好調「カムカムエヴリバディ」 視聴者を引きつけるスピード感と演技力
放送開始以降、その展開の早さが話題を集めているNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。好調が続く理由を専門家に聞きました。

放送中のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土 前8:00)。今作は朝ドラ史上初めて、主人公となる3人の登場人物を、上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんの3人がそれぞれ、別のヒロインとして演じることでも注目を集めています。
また、上白石さんと川栄さんはオーディションを経ての選出であり、ヒロインをオーディションで決定したのは「半分、青い。」(2018年度前期)以来3年ぶり。同ドラマが支持を得ている理由について、テレビドラマに詳しいライターの中村裕一さんに聞きました。
ヒロイン以外のキャストも注目
同ドラマは、昭和、平成、令和の時代、ラジオ英語講座と共に歩んだ祖母、母、娘3世代の姿を描いた100年のファミリーストーリー。「今作の特徴の一つでもある展開の早さは、必要な演出だったのかもしれません」と中村さんは話します。
「確かに展開のスピードは早いと感じますが、朝ドラではよくあることでもあります。1話15分なので、次回へのフックを最低でも1つ用意するとなると、ちょっと目をそらしているうちにストーリーが進むので、早さを感じてしまうのではないでしょうか」(中村さん)
「Netflixなどのネット配信ドラマでは、10秒単位のスキップ機能が付いているので、好きなだけ早送りで見ることができ、“早さ”に慣れた現代の視聴者を15分間だけでも引き留めるためにも、このテンポ感はもはや、必要な演出なのかもしれません。その意味で、朝ドラ初となる3人のヒロイン起用も時代にぴったりマッチしていると言えます」
加えて、人気を集める理由の一つにヒロイン・安子を演じる上白石さんの演技力の高さが挙げられると中村さんは評します。
「戦争によって、愛する夫や家族を失い、若くして寡婦となってしまった安子の悲しみだけでなく、時代の流れに翻弄(ほんろう)されながらも、一人娘るいと共にたくましく生きていこうとするその姿は朝ドラヒロインの黄金パターン。そんな主人公の心情をしっかりと表現し、初代ヒロインとして立派に存在感を発揮している上白石さんの演技が本当に素晴らしいです」
また、ヒロイン以外のキャストの存在感も注目の一つと中村さんは話します。
「安子だけでなく、作品全体で登場人物一人一人の物語を丁寧、かつ、バラエティー豊かに描かれていて、感情移入できるキャラクターが必ず1人いるところが魅力の一つではないでしょうか。どの人物にも見せ場があって、見る人の心をぐっとつかむシーンがあり、これはキャスティング力に優れる朝ドラならではの強みだと思います」
「個人的には、甲本雅裕さん演じる安子の父・金太と、濱田岳さん演じる安子の兄・算太が印象に残っています。算太は家業である和菓子屋で働くも全く興味がなく、和菓子を愛する金太と衝突を繰り返していましたが、多額の借金をしていたことが明らかになり、金太から勘当され、程なく出征します」
「一方、金太はそんな経緯もあって、算太の出征の見送りを拒否するも、最期は算太の幻を見ながら他界するというシーンでは胸が締め付けられました。その算太ですが、もしかしたら、安子の夫・稔(松村北斗さん)のように戦死したのではないかと思っていましたが、戦地から無事帰還。クリスマスの季節、まさに“サンタ”クロースとして、安子とるいの前に現れる展開には感動しました」
中村さんは、今後の展開についても大きな期待を寄せています。
「当然のことながら、先のことはどうなるか分かりません。誰と誰が結ばれるのか、誰が去っていくのか、誰がやってくるのか、そして、彼らをどんな運命が待ち受けているのか、自由にいろいろ想像する面白さがあるのが朝ドラ。
朝、もしくは昼(再放送)の15分だけでもドラマのために時間をつくり、じっくり視聴して、ストーリー展開に一喜一憂するのが正しい楽しみ方ではないでしょうか。その意味では、次の大阪編(主演:深津さん)、そして、京都編(同:川栄さん)も、一視聴者として存分に楽しみたいです」
(オトナンサー編集部)
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