機嫌悪いと完全無視、夫の「不機嫌ハラスメント」に悩む妻たち 求められる“妻力”
不機嫌になると黙り込み、話し掛けても無視をする「不機嫌ハラスメント」。夫のこうした態度に悩む妻たちの実情と本音から、どのように対処すればよいのかを考えます。
突然、不機嫌になって黙り込んでしまう、話し掛けても無視をする――。こうした、夫の「不機嫌ハラスメント」に悩む妻は相変わらず多いようです。なぜ、夫は妻にこのような態度をとってしまうのか。無視をするということは、コミュニケーションを拒否していることになるので、家族としての生活に支障が出てしまいます。一体、どんなパターンがあるのか、妻たちはどう対処すればいいのか、考えます。
2週間は無視、その後はケロッと…
陽子さん(51歳、仮名)の夫、修二さん(58歳、同)は気に入らないことがあると突然、黙り込み、1~2週間は彼女が何を言っても無視し続けるそうです。ひどいときは、会話は無視するのに夜の営みは求めてきます。陽子さんは、とてもそんな気分にはなれません。
無視を続けるなんて、一体どういうつもりなのか、結婚当初は戸惑いながらも話し掛け続けていたそうですが、5年くらい続いた頃に諦めたそうです。おおよそ1~2週間たてば、ケロッと話し掛けてくると分かったからです。むしろ今は、無視の期間は修二さんの存在を忘れて1人でのびのびしているそうです。
ご飯を作っておけば、勝手に温めて食べるし、洗濯して、ワイシャツにアイロンをかけておけば、それを着て、陽子さんが作ったお弁当を持って出勤し、ちゃんと帰宅する。今はもう、この状態で何の違和感もないとか。ただし、修二さんが定年退職した後が心配だといいます。
「今までは出掛ける場所があって、日中いない時間が長かったから、何にも気になりませんでしたが、これが一日中家にいて、しかも、何もしゃべらないとなるとイライラするだろうなと思います。熟年離婚できるように今から、コツコツ貯金しています」
陽子さんはこの先、どうなるのでしょうか。
12歳の娘から、「パパと離婚して」
真子さん(38歳、仮名)の夫、俊介さん(41歳、同)は仕事でミスをしてうまくいかないとき、家の修理費が高くついたときなどに機嫌が悪くなります。すると、関係ないのに真子さんに向かって、「ばか」「だから、お前はダメなんだ」など、言葉の暴力を浴びせます。まさに憂さ晴らしです。そして、機嫌が悪いと、家族の中で真子さんに対してだけ無視するそうです。
それを見ている、15歳と12歳という多感な時期の娘たちはそんな父親のことを完全に軽蔑している様子。「何で、ママと話さないの?」「ママが嫌な気持ちになってるよ」と父親に怒ることもあります。12歳の娘さんは「パパと離婚して」と言うそうです。
しかし、15歳の娘さんは「離婚しないで」と反対意見。父親が好きなわけではなく、離婚したら、進学がどうなるのか不安だからだそうです。真子さん自身も子どもたちの就職や進路を考えたとき、「ひとり親は不利なんじゃないか」と決断ができないといいます。
子どものために離婚しないという決断をする親はまだまだ多いですが、不機嫌ハラスメントが永遠に継続することを考えると気が遠くなります。子どもをも巻き込む暗雲漂う事態に、なぜ、夫本人は気付かないのか。そこも深掘りする必要があります。不機嫌、無視を続けるほど「弱っている」「余裕がない」「他者の気持ちが分からない」のは決して、正常な精神状態ではないと思いませんか。
「ただの怒りっぽい性格」と笑い飛ばせるレベルでなく、その不機嫌、無視によって、周囲が暗い気持ちになるのであれば、根本から見直す必要があります。そこに気付いて、突破口を見いだすのが妻の力です。私は以前、これを「妻力」(つまぢから)と名付けました。「無視されているけど放置するしかない」と思い込まず、「無視の裏に隠された悩みがある」と一歩踏み込んで観察すると、いら立ちよりも解決策に目がいきます。
先述の陽子さんの晩年は果たして、幸せでしょうか。夫の存在をないものとしてのびのび過ごしたり、離婚に備えて貯金したり…ではなく、まだ、2人が元気なうちに不機嫌ハラスメントの夫と真っ向から向き合う必要があると感じます。老後の安泰を考えて、妻力を発揮するのは今しかありません。
大切な家族が、そして何より、自分自身が心から笑顔になれる、そんな毎日を過ごせるように、不機嫌なパートナーに対し、我慢してやり過ごすのではなく、妻にしかできないことにトライする。もし、それで撃沈すれば、一生無視なり離婚なり、路線変更すればよいと思います。妻力は臨機応変に、柔軟に使うこと。しなやかな妻力を磨くことが必要です。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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