オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「ワイドナショー」が松本人志の苦言を放送 フジテレビはなぜ“自己批判”をしたのか

しかられることを承知で腹をくくった

 まず、松本さんのコメントは「フジテレビを愛しているからこそ」という点を含め、裏やうそはないでしょう。ただ、思っている以上に松本さん自身が正義の味方として扱われてしまったのは、誤算だったように見受けられます。

 最初から批判するのではなく、意味深なツイートで世間が批判に向かうムードを作ってから、公開裁判のように世間へ問いかける形は、クレバーな松本さんらしい方法でした。松本さんにしてみれば、「僕は番組降板というリスクを背負って批判している」という言い分がありますが、結果として番組スタッフを追い込んでいたのです。

「ワイドナショー」における松本さんの批判は今回だけでなく、過去に2度の伏線がありました。まず今年1月に「事務所の力関係があるとか、大きい事務所のスキャンダルは扱えないとか、ネットでさんざん挙がっているのにワイドショーでは一切扱わない。(視聴者の)違和感にテレビ業界の人たちもそろそろ気づいてほしい。じゃないとテレビはどんどん時代遅れになっていく」とコメント。続いて6月にも「(放送内容のミスを)スタッフの責任に丸投げするのは嫌だから、今度こういうことがあったら(番組を)降りようと思っている」と、ギリギリのコメントをしていたのです。

 今回の批判は、どちらかと言えばテレビ局の上層部に訴えかけるものでしたが、実際はスタッフが「これを放送しなければ、松本さんに降板されてしまう……」と追い込まれたのは明白。組織の一員という立場上の苦しさやテレビマンとしての葛藤があったことは想像に難くなく、勇気のいる決断だったのです。「他局の番組が避けているコメントに踏み切った」「スタッフは多くの上司を持つ会社員の一人であり、しかられることを承知で腹をくくった」という点を踏まえると、松本さん以上にスタッフの決断に拍手を送るべきではないでしょうか。

1 2 3 4

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

コメント