トラックに描かれていた劇団のマークがスプレーで消されていたそうです。積み荷は残っているようですが、全ての物が無事かどうかは、まだ実際に確認できていません。後日、確認させてもらう予定です。

3月以降の公演の演目などはまだ決まっていませんが、公演が無事に迎えられるよう、前を向いて取り組んでいきたいと思います」

　盗難判明後の協力や、寄せられた多くの励ましのメッセージに対し、劇団の公式ツイッターは、「拡散に協力してくださった、応援してくださった皆さま（のおかげで）、くじけてしまいそうでしたが、最後まで頑張ることができました」などの感謝の言葉とともに、「今回いただいた、たくさんの宝物のような言葉を抱えて、前を向いて演劇を続けていきます」との決意を表明しました。

（オトナンサー編集部）