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猛威を振るう「コロナ解雇」はどこに向かうのか、危険業種を予測する!

新型コロナ関連の解雇や雇い止めが1月29日時点で8万4773人に。緊急事態宣言再発令後、どのような業種で雇用危機が深刻化しそうなのでしょうか。

「コロナ解雇」の傾向は?
「コロナ解雇」の傾向は?

 厚生労働省は新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めが1月29日時点で、見込みを含めて8万4773人に達したことを発表しました。緊急事態宣言の再発出の影響もあり、さらなる経済活動の鈍化が懸念されます。今回は「コロナ解雇」の傾向を分析し、どのような業種で雇用危機が深刻化しそうなのか考えてみたいと思います。

緊急事態宣言再発令の影響は

 現在、解雇や雇い止めの対象は製造業や飲食業が中心になっています。その範囲は今後、拡大する可能性があります。

 昨年6月までは宿泊業、飲食業が多く、7月以降は製造業が1位でした。宿泊業では宿泊施設の廃業や倒産、飲食業ではチェーンを中心に大量閉店があったことによる影響と思われます。その後、9月までは製造業(1位)、宿泊業(2位)、飲食業(3位)の順位で推移します。9月までの単月でのコロナ解雇者数は1カ月当たり1万人前後、10月以降は増加ペースが鈍化していることが分かります。

「GoToキャンペーン」の効果はどうだったのでしょうか。「GoToトラベル」は7月、「GoToイート」は10月実施です。11月以降の解雇数の増加を踏まえれば、「GoToキャンペーン」による効果は薄かったと言わざるを得ません。さらに、コロナ感染拡大の影響を防ぐことができなかったことも大きな要因と言えます。

 というのも、「GoToトラベル」は事業者ごとに予算を割り当て、旅行代金の35%、もしくは1人1泊1万4000円を上限に値引きするものです。旅行代理店は割引分を負担し、宿泊施設や交通機関などへの支払いを行います。後日、立て替え分の振り込みを受けますが、支払いサイト差があることから、中小の旅行代理店は運転資金が逼迫(ひっぱく)します。

「GoToイート」はどうだったのでしょうか。「食べログ」「ぐるなび」などのオンライン予約によるポイント還元を利用した場合、利用者にとってはポイントが付与され、お買い得感がありました。しかし、飲食店はオンライン予約サイトに登録しなければ参加できません。

(注)食べログ、ぐるなびの掲載情報について
食べログへは無料登録ができます(店舗準会員)。無料会員は、お店の基本情報と数枚の写真などを入力して、食べログ上に公開できます。しかしながら、有料会員のような「標準検索」における優先表示や店舗詳細ページのカスタマイズはできません。

ぐるなびへは無料登録ができます(エントリー会員)。エントリー会員プランは無料で掲載できますが、有料会員に比べて、掲載できる情報量が限定されます。有料会員の場合、掲載費用の上限はなく、特集やPR枠といった商品を選べます。

 さらに、サイトを通じて来店した場合、数百円の来店手数料が徴収されます。小規模店や客単価が低いお店では利益を出すことが難しくなります。利益が出ていなくても売り上げがアップしていると「持続化給付金」の“対象外”にされるリスクもあります。こうしたことから見ても「GoToキャンペーン」は雇用状況に対し極めてインパクトが弱かったと言わざるを得ないのです。

今後、解雇が増えてくる業種は何か

 今回の緊急事態宣言の再発令は飲食業をターゲットにしたものです。そのため、直接的に影響を受ける飲食業中心に解雇・失業が増える恐れがあります。飲食業の8割はパートやアルバイトなどの非正規従業員でその多くは女性や学生です。飲食業の不振の余波は製造業、建設業、宿泊業に派生すると予想できます。

 現状では製造業でのコロナ解雇が最も多く、今後も増えることが予想されます。理由としては元々の就業者数が多いためです。総務省の労働力調査によると、すべての業種の中で製造業が最も多いことが分かります。母数が多いので解雇人数も必然的に高くなります。

 製造業は景気変動と業績変動にタイムラグが生じるため、後から解雇が増加してきます。例えば、企業が設備投資をしようとするとき、景気の予測や将来的な見込みに基づいて設備を整えます。その際には、イニシャルコストを何年で回収できるかなど入念なシミュレーションを行います。

 さらに、製造業は複雑な下請け構造になっています。下請けが作った製品を、最終的に1次請けの会社が組み合わせて最終商品として完成させます。完成までにはいくつかの複雑な段階と長いスパンが存在します。コロナ禍により新規発注が減少すると、景気悪化の影響と業績悪化は段階ごとにタイムラグが発生していきます。

 製造業と同様、建設業も景気変動と業績変動のタイムラグが生じやすい業種です。建物は着工から完成までに長い期間を要します。製造業と同じく、下請けも何層にも続いていることから、同様に影響を受けやすいことが予測できます。

 宿泊業は運転資金が不足することによる資金ショートの第2波の発生が懸念されます。昨年のコロナ禍では、ホテルや旅館の廃業や倒産が相次ぎました。それでも各種給付金や銀行融資などにより、資金繰りを持ちこたえていたところもありました。

 しかし、今回、業績が回復していなければ、追加融資を受けることが難しくなります。そのため、資金ショートするホテルや旅館が増加することが予想されます。そうなれば、リストラによる解雇の増加は避けられません。

 景気が低迷すれば雇用状況が悪化し、安泰だと思っている業種への影響も分かりません。政治家は与野党に関係なく、新型コロナ対策に特化して迅速に感染を抑え込むことと、雇用を維持するための方策を考えるべきです。果たして英知は結集できるのでしょうか。

(コラムニスト、著述家 尾藤克之)

尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

東京都出身。代議士秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎首相夫人)をライフワークとしている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材・掲載多数。著書も多く、近著に「頭がいい人の読書術」(すばる舎)がある。埼玉大学大学院経済学研究博士課程前期(経済学修士、経営学修士)。

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