上司の関西弁「お前、何しとんねん」「アホか」はパワハラになるのか
「お前、何しとんねん」「アホか」といった関西弁は、その文化に慣れない人にとっては「怖い」と感じられることも。とりわけ、会社の上司に言われて精神的ダメージを負った場合、それは「パワハラ」となりうるのでしょうか。弁護士に聞きました。

とある関西の企業で数年前、日本人上司が外国人の部下を「お前、何しとんねん」と注意したところ、関西弁の微妙なニュアンスが伝わらず、部下が「ひどくしかられた」と勘違いをしたという事例が話題になりました。
関西弁の「お前、何しとんねん」「アホか」などは、関西出身者にとっては何気ないひと言ですが、外国人でなくとも、標準語の環境で暮らしてきた人にとっては「怖い」と感じられてしまうこともあります。これらの言葉を上司に言われ、精神的なダメージを受けた場合、パワハラに当たるのでしょうか。
オトナンサー編集部では、アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士に聞きました。
「業務の適正な範囲」を超えるか
厚生労働省の「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」によると、そもそもパワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」です。
吉岡さんによると、ここでのポイントは「業務の適正な範囲」。つまり、受け手が不満に感じる指示や指導があっても、この範囲内であれば、パワハラとは認められないということになります。今回のケースは「お前、何しとんねん」「アホか」が業務と結びつくかどうかがポイントですが「これらはパワハラとなりえます」(吉岡さん)。
まず「お前、何しとんねん」は状況によって、いわゆるツッコミとして用いられる場合や「間違ったことをするな」と注意している場合などがあります。後者の場合でも、言い方に強弱があるため、このひと言だけでパワハラかどうかを判断することは不可能です。「間違いを注意することは業務上の必要性があり、パワハラにはなりません。しかし『お前』は不適切であり、業務上の必要性があるとは言えないため、『お前、何しとんねん』はパワハラと認定される可能性があります」。
次に「アホか」も、親しみを込めて使う場合や侮蔑として使う場合がありますが、上司が部下を注意する時に使えば、通常は「侮蔑」の意味としてパワハラとなりえます。上司としてはこの場合、「アホか」ではなく「理解や判断能力が劣る」などの表現に改める必要がありますが、後者の表現を使う場合でも、ほかの従業員の前や、ほかの従業員が閲覧可能なメールなどで伝える業務上の必要性は認められないため、場所や状況に配慮する必要があります。
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