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上白石萌音、浜辺美波…受け継がれる「東宝シンデレラ」の遺伝子とブランド

「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」の上白石萌音さん、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」の浜辺美波さんら活躍中の女優を多く輩出する「東宝シンデレラオーディション」。その強みは何でしょうか。

上白石萌音さん(2020年11月、時事)、浜辺美波さん
上白石萌音さん(2020年11月、時事)、浜辺美波さん

 上白石萌音さんが1年ぶりに火曜ドラマ枠で主演を務めるTBS系連続ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(毎週火曜 後10:00)が1月12日から、浜辺美波さんが菅野美穂さんと親子役で共演する日本テレビ系連続ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(毎週水曜 後10:00)が1月13日からそれぞれスタートしました。

 上白石さんと浜辺さんは同じ芸能事務所・東宝芸能の所属で、映画会社の東宝と共に同事務所が主催する「東宝シンデレラオーディション」出身でもあります。2011年に開催された第7回で上白石さんは審査員特別賞、浜辺さんはニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入りを果たしました。

「東宝シンデレラオーディション」といえば、他にも、上白石萌歌さん、長澤まさみさん、沢口靖子さんら数多くのドラマや映画で活躍中の女優もその出身。同オーディションの出身者たちが活躍を続ける理由について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

映画に主演できる女優を見つける

「東宝シンデレラオーディション」は1984年に第1回が開催され、沢口靖子さんが初代グランプリに。ファイナリストには斉藤由貴さんも名を連ねていました。

 以降、同オーディションは不定期で数年おきに開かれており、これまでに8回開催。「中でも注目は、上白石姉妹と浜辺美波さんを見いだした2011年の第7回でしょう」と宝泉さんは話します。

「グランプリに上白石萌歌さん、審査員特別賞に姉の萌音さん、ニュージェネレーション賞に浜辺美波さんと3人それぞれが賞を受賞しました。当時から約10年の月日がたち、彼女たちは着実に成長を遂げ、この3人が今の東宝芸能の勢いを体現していると言っても過言ではありません」(宝泉さん)

 売れっ子を続々と輩出する背景には、女優を育成する上で抜群の環境が整っているといいます。

「そもそも、『東宝シンデレラオーディション』は映画会社の東宝が主導していることもあり“映画で主演を張れる女優を見つける”というはっきりとした目的を持ってオーディションを開催しているはずです。東宝製作の映画に優先的に出演でき、そこで経験を積むことができる環境は他の事務所にはない強みでしょう」

 宝泉さんは「東宝シンデレラオーディション」のブランド力についても言及します。

「『東宝シンデレラ』出身者たちに共通するのは、女優としての気品や育ちの良さみたいなものが見える点です。やんちゃな感じの人がおらず、選ばれるのは正統派で真面目な印象の女優たち。時代の変化と共に女優のトレンドも移り変わりますが、『東宝シンデレラ』は方向性がブレることなく、代々引き継がれているように思います」

「また、東宝芸能には安心感のあるクリーンな事務所という印象があります。近年、タレントの独立やトラブルなどで芸能事務所の存在がクローズアップされることがありますが、東宝芸能についてはそういった話題をあまり聞いたことがありません。このクリーンな印象はタレントのイメージを守ることにもつながりますし、制作側も安心して作品に起用できるはずです」

 また、「東宝シンデレラオーディション」の発掘力の高さも注目されるべきだといいます。

「これまでわずか8回の開催ながら、毎回逸材を発掘している確かな実績と打率の高さは『東宝シンデレラ』の大きな特徴でしょう。1987年開催の第2回は水野真紀さんが審査員特別賞を受賞、2000年に開催された第5回では長澤まさみさんがグランプリに輝きました。2016年開催の第8回でグランプリになった福本莉子さんも昨年、浜辺さんと共に映画で主演を果たすなど注目を集める若手女優の一人です」

 今後の「東宝シンデレラ」女優の活躍についても、宝泉さんは期待を寄せています。

「そろそろ、9回目が開催されてもおかしくないタイミングですが、新型コロナウイルスの流行に加えて、今や事務所を引っ張る存在となった上白石姉妹や浜辺さんがまだ若いこともあり、開催を見送ったのではないでしょうか」

「直近のグランプリである福本さんもまだ、手探りの段階で方向性を見定めている途中のはずです。同世代の女優が多くいる中で差別化は難しいかもしれませんが、『東宝シンデレラ』出身女優として、上白石姉妹と浜辺さんに肩を並べ、4姉妹のような立場になることを期待しています」

(オトナンサー編集部)

宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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