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おいしくない?評判の中…「糖質ゼロビール」販売、キリンとサントリーの思惑は?

「糖質ゼロ、糖質オフの酒はあまりおいしくない」という声もある中、なぜ、キリンビールとサントリーは「糖質ゼロビール」の販売に踏み切ったのでしょうか。

「パーフェクトサントリービール」(左)と「一番搾り 糖質ゼロ」
「パーフェクトサントリービール」(左)と「一番搾り 糖質ゼロ」

 キリンビール(東京都中野区)とサントリー(東京都港区)が、これまで製品化されていなかった「糖質ゼロビール」の販売を開始し、話題となりました。ネット上では以前から、「糖質ゼロや糖質オフの酒はあまりおいしくない」「物足りない」という意見が比較的多く見られますが、なぜ、両社は糖質ゼロビールの販売に踏み切ったのでしょうか。

きっかけはパパ友との会話

 まずは、キリンビールマーケティング部、今北方央(いまきた・みちお)さんに聞きました。

Q.「糖質ゼロや糖質オフの酒はあまりおいしくない」という声も聞かれる中で、なぜ、「一番搾り 糖質ゼロ」を2020年10月に発売したのでしょうか。

今北さん「コロナ禍での在宅勤務による運動不足などにより、消費者の間で健康意識が高まっていますが、当社ではコロナ禍以前から、糖質ゼロビールの需要があると捉え、商品の開発を進めていました。2020年10月の酒税改正に合わせて商品を発売することで、コロナ禍で落ち込んだビール市場を活性化させる狙いもありました。

そもそも、『一番搾り 糖質ゼロ』商品化のきっかけは、2015年春に開発担当者が育児休業中に、子どもを持つ知り合いの母親や父親、いわゆるママ友やパパ友と花見をしたことでした。そのとき、パパ友の一人が『ビールは好きだけど、体形も気になるから、(ビールは)最初の一杯だけ』と話したため、担当者は『ビール好きな人が気兼ねなく飲める、おいしいビールをつくりたい』と着想し、5年以上かけて開発しました」

Q.では、どのようにして「糖質ゼロ」のビールを実現したのでしょうか。

今北さん「発泡酒や新ジャンルの酒と比べて、酒税法上、ビール製造における制約は大きく、その中で糖質ゼロをどう達成するか、また、味づくりの観点では、雑味や嫌なクセのない、一番搾りブランドらしい純粋さを極めることに苦労しました。麦芽の選定から見直し、当社がこれまで培ってきた仕込み技術や発酵技術を進化させることで、糖質ゼロを実現しました。

また、糖質はビールのおいしさを構成する一つの要素なので、ゼロにすると全体のバランスが崩れ、ビール特有の雑味や渋味が際立ってきます。そこで、一番搾り麦汁(ビールづくりにおける麦汁のろ過工程で最初に流れ出た麦汁)のみを使用する製法を採用し、雑味や渋味を抑え、澄んだ麦の味わいが感じられるように仕上げました」

Q.「一番搾り 糖質ゼロ」の売れ行きや手応えは。

今北さん「発売から、およそ半年が経過した3月下旬時点で、当社の過去10年のビール新商品で最速となる累計300万ケース(大びん換算)を突破しました。今年1月から3月の販売数量も年初計画の約3割増、4月の製造予定も年初計画の約6割増と好調に推移しています。お客さまからは『ビール本来の麦芽感の残る味がするにもかかわらず、糖質ゼロで画期的』『糖質ゼロでも、しっかりと麦のうま味が感じられて満足感がある』といった声を頂いています」

Q.「一番搾り 糖質ゼロ」が好調なことで、「一番搾り」やその他の商品の販売に影響はないのでしょうか。

今北さん「『一番搾り 糖質ゼロ』は『ビールのおいしさ』に加え、『糖質ゼロ』であることが価値であり、『糖質』を気にするお客さまがメインのターゲットです。『おいしさ』が中心価値の『一番搾り』とはターゲットが少し異なります。

実際、『一番搾り 糖質ゼロ』が『一番搾り』の売り上げに与える影響は想定よりも低くなっています。また、『一番搾り 糖質ゼロ』は、普段から糖質オフや糖質ゼロの酒類を飲む人が購入するだけでなく、通常のビールや発泡酒、新ジャンルの酒を飲む人も購入しており、ビールカテゴリーの販売拡大に貢献しています」

Q.サントリーも糖質ゼロのビールを4月13日に発売しましたが、この件についてはどう捉えていますか。

今北さん「他社の戦略について当社が発言する立場にはありませんが、酒税改正を機に、ビールカテゴリーは注目が高まるため、各社、力を入れてくるのではないかと考えています」

Q.糖質ゼロだからといって、飲み過ぎてはいけないと思います。お酒を適度に飲むための方法があれば教えてください。

今北さん「お酒の飲み過ぎを防ぐためには、以下の方法をおすすめします。

【休肝日をつくる】
処理能力以上のアルコールを摂取すると肝臓が傷みます。週に2日はお酒を飲まない日をつくり、肝臓を休ませましょう。

【料理を楽しみながら、ゆっくり飲む】
食べながら飲むと、胃の粘膜の上に食べ物の層ができるため、胃壁を荒らすことなく、アルコールがゆっくりと吸収されます。肝臓の負担も軽減でき、アルコールの血中濃度が急激に上がることもありません。

【水も一緒に飲む】
アルコールを分解するために体内の水分が使われます。また、アルコールには利尿作用があり、脱水症状になりやすくなるため、お酒を飲むときには水も一緒に飲むようにしましょう。

【食べ物を工夫する】
アルコールの刺激で胃壁が荒れるのを和らげ、粘膜を保護するため、飲酒前に脂肪分を含むチーズなどを摂取したり、アルコールの代謝酵素の活性を高める高タンパク質の食品や、飲酒によって失われやすいミネラル・ビタミンが豊富な野菜類などを多く摂取したりするようにしましょう」

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