保育園「探してないよ」 真剣な話は沈黙か逃避の“重要会話拒否夫”とは
真剣な話をする場面になると、沈黙したり、逃げたりする夫に悩む妻…夫婦間で重要な話し合いができない夫たちの実例を紹介します。

普段の会話は仲良く、楽しくできるのに、真剣に話し合わなければいけない内容になると途端に沈黙や逃避をし、会話そのものから逃げようとする夫への不満を相談してくる妻たちがいます。「家庭の重要な課題は夫婦2人で決めるのが普通」と考えていた私は相談を受けた全ての妻たちに「どんなときに逃げるの?」と尋ねたところ、なるほど…と思う具体的事例が出てきました。実際にどんなタイプの“重要会話拒否夫”がいるのか、ご紹介します。
夫は典型的な思考停止タイプで…
祐子さん(41歳、仮名)の夫、雅治さん(39歳、同)は典型的な思考停止タイプ。重要なことを決めなければいけないとなると、それがプレッシャーになるのか、一切反応しなくなります。朝のコーヒータイムや夕食後の談話時間はネタが豊富で、楽しく話せています。内容は職場の面白い同僚の話や2人の趣味である自転車の話題、深夜番組の感想などです。
しかし、転職の話題や実家の親の老後をどうするかの話、ローンの組み替えの話など「笑いで済ませられない真剣な内容」になるとなぜか、雅治さんはうやむやに濁して席を立ちます。祐子さんは、2人で決めなければいけない重要な事柄については、雅治さんがしっかり考えて答えが出せるよう、メールやLINEで送るようにしていました。
真剣な話し合いが進まない――。しかし、子どもが生まれるとそうもいかなくなります。祐子さんが育休から復帰するタイミングを、子どもが0歳時にするか、1歳時にするか考えていたときのこと。これについて、2人は子どもが生まれる前から話をしてきました。雅治さんは「生まれてみないと分からないよ。かわいくて、1歳でも復帰したくないって思うかもしれないし」と言い、祐子さんも「そうかもしれない」と思っていました。
実際の出産後は子育てが大変で、復帰のことを考える余裕がありませんでした。気が付けば、保育園の申込期間になっていたものの、まだ、保育園の下見にも行っていませんでした。家計のこともあり、祐子さんは早く仕事に復帰したかったので、雅治さんに「来年の4月から預けたいから、一緒に保育園を探してほしい。送りやお迎えは一緒にやらなきゃいけないから、協力してね」と伝えました。
すると、雅治さんは思考停止に。タブレット端末を開いて、ニュースサイトを読み始め、何の反応もしなくなりました。間が悪いことに、子どもが泣き出したので、話はそこまでに。その後、寝落ちしてしまった祐子さんは雅治さんにいつもの念押しLINEを送ることを忘れていました。そして、1週間ほどたったとき、祐子さんが「保育園、探してくれている?」と聞くと、「え? 探してないよ」という答えが。ワンオペ育児気味だった祐子さんはその言葉にキレてしまいます。
「一緒に探してって言ったじゃない! 私が復帰したら、今までのように全部、私がお世話することはできないんだから、マサくんも1人でちゃんと面倒が見られるようにしなきゃいけないんだよ。そういうの、理解している?」
雅治さんはまた思考停止に陥り、“沈黙の食器洗い”に専念する始末。祐子さんは「もうこれ以上待てない」と判断し、自分で保育園をいくつか見学に行き、申し込みをしました。そして、無事に保育園の入園が決まり、そのことを雅治さんに伝えると、「入れてよかったね」とうれしそうに言ったというのです。
「はあ?と思いましたが、それで分かったんです。彼には無理やり答えを言わせる必要も相談する必要もないんだなって。彼は本当に答えを持っていないし、興味を持っていないことを覚えておくのも難しいんだろうと思います。今後、保育園生活が始まったら、どうなるか分かりませんが、これからは子どものことは私が決めて、事後報告していこうと思います。そうしないと、期待してもこちらがキレてしまうから」
最終的な責任、妻に押し付ける夫
浩之さん(45歳、仮名)は自分の都合が悪くなると「あー、それね。そうだねー、分かった、分かった」などと適当なことを言い、はぐらかしにかかるタイプです。妻の未緒さん(40歳、同)はそのたびに「まただ…」と思いながら、あの手この手で話を続けて、結論を出そうとしますが、浩之さんはのらりくらりとはぐらかし、自分で決めようとしません。
マンションを購入するか、保険はどうするか、子どもに小学校受験をさせるかどうか。一事が万事、最終的には未緒さんが「いいのね、いいよね、決めるよ!」と押し切り、決定してきました。そのたびに、浩之さんは「未緒がいいと思っているならいいんじゃない。俺は分からないけど」と最終的な責任逃れをするような物言いをします。それがものすごく嫌だと未緒さんは言います。
「夫婦だからって、何でもかんでも一緒に決めないといけないとは思っていません。でも、最終的な責任を私だけに負わせるような言い方ってずるいですよね。私たちの年代はこれから、大きな決定事項が増える時期です。もちろん、私だって覚悟を決めた上で、自分で決めているんですから後悔はしないですが、何かあったときに責められたら、やりきれないです。マンションを買って、『やっぱり、賃貸の方がよかった』とか60歳になってから言われたくないですし」
幸い、未緒さんが決めたことで、浩之さんから責められるようなことはまだないそうです。私は未緒さんに「浩之さんに無理に決めさせたり、答えを求めたりすると、きっと険悪になるので、浩之さんに『“未緒がよければいいんじゃない。俺は分からないけど”という言葉が不快。“責任は私だけにあるよ”という言い方に聞こえる』とポイントを絞って率直に伝えてください」とアドバイスしました。それだけで、夫は妻のマイナスな気持ちに気付くことができます。
夫婦とはいえ、相手の思考や行動を簡単に変えることはできません。どうやったら、自分が不快感を抱くことなく、ご機嫌に生きていけるかを模索するのが前向きな方法です。自分が引っ掛かっているところはどこなのかを考えてみてください。そして、「夫婦だから、全ての案件を2人で決定するべき」というのは思い込みです。「決めるのが苦手な人もいるよね。迷いがちな人もいるよね」といったん認めましょう。
ただし、決定した側だけが責任を取らされるようでは、信頼し合える夫婦とはいえません。「決定は私。結果がどうであれ、責任は2人」というシンプルなルールを筆書きして、寝室に貼り出すくらいの意識付けをしておけば、両者ともに安心して過ごせると思いませんか。2人ともがご機嫌なときにルールづくりをするのがポイントです。話し合いから夫が逃げたら、「よっしゃ、私が決めてやる。文句言うなよ!」と2人分の思考回路を働かせて、ビシッと決めてやりましょう。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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