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斉藤由貴から上白石萌音&萌歌へ! 東宝シンデレラが受け継ぐ「女優」遺伝子

斉藤由貴さんから上白石萌音さん、上白石萌歌さんへ――。受け継がれる東宝シンデレラの「女優」遺伝子が存在します。

斉藤由貴さん(2017年7月、時事通信フォト)、上白石萌音さん(2019年2月、同)
斉藤由貴さん(2017年7月、時事通信フォト)、上白石萌音さん(2019年2月、同)

 NHK BSプレミアムに、過去の朝ドラ(連続テレビ小説)を放送する枠があります。現在放送されているのは、1986年度上半期の「はね駒」。当時19歳の斉藤由貴さんが主演し、平均視聴率41.7%を記録したヒット作です。

 彼女は1984年、明星食品「青春という名のラーメン」のCMでデビュー。1985年に「卒業」で歌手デビューも成功させ、連続ドラマ初主演となった「スケバン刑事」(フジテレビ系)も話題になりました。

「はね駒」に主演した年には「紅白歌合戦」に初出場。同時に、紅組キャプテンも務めています。これは、松たか子さんに破られるまで最年少記録でした。

 とまあ、いきなりの大活躍だったわけですが、「はね駒」が始まる3カ月前に筆者がインタビューした際、彼女は芸能の仕事についてこう言っていたものです。

「ええ、いちばん自分にはあってるなー、と思って。天職っていうとヘンですけど」(「よい子の歌謡曲」、1986年)

 そして「将来的な仕事は女優」「30になってとか40になってとか、そしたら女優でいくと思う」とも。その言葉通り、女優業を中心にキャリアを重ねてきました。実力はもとより、不倫スキャンダルでも評価が落ちない安定感は、もはや大御所の域です。

 しかし、34年前の「はね駒」で見せる姿は、今のイメージとはやや異なります。そこには、体当たりで大役にぶつかる若手女優のみずみずしさがあふれているのです。母親役の樹木希林さんや、恋人(後に、夫)役の渡辺謙さんもまだ若いのですが、彼女の10代ならではの魅力はひときわ目立ちます。

 素朴でひたむきで、ふんわりとしたかわいさに、運命を元気に力強く切り開いていこうとするたくましさ。それはまさしく、朝ドラヒロインにふさわしいものでした。

女優、歌手として活躍する上白石姉妹

 そんな姿からふと連想したのが、同じ東宝芸能に所属する後輩女優たち。まずは、上白石萌歌さんです。現在、20歳の彼女は「キリンレモン」のCMに出演中。その新作がかつて「カルピス」のCMに出演していた頃の斉藤さんをほうふつとさせます。

 もちろん、女優としてもめきめき成果をあげていて、昨年は「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)、「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK)といった話題作に出演しました。

 また、今年2月の単発ドラマ「ファーストラヴ」(NHK)での役は、性的トラウマなどから父を殺してしまうという、心に闇を抱えた女子大生でした。こうした幅の広さは、斉藤さんも早くから発揮していたものです。

 そんな萌歌さんの姉である上白石萌音さんは今年、「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)のヒロインとして、そのヒットに貢献しました。こちらにも、斉藤さんと似た魅力を感じます。

 あのドラマで演じた新米ナースは一生懸命だけど抜けていて、それは「はね駒」のヒロインにも通じるもの。また「岩石」というあだ名で呼ばれるところなど、斉藤さんが近年、レギュラー出演している「警視庁・捜査一課長」(テレビ朝日系)での役を思い出させます。こちらは「大福」というあだ名を持つ刑事。萌音さんも何十年後かには、ああいう役をやっていそうな気がするのです。

 また、この姉妹はそろって、歌手としても活動しています。ミュージカルも経験していて、萌音さんは作詞にも取り組んでいます。この辺りも、斉藤さんと同じ路線をたどっているような印象を覚えます。

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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