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聖火ランナー辞退、世論は中止・再延期 東京五輪の今夏開催、意味はある?

医療関係者への負担は?

Q.開催となった場合、新型コロナのワクチン接種が進む中での開催となり、医療関係者にさらなる負担となる恐れがあります。

江頭さん「海外から参加するアスリートへの対応が最も問題です。通訳を介しての診察になりますし、文化や宗教の違いもあります。医療に関する基準(法律)も異なります。コロナ前の五輪では、けがの外科的治療対応が多く、病気の場合には帰国する選手が多かったのですが、コロナ禍では、日本国内で新型コロナ感染が確認されれば、母国に戻ることは難しいでしょう。

重篤化して亡くなるケースを回避するためには、専門の医療チームが必要となります。そのために、日本国内の医療リソースを削減することは世論が許さないと思います。そうなると、参加国が医療チームを帯同してくるのが望ましいとなるでしょう」

Q.現状では、どのような開催方式が妥当なのでしょうか。

江頭さん「無観客でしょう。『コロナに打ち勝った証し』としての2020TOKYOになる可能性が極めて低い現状では、どれだけ感染対策を講じても100パーセント安全となることは考えられません。

世界中が認める感染対策を実施するなら、チケットを全額払い戻しした方がコストが安く済むと思われます。なぜなら2020年12月公表の組織委員会予算(V5予算)では、新型コロナの対策関連経費を960億円追加しています。V5予算以前に計上したコロナ対策費もありますので、変異株などへの対策を含め、さらに高まるコストを考えると、総額でチケット収入の900億円を大幅に上回っても不思議ではありません。

また、チケット収入は主に東京都を母体とする組織委員会の収入になり、IOCのダメージは少ないです。V5予算によると、チケット収入は900億円(海外販売含む)ですが、テレビ放映権料は全く予算に記載されていません。つまり、テレビ放映権料はIOCの総取りで、その一部をIOC負担金(850億円)として、組織委員会に提供している模様です。

テレビ放映権料はリオデジャネイロオリンピックなど2013~2016年の大会で4500億円以上(統計調査会社「Statista」による)でした。つまり、無観客にしてもIOCの腹は痛まないということです。東京都を母体とする組織委員会も、チケット売り上げが減少してもコロナ対策費用も減少しますので傷は少なくて済みます。

さらに、アスリートはゲームを開催でき、順位も決まります。無観客では盛り上がらないと考えがちですが、ドイツサッカーは無観客のままリーグを続行していますが、パフォーマンスが落ちたという報告はありません。

また、オリンピックで行われる28競技321種目の多くは普段、満員の観客を前に競技を行っていないため、無観客の方がアスリートの集中力が高まる可能性もあります。ゴルフやテニスなどは観客に『静かに』と求める場面もあります。全てのゲームが無観客で静寂の中実施されるなら公平で、歓声に慣れているプロアスリートだけが『不満』を漏らす程度だと思われます。

2021年に向けて、多くの犠牲を払って練習を積んできたアスリートは世界最高のアスリートと対戦すること、最高の審判、自分のコンディションが最高であることが重要で、歓声の優先順位は高くないでしょう。自分たちのパフォーマンスはテレビを通して世界中に中継されていますので、固定概念に縛られなければ、無観客の方がいいゲームになることも考えられます。

加えて、IOCは自身の財政が逼迫し始めている可能性があります。テレビ放映権はオリンピックが放送された後に受け取れる契約になっています。コロナで1年遅れたため、4000億円を超す収入が先送りになっていると考えられます。ですから、IOCは決して『中止』という表現を使用しません。開催に向けて努力し続けているのです」

(オトナンサー編集部)

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江頭満正(えとう・みつまさ)

一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事を務め、音楽フェス主催事業者らが2021年3月に設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

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