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おいしくない?評判の中…「糖質ゼロビール」販売、キリンとサントリーの思惑は?

サントリーの戦略は?

 続いて、サントリー(東京都港区)で商品開発を担当する、マーケティング本部の稲垣亜梨沙さんに聞きました。

Q.「糖質ゼロの酒はおいしくない」という声がネット上にある中、糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」を4月13日に発売した理由を教えてください。

稲垣さん「商品開発担当者として、以前から、さまざまなお客さまと接する中で『ビールが好きだけど糖質が気になる』という意見を多く頂き、『太りたくないけどおいしいビールが飲みたい』という潜在的な需要があると感じていました。

また、仕事などを終えて、一日の終わりにおいしいビールを飲むと『今日もいろいろあったけど、明日も頑張ろう』という解放的な気持ちにさせてくれる、ビールはそんな存在だと思っていますが、糖質が気になってしまうと、せっかくのビールも楽しめません。そこで、『糖質を気にせず、おいしいビールを飲んでもらいたい』という思いから、2016年に開発を開始しました。

しかし、市場に出回っているビール類の糖質オフ、糖質ゼロの商品に対しては『糖質オフ、糖質ゼロは魅力的だが、味に満足できない』『物足りない』『味が薄い』という意見も多く、『ビール類の糖質は気になるけど、味が満足できるものがないから、糖質オフ、ゼロの商品に手が伸びない』というお客さまがいるのも事実です。ビールのおいしさを維持しつつ、糖質をゼロにすることが求められましたが、おいしさと糖質ゼロの両立はなかなか難しく、商品化には5年かかりました」

Q.では、「糖質ゼロ」と「ビールのおいしさ」をどう両立させたのでしょうか。

稲垣さん「当社がこれまで培ってきた醸造技術を結集させました。原料には『ダイヤモンド麦芽』と呼ばれる上質で深いコクのある麦芽を一部使用し、仕込みの工程では『トリプルデコクション製法』という製法で手間暇かけてうま味を引き出しながら、糖質の元となるでんぷんを分解。その後、発酵の工程では、糖質がゼロになるまでじっくりと発酵させながら、おいしさを生み出し、糖質ゼロと力強い飲みごたえのアルコール度数5.5%を実現したことで、ビールのおいしさと糖質ゼロの両立が可能になりました」

Q.販売開始後の手応えは。

稲垣さん「『糖質ゼロと言われなければ分からないほどおいしい』『ビールとして満足できる』『完成度が高い』など、予想以上に多くのお客さまから高い評価を頂いています。新型コロナウイルスの影響で、消費者の健康志向が一段と高まっており、『パーフェクトサントリービール』の需要が高まっていると感じています」

Q.今後も売れ行きが好調だった場合、定番商品の「プレミアムモルツ」の売り上げに影響は出ないのでしょうか。

稲垣さん「『パーフェクトサントリービール』は『プレミアムモルツ』の糖質ゼロ版ではありません。ビールのおいしさを追求しつつ、糖質ゼロを目指した商品で、普段から気兼ねなく飲んでいただく商品として販売しています。

一方、『プレミアムモルツ』は当社の旗艦ブランドであり、日常の中にあるちょっとした晴れのときや、ちょっとぜいたくな時間に寄り添うビールだと捉えています。つまり、普段は『パーフェクトサントリービール』を気兼ねなく飲んでいただき、ご褒美気分のときは『プレミアムモルツ』を飲んでいただくといった形で、うまくすみ分けできると捉えています」

Q.キリンビールが昨年10月から、糖質ゼロのビールを販売しています。こちらの件についてはどのように考えていますか。

稲垣さん「他社さまと競い合おうとは全く考えていません。むしろ、一緒に糖質ゼロビールの市場を盛り上げることで、ビール市場の活性化に貢献していきたいと考えています」

(オトナンサー編集部)

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